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虹の彼方に 第12話 雨上がりの空に

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 ライブが終わった。
 時計の針は一時間半ほど進んでいる。
「えっ、いつの間にそんな時間が過ぎていたの?」
 楽しい時間は早く過ぎ去る。その言葉の通り、あたしにときの流れを感じさせることのない、密度が高くて楽しめるひとときだった。

 演奏を終えたメンバーがステージを降りた途端、アンコールの声がかかった。
 得能くんたちには予想外の出来事みたいで、バタバタしながらもう一度顔を出し、慌てて最初の曲をもう一度演奏した。
 あのワタルさんがいるバンドなのに、アンコールのことまで考えていなかったなんて。ここまで盛り上がるとは想像していなかったのかもしれない。

 計算し尽くされたものではない手作り感や拙さが垣間見えて、あたしには逆に印象が良かった。

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2,948字
全部で10話ほどですが、1話は短めです。原稿用紙100枚を目処に書いた中編小説を改稿したものです。文字数換算すると、3万字強になります。

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