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溶けて消えればいいと思った夜

11月、大切なものをひとつ失くして、ふたつのことを諦めた。
辛い出来事があって落ち込んだとしても、私よりしんどい人はたくさんいるし、この程度でなんのその、と思うようにしていたんだけど、今回は無理だった。なかなか平常心に戻れなかった。
いつもぼんやりとしていて、気づけば泣いているような日が2週間ほど続いた。「ツライ」と口にすることもできなかった。本当に辛いときはその事象を口にすることができないんだと初めて知った。昼は元気でも夜には落ち込み、食べたものを吐き、びっくりするほどに体重が落ちた。

それでも少し立ち直ってきたころに、今度は「すべての言動が腹立たしい」「あなたなんていなくなればいいのに」と友人に言われた。見ず知らずの人にネットで罵られることはごくまれにあったけど、リアルな世界であるとは思わなかったから、一瞬何が起こったのか分からなくて、ハハッと笑った。

その人が少し前から私のことを好いていないということには気づいていた。私はわざわざその人に好かれたいとはもはや思っていなかったのだけど、それがまた彼女の癇に障ったようで、上記の発言に至ったらしい。
「どうして私に好かれようとしてくれないの」
「どうして私のことを思いやってくれないの」
「どうして私がいないところで楽しそうにしているの」
「どうして私のことを分かってくれないの」
どうしてどうしてどうしてどうして私私私私わたしわたし。
吐き気がした。
きっと彼女は私のことを好きでいようとしてくれたんだろうけど、私は彼女のことを彼女が望むようには好きにはなれなかった。
誰かの心の中に入り込むことはしんどいし、誰かのために頑張り続けるのは辛い。

私は彼女の「いなくなってほしい」という言葉を聞き流すことに決めた。もしかしたら、彼女もその時は辛い時期で、つい言わなくてもいい本音を言ってしまったのかもしれない。本当に辛い時期だったので彼女が望む通り消えてやろうかと思ったのだけれど、そんなことで誰かを傷つけたいわけでもなかった。

とりあえずその日は泣きながらお酒を飲んで、しゃくりあげた。
誰かに辛さを分かってほしいとか、慰めてほしいとかはなくて、ただ自分で自分をかわいそがるだけでよかった。かわいそうだねぇ、かわいそうだねぇ、って。
それでもお酒を飲みすぎて気持ちがゆるんだのだろう。twitterでポロリと呟いてしまった。
何人かの人がその言葉を拾ってリプライをくれた。どれも優しくて温かくて、少しほころんだ。
深夜には年上の女性からFBメッセージが届いた。私はその人のことがとても好きでメッセージをもらえたことだけでも少し涙が止まる。単純だな、と思いつつもメッセージを開ける。とても優しい文章で、また涙が出た。
その中の一言。「自分も悪かったのかな、と思うけど、そんなことないって思わないといけない」という言葉がストンと心に落ちた(この一文だけ取り出すと少しニュアンスが変わってしまうけれど)。

大切なものをなくしたことも、諦めたことも、いなくなればいいと言われたことも自分が悪いと思っていた。私なんかいるからいけないんだ、と思っていた。
私は悪くない、何も。
そう声に出して言っただけで心が軽くなって、一瞬で眠りに落ちた。
寝ながら泣いていたらしく、起きたら目がパンパンに腫れていた。
目の腫れが引くころには、楽しいこともきっと待っている。自分が大好きな仕事を精一杯がんばろう。ただこれからも自分に恥じること、間違っていると思うことをしなければいい。
真面目にコツコツと積み上げていくだけでいい。それだけでいい。

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