地方創生の正体

「地方創生」とは東日本大震災(2011年3月11日発生)を契機に高度経済成長後のあり方を模索した中で辿り着いた政策であるように考えられる。








これまで活躍してきた地方自治体、地域住民、コミュニティ、道路、公共施設やその他建築物等その遺産の種類は枚挙に暇がない程数多見られる。





一時期、政権公約に近接するものとして前述の地方創生が標語となり地域づくりの先駆け的な存在となったことは事実である。








一方、最近では地方創生という文言自体メディアや世間で喧伝されることは多くはなく、むしろ地域活性化やSDGs(Sustainable Development Goals)等に代表される総花的な政策の様相を呈してきている。





SDGsを日本語訳すると一般的には「持続可能な開発目標」となるのだが一体何を指しているのだろうかと疑問符が附く。







内閣府HPによれば、SDGsは17つの開発目標に分けることができ、それぞれの取り組みをいわば款項目節を模倣し、政策の焦点を明確化するためジェンダーや環境保全、教育等、章ごとに予め分類しておくことにより、民間企業や役所がより注力しようとする事業をまとめ得る性格を保持しているという。







17つの章の組み合わせによって民間企業や役所の特色を活かせる効力が誘発されるように思えるが、客観的に判断してみると、それは「当たり前」であるかのように推測できる。







理由として考えられることは、至って単純でそのような取り組みは従前から民間企業でも役所でも行われていることに他ならない。会議の性質を言い換えたくらいに思って頂ければ理解は早いだろう。






決して政権批判をしているわけではないが、地方創生を本腰を入れずにどっち付かずの結果を導いていることが指摘できる。





これまで地方創生とSDGsを比較対象にしてきたのは、内閣府による地方創生の推進がフェイドアウトしていることに説明ができる。安倍政権が長期政権となっている理由は野党の脆弱化、民主党政権への批判的回顧からの不信感、二大政党制の機能不全(野党の脆弱化がもたらす結果)等があるが、与党と野党の競争力の低下により「保守とリベラルの対立軸」が希薄化し、保守側に政治的思想が傾倒していると考えられる。これが政府の政策立案がより保守的なものにし、既得権益の囲い込みやその維持を目指すことが考えられる。








つまるところ、政策論争には対外的に向かわず消去法によって自民党による統治(Governance)に収束し、地方創生からSDGsへの移行が政策転換の意味合いを包摂したまま無機質に行われたと推測できる。







地方創生が膾炙されることとSDGsのそれは反比例していると考えられるが、民間企業それも1部上場企業がSDGsを積極的に取り入れている傾向がある。「SDGsの民間企業への適用」は今やトレンド化しているが、果たして民間に対する効果は如何程のものだろうか。






実際、異様なまでに民間がSDGsを推進する理由は模糊としている。企業の求心力を高めたりコーポレート・ガバナンスの可視化等が候補として挙げられるが、青天井は越えたに等しいだろう。



行政がSDGsを推進し、自治体で活用している例があるが、大凡政府からの補助金(上限5000万)の獲得が目的である。石部金吉(ステレオタイプかもしれないが)である公務員が政策の効果を見誤っているとはどうも考えられない。
つまりは自治体の財源確保のためにSDGsを活用し地方創生の片棒を担いでいる現状にある。

繰り返しになるが、今のSDGsに期待する世論は異様な程高まっておりその言葉だけが一人歩きしている段階にある。


先日、某大手広告代理店のマーケティング部門の代表者が大学院に来られてSDGsに係る講義をしたが、内容は実に抽象的で理論とは決して言えるものではなく、経験則的な学部生(学部レベルではない)のレポートを見ているようだった(飽くまで個人的意見)。会社の方向性の話を淡々と語るだけであって経験の枠を出ない理想論であったことは変わりようがない。


このような民間企業が地方創生を担う立場にあると考えると暗澹たる思いが湧いてくるが、実力以上に物事を整理し切れていない。経営哲学の要素が大きく働いているのかもしれないが、行政はこのような杜撰な政策立案をすべきではないことは確かである。政府が推進する地方創生のプロジェクトは年々下火になっている傾向にあり、復興債という一種の予算で復興のヴェールを被っている現状にある。派手ではない政策には予算を附けておけば丸く収まるのような考え方だと、皮肉を込めて言わせてもらうと「せいやでやっておく」の典型的な例である。



最後に、今の政権に対して考えられることは「地方創生は最優先課題ではなく、その政策も後回しになっている」ことである。




地方創生の正体とは、今の政策推進の状況から鑑みると、客寄せパンダの意味合いが強く合理性を欠いており一昔前の統治方法であるガバメント(Government)に変質している。

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