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da Vinci(第1回:手):技術多め医療ロボット紹介

開始宣言の勢いを失わないうちに始めていきたいと思います。
(念の為自己紹介はこちら

最初は、現在「手術ロボット」の代表格であるIntuitive Surgical社のda Vinci Robotic Surgical Systemについてご紹介してみたいと思います。

これは少し分野が離れている方でも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
個人的には技術もさることながら先行者としての、販売、サポート、教育、研究のエコシステムが確立されている点が今の強さを支えていると感じています。

一回でda Vinciのすべてをご紹介するのはもちろん不可能なので、シリーズとして数回に分けてご紹介したいと思います。

第一回はロボットのイメージともつながりやすい、「手」の部分からいこうと思います。「ロボットアーム」に相当する部分ですね。産業用ロボットなどでよく見られる構成とはかなり異なる機構を持っていたりするので、面白いです。

初回で分量も探り探りですが、サクッと重要な部分を読めるような長さを目指しました。

(ここから少しだけマニアックになります)

da Vinciのような手術ロボット(特に腹腔鏡向け)アームを考える際のキーワードが、"Remote Centre of Motion (RCM)"です。これは機構的に仮想の支点を作り出す概念です [1]。

RCMが必要になる理由は、腹腔鏡手術では小さな穴をお腹に開け、そこから器具を入れて治療を行います。そのため、挿入孔地点では器具が3次元空間的に動かないようにする必要がある一方で、お腹の中では例えば器具の方向を決定する回転2自由度、器具の軸周りの回転、器具挿入のための並進1自由度の計4自由度を持たせる必要があります [1]。

論文[1]内の図2をもとに再作成

この機構の実現にはいくつかアプローチがありますが、da Vinci Si HDのアームは以下のように図示されています。

本当は中に細かく多くの関節で構成されているのですが、注目していただきたいのは、リンク機構で、これがRCMを実現しています。その後は並進関節、回転関節1、2、3で合計4自由度をRCMの先で実現しています。
そのため、RCMよりも先端部分が体内で活動するということになります。

論文[2]内のFigure2をもとに再作成

RCMは、患者さんの安全を守りながら腹腔鏡手術という治療を成り立たせる上でとても重要な役割を担っています。
もちろん、全く違う体の部位を対象としたロボットではコンセプトが大きく異なります。

以上が、第1回Da Vinciの「手」についてでした!
次回、第2回は「目」について見てみたいと思います。

ご意見、ご感想、ご質問、誤りのご指摘などあれば、ぜひぜひコメントお待ちしております!
(短すぎる、簡単すぎるなどもお待ちしてます!)

参考文献

[1] 佐久間一郎. "低侵襲手術ロボットシステム." バイオメカニズム学会誌 32.3 (2008): 147-152.
[2] Freschi, C., Ferrari, V., Melfi, F., Ferrari, M., Mosca, F. and Cuschieri, A. (2013), Technical review of the da Vinci surgical telemanipulator. Int J Med Robotics Comput Assist Surg, 9: 396-406. https://doi.org/10.1002/rcs.1468


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