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星の降る夜

宇宙の収斂が始まってもう5年になる。

夜の展望台に立つと思わず口を突いて出るのが、
「たまには流れない星を見たいものだな」
隣のカップルの妙な顔。星は流れるもの、と思っているのだ。

学校が勉強を教えなくなってから、現象の原因を探らぬ若者が増えている。

「目に見えるものが全てだ。それだけで人間は生きて行ける。」

だが、あの流れ星のひとつひとつに、この地球のような星が含まれているということを、彼らは考えたこともない。どれほど膨大なカタストロフが繰り広げられているのか、考えたことも。

頬が冷たくなる。いつのまにか若者達は姿を消している。

五十年一日も休まず通い続けた天文台を、今日初めて休んだ。ずっとここにいた。

昼間の流れ星、夕暮れの流れ星。ふくろうの声。

・・・やがて、ひときわ輝く星が、頭上に現れる。

赤から青、そして緑。段々と大きくなってゆき、空じゅうが白くなったとき

・・・私は生まれて初めて神を想った。

(1999・11)

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