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チェンジマネジメントにおける「チェンジ」を理解する

チェンジマネジメントに取り組む準備として、まず「チェンジ」を理解して定義することが必要でした。私の所属する組織が関与するチェンジについては、米国本社より社内の限られたメンバーへプロジェクトの概要やスケジュールが共有されることでチェンジマネジメントの準備が始まります。そこから、どんな人達に、どんな変化の受け入れが発生するのか、さらには変化のインパクトの大きさやどれくらいの準備期間がいるのかを調査して、チェンジマネジメントを計画するのが私の役割です。

変化のインパクトの10の側面

例えば、今回のプロジェクトが「自社とチャネルパートナー間でビジネスに関する情報を共有する新しいプラットフォーム開発し導入する」というものであったとします。このような企業や組織レベルの変化を、個人の仕事への影響へ翻訳する際に役に立つのが、Prosci®の「10 Aspects of Change Impact」(変化のインパクトの10の側面)です。このフレームワークは、プロジェクトによって個人が影響を受ける領域を捉える視点を提供してくれます。

10 Aspects of Change Impact Model

プロセス

定義された目的または結果を達成するために取られる行動または手順。
例:パートナー各社と自社とのエンゲージメントのステップ、パートナーから共有された商談データを自社のCRMシステムに取り込むためのアクションなど。

システム

ある目的を達成するために組織化された、人と自動化されたアプリケーションの組み合わせ。
例:新しいプラットフォームの導入により、パートナーと顧客間のライフサイクル全体を通じてデータを管理・分析すること。

ツール

特定の目的のために使用される、機械のような物理的なものから、ソフトウェアのような技術的なものまである。
例:パートナー社内のCRMソリューションから、新しいプラットフォームにデータをコピーさせるためのAPIなど。

仕事の役割(Job Roles)

ある人が何をするのかを説明したもので、その職能を十分に発揮するために必要な能力を含む。
例:顧客と直接エンゲージする営業、プリセールスSEや、ベンダーやパートナーとエンゲージする製品担当、マーケティングや販売促進担当など。

重要な態度、行動(Critical Behaviors)

行動、環境、人または刺激に対する個人または集団の重要なまたは不可欠な反応。
例:クライアントのニーズを満たすために、早期にベンダーや他のパートナーと協業し、ソリューションをデザインする。

マインドセット/態度/信念(Mindset/Attitudes/Beliefs)

行動に反映される考え方、気質、心構え。
例:ライセンス販売のトランザクションから、顧客との関係性を重視した取引形態への移行。顧客の維持と利用頻度を向上させるというマインドセットを持つ。

レポーティングストラクチャー

企業や組織における権限関係のことで、誰が誰に報告するかということ。
例:パートナー、ベンダー間での担当顧客ごとのオフラインやメールでの商談共有から、一元化されたシステム上での共有への移行。

パフォーマンスレビュー

目標に対するパフォーマンスをどのように測定し、評価するかというプロセスと指標。
例:ライセンスの売上から、毎月の顧客や製品ごとの利用量や新規顧客獲得数、クラウドライセンスへの移行率など。

報酬(Compensation)

業務遂行の対価として提供される金銭的および非金銭的な報酬の額。
例:ライセンス売上に応じたリベートから、見込み顧客へのマーケティング活動、新規ユーザー獲得数やフォーカスソリューションの売上に応じたインセンティブへの変更。

ロケーション

特定の目的のための地理的場所。
例:全国3か所にあったセミナールームを、10か所のコワーキングスペースに拡大すること。

この10の側面に沿って調査していくと、例としてあげた「自社とチャネルパートナー間でビジネス情報を共有する新しいプラットフォームを開発し導入する」という企業の組織レベルでの記述が、「プロセス」「システム」の領域でユーザーに影響があり、変更を必要とするということがより明確に記述できます。さらに、プロジェクトチームで開発し提供されるソリューションが明確になってくれば、どんな人にどれくらいの影響が及ぶのか調査を進めることができます。

このようなシステム導入プロジェクトの際に見落としがちなのが、「マインドセット」や「重要な態度・行動」への影響です。アメリカ本社では、プロジェクトの理由、目標、組織のベネフィットをNarrativeの形式で準備し、変化を促したいマインドセットや行動に関連付け、影響を受ける人たちにコミュニケーションする際にそのまま活用できるように準備されていました。メール、ブログ、個別の対話、トレーニングなど、どんな場所でも一貫性のあるメッセージを発信することが重要だからです。

プロジェクトごとに個人に変化が及ぶ側面は異なり、また組織や個人によっても変化の度合いは異なります。「変化のインパクトの10の側面」を使うと、最初はぼんやりしていた「チェンジ」の像が、だんだんと、誰に、どれくらい、どんな風にという文脈が追加され、クリアになってきます。そして、影響の見落としを防ぎ、より効果的なチェンジマネジメントの計画を作成することができるようになっていきます。

参考:Prosci® Defining Change Impact


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