[Agile Again] 日本にもう一度アジャイルを取り戻す - 雇用について考える (2) -
先日、雇用、とりわけ日本における終身雇用についてまとめてみた。
この雇用流動性について、様々な意見がある。なんかプロパガンダでほぼ暴力なのではないか?という意見、もはや手遅れに等しいが今更やって逸失したものは取り戻せないよねという半ば呆れた意見、そしてこの変化は日本だけじゃないぞ、的なものまで。
/ やっぱり終身雇用が必要。。。。と主張する人もいる
先のNoteでも書いたが、豊田社長がこの発言をして即反応しITMediaに掲載されたのが下記の記事。
終身雇用の維持は「日本企業の責任ではないのか?」
要約するとこんなことを懸念しているようだ。
・第1に、転職しても社外で通用するキャリアを形成してこなかった
→ 日本の採用慣習は「新卒一括採用」。入社後も社内の複数の部署を
転勤や配置換えにより経験し、ゼネラリストを目指すのが一般的な
キャリアプランでした。
・第2に、日本企業が副業を認めてこなかった
→ 長きにわたり、社員の副業は原則禁止というのが多くの日本企業の
常識でした。副業を認めてこなかった日本企業の経営方針が、社員
が終身雇用を望む一因になっているだろう。
・第3に、終身雇用前提の長期ローンでマイホーム購入していて混乱する。
→ これは終身雇用を前提として長期間にわたって安定的にローンを
返済できることが大前提です。
・第4に、年功序列。まだまだ大手企業を中心に色濃く残っている。
→ 前に賃金体系を見直して、年齢や勤続年数ではなく、実際に従事して
いる職務に応じた賃金が支払われる「職務給」をベースとした賃金
体系への移行、退職金も勤続年数の長短で不公平が出ないような制度
設計にしなければ不公平・不誠実である。
んー。。。個人的には、なかなか反論の説明が苦しい気もする(笑)
ニワトリタマゴな気がするし、だから、「今それを変えようとしている」とも言える。いや、正確には上記の状態だったから長いこと引っ張っていわゆる責任取ってきたんだけどもう限界を超えてしまった、ということだと理解したほうがいいような気がします。つまりボヤいているだけで、反論にはなっていないのではないか。
一応、豊田社長の取り巻く状況も引用しておく。
米ゼネラル・モーターズが北米5工場の閉鎖を発表するなど、ライバルは大胆なコスト圧縮で新たな時代への適応を図る。自動運転分野などでは米グーグルなど、世界中の頭脳を集めるIT(情報技術)大手との競争も本格化する。豊田社長は「世の中が日々変わる中、全ての変化に神経を研ぎ澄ませる必要がある」
とにかく、終身雇用前提「ではない」形の企業がたくさん増えてきていて。これからどんどん増えてくという話。
/ 50代はリソースとして無駄なのか。
経団連は今年の所信でも年功序列も、一括採用ももはや難しいと言っている。その結果が、早期退職というリストラクチャリングに現れている。
日経では、明確に50代に対するリソースとしての費用対効果に言及している。そして、企業はそのリソースを丸々高付加価値が出せる人たちに割り当てたいと思っているのではないか、と言うのだ。
大手企業の賃金は年功序列型のため、50~54歳の賃金が最も高くなる傾向にある。企業にとって中高年はボリュームコストになっており、その層を削ることで、今後の成長分野を担う人材に原資を割り当てる。
これに対し、日経ビジネスで河合氏は、以下のように反論する。
解雇規制が厳しい、解雇のハードルが高い、といわれる国で、これだけの人たちが「希望退職」という美しい言葉の名のもとに仕事を打ち切られている。しかも、それが景気や企業の業績に関係なく進められているのだ。
どんなに希望退職や早期退職というオブラートに包んだ表現を使っても、その実質はリストラであり、それは1人の人間の人生を大きく翻弄する“刃(やいば)”であり、周りにも悪影響を及ぼす最悪の「経営手段」だ。
こうした意識が薄らいでいるのは、その凶器に対して鈍感な人が増えてしまったのか、あるいは「自分には関係ない」と思っている人たちの発言力が増しているからなのか。そして、きっと「だから50代はコストが高いわりに働きが悪いことが問題なんだよ!」と、年齢の問題にされてしまう
ここは、私個人として、この河合氏の論調に一定の理解を示したいと思う。50代だからといって、「コストが高いわりに働きが悪いゾ!」ということがほとんどなんの証左もなく「ノリ」と「トレンド」で動かされてしまうのだとすると本当に恐ろしいことだ。日本社会の鈍感な感じが増している実感もある。
ただ、河合氏はこうも述べている。
念のため断っておくが、私は転職したい人のスキルが生かせるような流動性は必要だと考えている。だが、ただ流動性さえ高まれば万事うまくいくみたいな幻想は危険だし、捨てた方がいい。
つまり早期退職という名のリストラをやれば万事うまくいくと思うなよ、ってことを伝えているのだ。
・・・しかし、逆を返せば、確かに万事うまくはいかないが、流動性を高めるために企業はなりふり構わないところまで追い込まれていると言うことであり、これらの反対したい方達の論調がそれを止める術にはなり得ていないのも事実なのだと思う。
/ 10年前に舵を切っていれば違うシナリオはあった?
シナリオを伴った諦観した皮肉(失礼)も紹介しよう。先に紹介している城氏の発言を再掲する。
「年功序列を維持するには組織がずっと拡大しポストも若手も毎年増え続けないといけないけどそんなことは不可能、はやく日本企業は年功序列と終身雇用を見直すべきだ」(略)
10年以上前からし続けてきたわけですが、一向にその気配はなかったんですね。(略)
それが昨年あたりから急激に変化が起き始めています。(略)
アプローチは様々ですが、上記の動きにはある共通点があります。それは“脱・年功序列”という点です。(略)事実上の脱・終身雇用と言っていいでしょう。
10年前に舵をきっていれば・・・
10年くらい前に正社員を解雇しやすくしたり社会保障改革を実現していればどうだったでしょうか。40代でクビになったとしてもまだまだ若いからなんとでもなるし(解雇しやすい=採用しやすいということなので)採用ハードルもぐんと低く新たなフィールドで再チャレンジも容易だったでしょう。
年金支給も65歳がキープできていれば、企業も安心して中高年を再雇用しやすかったはず。そういう恵まれた雇用環境の中で、それまで培った経験を活かし、天職と呼べるような第二のキャリアに巡り合える中高年も大勢産まれていたような気がします。
いま50代で放り出された中高年に、ガチガチの正社員保護が健在かつ70歳雇用義務が明記された現状で、なかなか企業は手を出しづらい気がします。運よく会社に残れたとしても、会社から与えられる仕事に否応なく70歳まで付き合わないといけないわけです。これは彼らが望んだ未来なんでしょうかね?
とはいえこういう状況が出現してしまった以上、まだ時間のある40代以下の世代は自力で対処していくしかありません。
40代以下の我々と若者諸君、自力で対処しましょう。
/ 国内スキームの変化、ではなく、全世界がシフトしている必然の流れなんだ
先の日経記事に対する、ちきりんさんの考察を引用させてもらう。(ただしコピペできないので自力で要約。これ、怒られるかな。ダメなら消します。)
・年功序列賃金で生産性と賃金の乖離が大きい 50代
・バブル期大量採用世代の50代
・定年70才説が政府から出ていてさすがに20年雇い続けるのしんどい
・60才再雇用(低賃金雇用)の今までのやり方に裁判でNG出てしまった
・若手・優秀・高給取りは外資かベンチャーへ、年功序列給与では雇えない
・横並び主義で他社がリストラし始めたから、うちも今!
ただ、最も重要な示唆は以下です。
世界共有かつもっと構造的な「仕事の変化」があるから
ただ、要約すると、以下のようなことを提示してくれています。
・人類の歴史は、「狩猟」「農耕」「工業」「オフィス」時代とそれぞれシフトしてきた
・現代は(ちきりんさんいわく)「思考」時代に突入している
・生きるための仕事が変わるというまさに生き残るための大きな変化が起きる
そしてこのシフトのたびに「求めらえるもの」が変わってきた。
・「求められる人物像」も大きく変化しました。
・「求められる資質やスキル」が変わりました
今、時代はオフィス時代から「思考」時代と名付けた時代に突入している。だから世界中でシフトが起きているのだ、と。
・ITやAIの進化で、機械ができる範囲がものすごいスピードで拡張
・ホワイトカラー業務自体をコンピューターが行えるようになってきました
・この変化は日本だけで起こっているのではなく、(時代のシフトだから)世界で同時に起こっている。
・今、オフィスワークは日本だけでなく世界中で要らなくなってる
・どの国でも、「ホワイトカラーに求められていた能力」が高い人が没落しはじめている。
ちきりんさんのまとめとしては、
・日本はたまたま「終身雇用」で「年功序列」だから45才以上がリストラ対象として選ばれてるけど・・・
・企業の本音としては「たとえ給料が安くても、たとえ年齢が若くても、『ホワイトカラー時代に求められているスキル"しか"持っていない人』を雇い続ける必要はない」と思ってるのでは
じゃ、どうすんの?ってのが大事なんですが。これは別記事にまとめた。
/ 日本の雇用環境の変化、状況を表層的に見ると痛い目みるよ、ということで
日本の労働環境にどんな変化が訪れるかは誰にも予測はできない。しかし、変化にどのように適応するのかには普遍性があったり、ノウハウはある。40代の我々、そして30代の後輩たち、20代の今の若い子たちも、この10年の変化をみて、どのように変化に備えるのかを考えたほうがいい。
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