虹の彼方に 第1話 沙樹のミッション(2)
かといって余裕で合格圏内にいるわけではない。これから八カ月弱は勉強中心のハードな日々が予想される。
でも何かを得るためには何かを犠牲にしなくてはならない。努力もしないで目標達成できるほど世の中は甘くない。今年一年がんばって、春には桜を咲かせてみせる。
あたしはそう自分に言い聞かせ、くじけそうな気持ちを奮い立たせていた。自分がコツコツ頑張れるような努力家でもなければ、さらっと勉強しただけで優秀な成績をとれるような優等生でもないことは解っている。
「一年のときからずっと志望校に書いてただろ。ところが夏休み前のアンケートで急に変えるとは思わなかったぜ。おまえさえその気なら、補習でもなんでもしてやるんだが」
「いえ……いいです」
魅力的な話だが、やり遂げるだけの自信がなかった。
「そうか。残念だけど無理強いはできないな」
水野先生はアメリカ人みたいに肩をすくめたあとで、椅子に座り直した。
「それよりさっきの話だが、得能だけ帰したのは、あいつのことで相談があるからなのさ」
「あたしに、ですか?」
「あいつ、ここ最近講習会をサボってばかりだろ。いくら成績がいいからって、あれでは先々不安なんだ」
先生はふっとため息をつく。それがあたしとどんな関係があるの?
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