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チェンジに抵抗はつきもの

チェンジマネジメントは組織が進化し成長するために必要なプロセスですが、その道のりには抵抗がつきものです。私が所属していた組織は、人事、組織、プロセス、報酬などの変化が常に飽和しており、社員は変化に慣れている印象もありましたが、それでも変革プロジェクトの初期には何らかの抵抗がありました。

なぜ人は変化に抵抗するのでしょうか?経験上、私たちは、変化が不安を生むことを知っています。現状に100パーセント満足していない状況であっても、私たちが慣れ親しんできたもの、そして快適に感じていたものを失う可能性は、心配と不確実性を生み出します。さらに、変化した先の未来の状態は未知の世界であったり、不明確であったりします。また、組織の文化と歴史が、新たな変化への個人の抵抗に直接影響を与えることもあります。例えば過去にうまくいかなかった同様の出来事やプロジェクトは、新たな変化に参加する人の意欲に大きな影響を与えます。

抵抗のトリガー

そういうわけで、人々が現状から未来へ変化する3つのプロセスを経る際には、抵抗を示す可能性が多くあります。このような抵抗の根本的な原因は、人々がそれぞれの変化の状態の中で抱く、特定の懸念から生じます。

個人の例として、小学校6年生の子供が親の転勤により日本からイギリスへ移住するというシナリオを考えてみます。この変化には、子供が現状を離れ、新しい環境に順応する際にさまざまな抵抗が生じる可能性があります。

State of Change
変化の状態に応じた抵抗のトリガーと原因

現状を離れる: 子供は日本の生活や友人とのつながりを奪われることに対して不満や喪失感を抱くかもしれません。親が転勤に伴う移住を子供に伝える際、現状を失うことへの懸念や不安が生じる可能性があります。

過渡期を経験する: 子供はイギリスでの未知の環境や新しい学校に対する不確実性や恐怖を感じるかもしれません。英語を習ったことがない子供ならなおさらでしょう。

未来の状態に到着する: 子供は新しい環境での挑戦に直面することになります。新しい学校や文化に適応し、新しい友人を作ることに対して不安や失望を感じるかもしれません。

以上のように、子供が海外へ移住する際の抵抗の要因は、現状の喪失や不確実性、新しい環境への挑戦に関連しています。

抵抗管理のための具体的な対策

上記の海外移住の例では、子供は家族の一員として、ある時点で「これが現実だ」と認識し、それを受け入れる必要があります。そこで、保護者としてチェンジマネジメントの抵抗を管理する場合、以下のような対策が考えられます。

  1. コミュニケーションの重要性:変化に関する情報を明確に伝えるために、できる限り過渡期と未来に関する情報を集め、子供とオープンに対話し、感情や懸念を理解する努力をします。子供が感じる恐れや不安を真剣に受け止め、サポートを提供する約束をすることで抵抗を軽減します。

  2. サポートの提供:子供が新しい環境に順応するために、サポートしてくれる人を見つけたり、学校や地域のコミュニティへの参加したり、学校以外でクラスメイトと交流する機会を作ったりします。

  3. 前向きな環境の醸成:子供にとってポジティブな環境を提供し、成功体験を積む機会を与えます。例えば、何が起こるか想像のつかない大規模な学校ではなく、一人一人の状況に応じてサポートしてくれる小規模な学校を選びます。

抵抗のタイプ

それぞれの抵抗のタイプには、異なる原因があり、それぞれに異なる対応が必要と考えられています。具体的な抵抗のタイプを理解し、適切な対応策を考えることが、抵抗管理の成功につながります。以下はProsci®が調査・分析した結果である抵抗のカテゴリーです。

感情:恐怖、喪失、悲しみ、怒り、不安、フラストレーション、憂鬱、自分自身への集中

離脱:沈黙、コミュニケーションの無視、無関心、士気の低下。

仕事への影響:生産性/効率の低下、コンプライアンス違反、欠勤、ミス。

行動に表す:対立、口論、妨害行為。横柄、攻撃的、または受動的攻撃的な行動。

ネガティブ:噂/ゴシップ、誤解、不平不満、問題に焦点を当てる、失敗を祝う。

回避:変化を無視する、古い行動に戻る、回避策、責任を放棄する。

障壁の構築:言い訳、反論、反対者の勧誘、秘密主義、信頼関係の崩壊

コントロール:多くの質問をする、結果に影響を与える、現状を擁護する、ステータスを利用する。

これらのカテゴリーは、変化に対する抵抗のさまざまな表現や行動を理解するための基礎となります。

抵抗を管理するための戦術

抵抗は、組織の変革を妨げる可能性のある要素です。変化に対する抵抗が放置されると、生産性の低下やコミュニケーションの崩壊などのネガティブな影響が生じることがあります。しかし、抵抗を適切に管理することで、変化の受容度を高め、スムーズな移行を実現することができます。

以下は、Prosci®による、抵抗を管理するためのトップ10の戦術です。

抵抗を管理するためのトップ 10 の戦術


1. 反対意見に耳を傾けて理解する:抵抗する人々の意見や懸念に真剣に向き合い、彼らの視点を理解しようと努めます。彼らの声を尊重し、共感することで信頼関係を築きます。

2. 「何を」に焦点を当て、「どのように」を手放す:変化の目的や意義を明確に伝え、具体的な変化内容に焦点を当てます。同時に、古い方法やプロセスを手放すことの必要性やメリットを説明します。

3. 障壁を取り除く:抵抗の原因となる障壁や誤解を解消するために、情報の提供や質問に応じた明確な回答を行います。誤解を解き、情報の透明性を高めることで、抵抗の軽減につなげます。

4.シンプルかつ明確な選択肢と結果を提供する: 変化に関連する選択肢や行動の結果を明確に示し、受け入れやすい形で提示します。具体的なアクションプランや成功事例を共有することで、変化への理解と受容を促します。

5.希望を生み出す: 抵抗する人々に対して、変化がもたらすポジティブな側面や将来の成果を示します。変化によって実現される個人や組織の目標や利益を明確に伝え、希望を持てるようにサポートします。

6.現実的かつ具体的な方法でメリットを示す: 変化がもたらすメリットや改善点を現実的かつ具体的な例やデータを用いて説明します。具体的な事例や成功ストーリーを共有することで、変化のポジティブな影響を信じることができるようになります。

7.個人的にアピールする: 抵抗する人々の個人的な関心やニーズに応えることを重視し、変化が彼らの目標や価値観にどのように合致するかを明示します。個人ごとの利益や関与の重要性を強調することで、変化への参加意欲を高めます。

8.最も強力な反対者を味方に変える: 抵抗の中で最も強い反対者や影響力のある人々を積極的に巻き込みます。彼らの懸念や意見を真摯に受け止め、彼らを変化の推進者に変えるための協力関係を構築します。

9.結果を実証する: 変化の成果や進捗状況を定期的に共有し、変化が実際に成果を生み出していることを示します。具体的なデータや実績を示すことで、抵抗する人々に変化の効果を実感させます。

10.インセンティブを提供する: 変化への参加や受容に対して、インセンティブや報酬を提供することで、関与度や意欲を高めます。変化への貢献や成果を評価し、評価や報酬の仕組みを整えることで、個人のモチベーションを向上させます。

抵抗は新しい状況や未知の環境に直面する際に自然な反応です。チェンジマネージャーやプロジェクトリーダーは、抵抗が起こったときに驚くのではなく、変化への抵抗が起こることを前提に、計画的な抵抗への対策をしておくことで、組織全体の移行を円滑に行うことができます。

引用:


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