見出し画像

2024.08.15 Panorama Panama Town pre.「JUNCTION」@ 新宿LOFT

2024年、今私が最もハマっているバンドであるmol-74とEnfantsを、Panorama Panama Townがなんと一挙に呼んでくれた。ありがとうございます。

パノパナは完全に初めましてのバンド…だと思っていたけれど、よくよく思い出してみたら岩渕さんだけ初めましてではなかった…!

5月にビバラロックにて片平実さんのDJを見たとき、そこにゲストで出て「Bad Night」を歌っている岩渕さんを見たことがあったんだった。思いがけず伏線回収みたいな感じになった。

会場は新宿LOFT。DJによるリミックスが開演前と転換中に流れていたため、待機時間中も全然飽きないのが嬉しい。
「フィクション(sumika)」「Hello Song(星野源)」「平成ペイン(バニラズ)」「Butterfly(バンプ)」「ブラックアウト(アジカン)」などなど私の音楽遍歴そのものみたいな選曲が続いたときもあり非常にアツかった。

というわけで、今回はそんな3バンドを一挙に見た感想をゆるーくまとめていきます。


mol-74

2月に開催された自主企画「∴」以来2度目のモルカル。

1曲目から「Saisei」聴けて嬉しかった。1曲目から澄み切ったファルセットが会場内に響き渡るの、最高すぎる……

この日の前日、メンバー全員で行うはずだったインスタライブを体調不良で欠席していた坂東さんも、元気そうな姿を見せてくれてひと安心。

この日は「エイプリル」「%」「Replica」などのライブ定番曲に「BACKLIT」「遥か」といった最新アルバムに収録されている曲を組み合わせたいわば名刺のようなセットリストだった。どの曲にも求心力があり、落ち着いて聴いていられる。やっぱりそれは安定感のある演奏あってこそ。リズム隊を基盤に乱れることのないバンドアンサンブルが曲の魅力を余すことなく堪能させてくれる。

モルカルとパノパナは10年くらいの付き合いがあるが、共演するのはなんと7年ぶりらしい。これには客席からも驚きの声が漏れる。

MCでは、この2組にモルカルの盟友ともいえる存在であるPELICAN FANCLUBを加えて回ったスリーマンツアーの思い出も語ってくれた。

このツアーが各バンドのマネージャー同士が結託して企画されたものであったこと。
その当時のペリカンのマネージャーがサッカー好きだったことがきっかけで、なぜかサッカーのユニフォームを着せられて動画を撮ったこと。
福岡にあったテーマパーク(今は潰れてしまった)のUFOキャッチャーでゲットした大きなぬいぐるみの置き場に困っていること…………とにかく楽しい時間、そして思い出であったようだ。

「パノパナ、Enfantsとの歴史を更新しに来ました!」と披露されたのは「0.1s」。〈今日はきっといつかにとっての目印になって 遠くなってしまった僕らも繋がり合うような 予感がしてる〉という歌詞は、この日のライブの状況そのもの。ここ数年の間にモルカルとパノパナは独立、Enfantsはセカンドキャリアを歩み始めたわけだけど、いろいろな変化がありながらも今もステージに立ち続けてくれているのは嬉しいことである。

9月と11月に東京でのワンマンを控えているモルカル。9月に行われるワンマンは、バンドのYouTubeチャンネルの登録者が10万人に到達することを記念して開催されるものである。(しかし、まだギリギリ10万には到達していない)

「ぜひ、チャンネル登録もお願いします……バンドやってきて、こんなこと言う日が来るなんて思ってなかった!(笑)」と最後のさいごのMCで話すようなゆるさもモルカルの好きなところのひとつ。音楽の雰囲気とバンドメンバーの雰囲気が合致していて、ずっとほわほわした気持ちで音楽を聴いていられる。

見れば見るほどまた足を運びたくなるようなライブを見せてくれてありがとうという気持ちでいっぱい。心が濾過されて美しい成分ばかりで満たされた。11月のZepp Shinjukuでのワンマンがなおさら楽しみになった。

1.Saisei
2.BACKLIT
3.遥か
4.エイプリル
5.%
6.0.1s
7.Replica


Enfants

幕が開くとすでにメンバーはステージに立っており、SEもなしにそのまま中原さんのベースリフがずしりと鳴り響く「社会の歯車」が演奏された。出だしからバンドのスタンスをはっきりと見せつけてくるところがかっこよすぎて痺れる。

そこから「HYS」「デッドエンド」といった激情的な流れで演奏は続いていく。照明はステージの床に数本設置された蛍光灯が白く発光するのみ。カラフルな照明のなかでみずみずしいサウンドを奏でたモルカルとは対称的に、モノクロの世界のなかで感情をそのまま叩きつけるような緊張感あるステージングである。

4曲目に演奏された「ひとりにして」は先月足を運んだワンマンでも演奏されていなかった新曲である。現実を直視しながらもどこか夢見心地なサウンド感で構成されたこの曲が個人的にはとても好きで、ライブで初めて聴くことができて嬉しかった。

パノパナとEnfantsはかつて同じ事務所に所属していた(パノパナは昨年独立し、事務所を離れている)。「パノパナが事務所を離れて1年くらい経ったけど、楽しそうにやってる姿見れてよかった」と大さんは話す。

「俺たちも全力で……ん、いや、好きなようにやります」と演奏された「R.I.P」。変に着飾ったり気合いを入れすぎたりすることなく、内側にある感情をただただ吐露していくようなライブをするアーティストがやっぱり一番好き。

その後はちょっといろいろあったため、本人たちにとってはもしかしたら不完全燃焼な感じはあったかもしれないが、演奏自体は本当にかっこよかった。Enfantsは最後まで、Enfantsとしてのスタイルを貫き続けた。

特に「Drive Living Dead」からの「Play」の流れには頭を叩きつけられるような衝撃を感じた。あの場で沸いた怒りやフラストレーションみたいなものが演奏にも出ている感じがあって、終始ヒリヒリした。まあ彼らとしては不本意ではあっただろうから複雑な気持ちではあるが。

当たり前の話ではあるけど、ロックバンドのライブって人生そのものだよな、とEnfantsのライブを見ていると改めて実感する。曲を作ったときの感情とステージ上で感じたリアルタイムの感情が混ざり合うことではじめてライブは完成するのだと。

Enfantsのライブの予定は既にいくつかある。その時々でどんなライブを見せてくれるのかがさらに楽しみになったステージだった。

1.社会の歯車
2.HYS
3.デッドエンド
4.ひとりにして
5.R.I.P.
6.Kid Blue
7.Drive Living Dead
8.Play


Panorama Panama Town

バンドとしては初めましてのパノパナ。ライブでよくやる曲をリサーチして予習してたんだけど、その中で特に好きだな〜と思った2曲をどちらも演奏してくれて嬉しかった。

聴けて良かった曲一曲目は「Run」。軽快なダンスミュージックに暗闇を駆け抜けていく爽快さが加わった楽曲である。パノパナの良いところは、音楽面ではダンスロックを貫きながらも、誰もが生活していたら一度は考えるような普遍的な感情を歌詞として乗せるバランス感だと思う。表向きのノリの良さは楽観的な態度から来ているものではなく、寂しさや焦燥、取り留めのないもやついた感情を何とか乗り越えようとするスタンスから来ているものなのだろう。

もう一曲は「Knock!!」。あなたが私の心のドアをノックしてきてくれたのに、なんであなたの方からいなくなっちゃうの?という曲。「いなくなってしまった人もいれば、新しく出会った人もいる。そんな新宿の歌を歌います」みたいな感じのMCがあってからのスタートだったんだけど、いろんな出会いと別れが交錯する新宿という地でこの対バンライブに出会うことができてよかったなとしみじみ感じた。

この日は「losstime」という新曲も演奏された。「今までの人生、全てを肯定できるかと言われたらそうではない。けど、やれんことがあったからこそ、今があるんだと思います」と岩渕さんは言う。やりきれない思いが人を突き動かし、今もこうして彼らをステージに立たせているのだろう。


「明日台風がくるということで。明日はモルカルのライブがあって(モルカルは翌日にLEGO BIG MORLとの対バンを控えていたが、このライブが終わった後に中止が発表された)、それが出来るか分からないって状態になったとき、『明日(ライブ行く)の人の気持ちも考えてください!』みたいな声が上がるような世の中だけど、もっと今を楽しんでもいいんじゃないかなと思います。今を楽しみ抜く勇気を持とう」

という岩渕さんのMCは特に印象に残っている。なにかと窮屈なこの時代にこういう精神性を持つバンドがいてよかった。そう心から感じた瞬間だった。

一糸乱れぬグルーヴに溺れ、思うがままに手を振り上げ、踊る。ただこれだけを楽しむことができる空間がどれだけ幸せなことか。とても良い夜だったから、またどこかで必ずライブ行きます。

1.キルケ
2.King's Eyes
3.Bad Night
4.Algorithm
5.Faceless
6.losstime
7.Black Chocolate
8.Run
9.Knock!!
10.Strange Days
〈アンコール〉
11.Rodeo


それぞれのバンドが異なる温度感や性質を持っていて、それぞれに別の輝きを放つステージだったというのが全体を通して一番に感じたこと。

それぞれの場所で研鑽を重ねてきたバンドが一堂に会する瞬間を見れたことが何よりも嬉しかった。このバンドたちが活動している間は、何度でもライブハウスに足を運ぶんだろうな〜と思った日。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?