虹の彼方に 第3話 五月病予備軍
「ああ、もうだめ。再起不能」
悪夢のような二時間が終わったころ、あたしは精も根も尽き果てて机に突っ伏した。
ふと顔をあげると、板書を消していた水野先生が心配そうにこっちを見ている。そんなに大声を出したつもりはなかったが、前から二番目の席だとつぶやき声も教壇に届く。
不覚にも目があってしまった。
言いたいことは山ほどあるが、口に出す気力も残っていない。視線を外して体を起こし、あたしは帰り支度を始めた。
水野先生が物言いたげに近寄る気配がしたが、あえて気づかないふりを続ける。
同じタイミングで数名の女子が先生を取り囲み、質問を始めた。あらあら、今日も女子高生にモテますね。
あたしは先生を無視して、鞄を手に教室を出た。
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