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マンハッタンに初めて行った話

先日、大学のサークルの先輩と久しぶりの再会を果たした。まさかニューヨークのマンハッタンで会うことになるとは。

彼はタクちゃんという名で親しまれているので、ここでも敬意を込めてそう呼ばせてもらいたい。

タクちゃんは約三ヶ月間、アメリカのロードアイランド大学の工学系研究室でインターン留学をしており、この日は彼にとって帰国前日であった。

年齢はわずか一歳しか違わないが、経験値というか含蓄というか、持っているものは追随を許さないほど先行しているように話を聞きながらそう感じた。今回は4回目の留学であるタクちゃん、その会話の中で印象に残った、日本とアメリカの違いや研究分野といったトピックに、マンハッタンで見た風景を織り交ぜながら共有したい。

始めての”ニューヨーク”

海外の観光客が東京に足を運ぶとしたら、やっぱり東京らしいと感じる渋谷や浅草に向かうと思う。ニューヨークの”奥多摩”に住んでいる僕にとって、絵に描いたようなニューヨークであるマンハッタン島に、やはり行ってみたい。今回その小さな夢が叶う。既に何度か訪れているというタクちゃんに、オススメスポットを紹介してもらう形で、始めてのマンハッタンツアーが始まった。

Pennsylvania Station. 略してPenn Stationと呼ばれており、マンハッタン島の中心に位置する駅である。

街の喧騒感や、真っ直ぐに延びる一方通行の通りは大阪の御堂筋に似ている。

東をイースト川、西をハドソン川に囲まれたマンハッタン島にこれだけの数の高層ビルが建ち並ぶのは、この島が一枚の硬い岩盤で出来ているからだ。その岩盤の上には、多種多様なバックグラウンドを持った人たちがひしめき合い、人口の半数以上はヒスパニック系やアジア系といった白人以外で占められている。だから、ここで暮らしている人が「ニューヨークはアメリカの中で一番アメリカじゃない」と言うのもうなずける。

小さな気づきの積み重ね

留学していると、こっちの学生は自分の大学のTシャツやパーカーをよく着ていることがわかるし、住宅地や街を歩いていても、星条旗をよく目にする。エスカレーターに乗る時は、右左気にせず、立ちたい側に立つところや、17時きっちりに定時退社するところ。マンハッタン島を南北に走るアベニューを下りながら、アメリカに来て気付いたことをタクちゃんと互い互いに交換した。

統計を使って、ある集団の傾向や性質を知るにも、一定の観測数が必要なのと同じように、なんてこともない小さな気づきの積み重ねは、違う文化を理解するのに必要なステップだと思う。

例えば、大学名を見る観点一つにとっても、日本とアメリカで違いを感じる。日本だと大学名が重視されるのは就職活動やその後の肩書き、という感じだが、アメリカではむしろ在学中で、アイデンティティ(自分の居場所)を主張するために大事にしている、という印象を受ける。

ところどころに垣間見えるアメリカの自由で個人的な一面を見つけることは楽しい。パズルのピースのように小さな発見をかき集めて、少しずつアメリカの全体像を捉えていく感覚に似ている。しかもそのピースは必ずしも自分が持っているとは限らず、共通することで気付くことが多いということを、会話の中で気づかされた。

やっぱでかいな

小腹が空いていたので5番街沿いのマックに立ち寄ってみた。店内入ってすぐ横に、タッチパネル式のセルフレジがあって、そこで注文ができる。クレジットカードと電子マネーしか対応しないが、普及すれば確かに便利である。後で調べてみたところ、東京の一部の店舗にも導入されているよう。雰囲気も価格も日本と変わらないが、やっぱりサイズがでかい。

写真じゃあんまりサイズが伝わらないかもしれない。。。

あとそう、こっちは日本と違ってトイレがどこにでもあるわけではない。お店にあったとしてもロックがかかっていて、商品を購入したレシートの下に大体その暗証番号が書いてある。

おしゃれな百貨店

翌日に日本へ帰国するタクちゃんがイチオシするチェルシーマーケットでお土産を買いに行く。

このチェルシーマーケットは想像以上にオシャンティーな百貨店だった。落ち着いた照明とそれに照らされる石畳のフロアがすごくいい感じ。

にやけてしまってる。。

お目当てである Fat Which Bakery のブラウニーもゲット。

これ、甘すぎず本当に美味しかったので、来年帰国する時にはお土産で持って帰ります。紹介してくれてありがとうございます。

生物学と工学、発見と発明

二人の話は専門分野に移る。可愛らしいパッケージのブラウニーの後にしては、やや渋い話になるかもしれない。

工学部に属するタクちゃんの専門分野は流体力学である。インターン先のロードアイランド大学では、妊娠検査薬の精度向上を目的とした研究に加わっていたそうだ。それまで知らなかったが、妊娠検査薬は尿中にある特定のホルモンを、抗体を利用して、検出する仕組みになっている。なので、この研究は工学のみならず、化学、生物学や医学も関わっている融合分野にある。むしろ、社会問題のほとんどは色んな要因が複雑に絡んでいて、解決するには学際的アプローチが必要だよねという話になった。

研究室先の教授にこう言われたそうだ。「大学の研究で本当に必要なのは知識ではなく、技術だ」と。この言葉がずっと印象に残ってて、家に帰ってから、技術という言葉の定義を調べてみると、この文脈にいちばんしっくりくるものがあった。ぎじゅつ【技術】:科学を実際に応用する手段

発見の学問と言われる生物学に対して、工学は発明の学問と言われる。工学の教授がそうおっしゃるのはもっともだが、自分の専門分野や他の学問にも当てはまるはずだ。その視点で日本の研究界を見てみると、まだ知識の吸収にとどまっている学生がほとんどで、どうも社会実装の準備が大学では整っていないという。

アメリカでは、大学と企業が合同研究をするところが多い。常に社会への応用を意識して開発を進めているので、資金や研究員不足になることも少なければ、社会実装のスピードが他の国と比べて断然速い。こういう合理的な仕組みをアメリカの研究室で見出して、技術と共に日本に持ち帰りたい。

生体分子生物学に興味がある僕だが、好奇心を満たすことだけにとどまってはいけないなと改めて実感する。

High Line

チェルシーマーケットを出るころには、日はすっかり暮れ、夜の帳が下りていた。ハドソン川の夜景を見たいとぼくのわがままに、西の方に向かう途中で、これもまたタクちゃんイチオシのHigh lineに延びる階段の前を偶然通りかかり、登ってみることに。

1960年代廃線されたニューヨーク・ウエスト鉄道を歩道橋に再開発したものがこのHigh line。写真のように、当時のレールを残しており、ビルが建ち並ぶ中で、スタイリッシュでありながらオアシスのような空間を作り出している。

チェルシーマーケットから約2㎞ほど、北上するとこのHigh lineの終点に差し掛かる。案内してもらうマンハッタンツアーも終わりが近づく。マンハッタン島は広すぎて、半日じゃ全然回り切れない。今回行く時はどこを回ろうか考えておこう。


最後にタクちゃん留学、お疲れ様です。始めてのマンハッタン、最高でした!!



君に幸あれ!!!