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澪つくし美食部 「麺に光を(心斎橋)」2023.05.07

(3分ほどでサクッと読めるくいだおれ食コラムです)

場所は、ミナミは心斎橋を四ツ橋筋方面へ西に進み、いわゆる「アメ村」界隈のビルの階段を下りたところにある。
店前からビル前の歩道のところまでにはおよそ7組ほどの待ち列があり、人気店であることが伺える。
事前に調べたところ、この店はカウンターのみ7席のようだから、回転率を考えると前7組でもそれなりの待ち時間を覚悟したほうがよさそうだ。

「ラーメン屋に並んでまで食うなんて信じられへん」
この手の会話はみんな一度くらいは交わしたことがあるだろう。実際、この日の夜、飯を食った友人はそう言っていた。
前後の予定もあり、私も普段はあまり長々と列に並んでラーメン屋に入るようなことはしない。
しかしこの日は幸い夕方まで予定もなく一人だ。たまには贅沢に時間を使うのも良いかなと思ったし、何より、直感で「この店は美味いんちゃうか」という気がした。

店の外にあるメニュー看板を見てみる。

この日は主軸による3ラインナップだった

鴨出汁(淡麗仕上げ)の「ヒップホップ」、
鴨&魚介出汁(キリッと仕上げ)の「R&B」、
貝出汁(上品な香り仕上げ)の「パンク」。
この店は、ラーメンを音楽のジャンルで表現するようだ。

これは悩ましい。日頃であれば、この3つであれば私はまず鴨出汁で淡麗に仕上げた「ヒップホップ」を選んでいる。初めての店であれば、できるだけソフトで淡麗な仕上がりのものから味を確かめたくなる性分なのだ。
しかし、この店独特の命名法が私のチョイスを変えた。この3つで私が最も好きな音楽ジャンルは「R&B」なのだ。となると、これを食べない手はない。

列が進む途中で、店員さんから先に食券を購入するように案内をされ、私は迷わず「R&B」を購入した。
時間にして小1時間ほどだろうか、ついに店内に案内される。一足先に食券を渡していたので、ほどなくしてラーメンが運ばれてきた。

「R&B」(鴨魚介出汁)

まずはスープに口をつける。美味い。
昆布や数種類の削り節で「キリッと仕上げ」と表現されるタイプのスープは、時として濃すぎたり、角が立ちすぎたりしていて、途中から「ひつこさ」がある場合がある。それもあって私は、ふつうであれば、よりすっきりマイルドで淡麗なものを選ぶ傾向がある。
しかし、このR&Bは香り高さと深み、やさしさのバランスが絶妙で、個性はあるのにそれを全体的になにか穏やかなもので包み込んでいる魅力がある。

具材にも箸をつけると、それぞれが食感、味わいで一つひとついい仕事をしている。特に、焦がしたオニオンは香ばしいのに、悪目立ちをしない。
それもこれもスープの存在が大きいように思う。

そして、麺。この一杯には平打ち麺が使用されている。
麺についても基本的には細麺を好む私だが、この平打ち麺はもっちりしているのに重たすぎずとても食べやすい(すすりやすい)。
そして何より、穏やかとはいえキリッと香り高いスープに負けない立ち回りをしっかりと果たしているので、最後の一口まで至福だ。

出汁にこだわり香り高い、食材にこだわる、上質な麺、そして行列。
こういうラーメン屋は最近とても多く見受けられるけれど、ここの一杯はそんな中でも最初の一口から最後の一口まで、終始うなずいてしまう美味さを感じることができた。

醤油系のラーメンだと、個人的には、
「人生夢路 徳麺」(谷町四丁目)、「中華そば うえまち」(上町)、「なにわ麵次郎」(難波など)がとりわけオススメの店だが、今回の「麺に光を」さんも、ここに加わる最高の一杯だ。
何より個人的には、心斎橋のど真ん中なので、ミナミをホームグラウンドにしている私にはより訪れやすいのもうれしいポイントだ。

並ぶ時間を割いてでも、食べてほしい一杯だ。

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