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とっぽいについて

上司に60代中盤の部長がいる。今でこそ65歳定年になったが、その世代の方々は60歳定年で、今は再雇用という形で営業をされている。

昔は皆が恐れる鬼のスーパー営業だったらしいが、今では牙も抜けており、僕のようなペーペーにも優しく接してくれる。その部長は、長らく東京で営業をしているが、出身は長野であり、時折方言が出る。

そんな部長と一緒にとある不動産屋さんの担当と商談した時のこと。向こうの担当者が若く、いかにも不動産営業といった出立ちをしていた。青系のピチッとしたスーツを纏い、髪はジェルで固めた七三分け。態度は若干尊大で馴れ馴れしい。不動産営業のテンプレみたいな人物だった。(業界の皆さんすみません。)

その担当者は、我が部長に対しても馴れ馴れしく話してくる。僕は内心「ウチの大部長にそんな態度を取れるほど偉いんか」と腹立たしく思ったが、さすがは部長。うまくいなしながら折衝を続けていた。

商談後、部長が開口一番。「しかし、とっぽい奴だったなぁ」と話してきた。

「とっぽいって何…?」と思ったが、とりあえず「いやー、ほんととっぽかったですねぇ」と返しておいた。その後隙を見計らい、スマホで意味を検索してみた。

① 頓智があり利を見るに敏だ、抜け目がない、ずるいなどの意でいう、盗人・てきや仲間の隠語。
② すばやい、大きい、生意気だなどの意でいう、不良仲間の隠語。

というのが意味らしい。どちらにしても、盗人・てきや・不良といったアウトローな方々の隠語らしい。僕はてっきり長野の方言か何かかと思っていた。部長も昔は長野で改造バイクやらヤン車に乗って暴れ回っていたのだろうか。そんなことを想像してしまった。

まぁどちらにせよ、不動産屋の担当者の様子を形容するのにこれ以上ない4文字である。トッポは最後までチョコたっぷりだが、とっぽいはどこか最後まで詰まりきってない感じを受ける。

仕入れた言葉をすぐ吐き出したくなる系である僕も、その日から事あるごとに「とっぽい」を使うようになった。

とっぽいという表現を使うと、大抵の場合はスルーされるのだが、たまに「なにそれ?」と引っかかる人がいる。正直、ふんわりした理解で使っているので「まぁ、アレだよ。カッコつけてて、嫌な感じ的な意味合いだよ」と答える。

なんともまぁ詰まりきっていない答えである。

トッポの如く、最後まで詰まりきった人間になろうと思った。

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