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インドで下着をつくりたい その2

前回のつづき

さて。男女の差に衝撃を受けた私。「なぜ男性の方が有利に扱われるのだろう。」と疑問を持ちながら観察してみると、そこには納得する?理由がありました。

女性の立場が弱い理由

当時その地域では、”ダウリー”という制度がありました。

ダウリーとは、結婚する時に、女性側の家族が男性側の家族に渡す金品のことです。このダウリーの額や品物を条件に結婚の交渉が行われます。ダウリーの額は家により様々ですが、私が話を聞いた人は親の年収の3倍以上を用意すると言っていました。(その人には娘が2人いたため、大きなため息をついていました)良い結婚相手と結婚させるため、娘が生まれた家では、生まれた瞬間からダウリーの為の貯金を始めるとのことでした。(巻末に補足あり)

また、この地域では殆どの場合、結婚すると女性は実家を出て、男性側の家族と一緒に暮らすことになります。

つまり、

男の子は、将来働いて、その家にお金をもたらす存在
女の子は、将来お金をかけて結婚相手を探し、お金を持って出て行く存在

女の子だろうと男の子だろうと、自分の子どもは可愛くてたまらないのは基本的に同じです。愛情を持って育てている微笑ましい光景は沢山見られました。

でも、上の前提があるので、どちらかしか学校に行かせられないとなれば、男の子を学校に行かせるでしょう。

さらに考えてみると

男性は、子どもの頃からその土地に住んでいる人
女性は、他の土地から移り住んできた人

となるわけです。ご近所での立場を考えると、女性は外から来た人なので、子どもの頃からそこに住んでいる男性に比べると味方も少なく、ちょっと不利になります。

特に村に来てまだ日の浅いお嫁さん達は、とても立場が弱そうに感じました。新しい家族と良い関係を築き、ご近所にお友達ができれば味方もできますが、まずそうしなければいけない時点で立場が弱く、家庭内の役割分担などでも不利になりそうだと感じました。

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↑きれいに作られたかまどの前で、ご飯を作る女性


女性達の生の声

村の色々な女性達の話を聞きました。

女性達から一番多く聞かれたのは「働きたい」でした。

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↑女性を集めたインタビューの写真。最初は不満を訴える声が多かったけれど、段々と「自分はこうありたい!」という希望を語り出しました。


「私だって仕事をして家族の為にお金を稼ぎたい」

「結婚のため学校を途中をやめさせられたけれど、もっと勉強したかった」

「私たちにだってできる!」


女性達自身も、「女性はお金を稼がない」ことが自分たちの立場を弱くしていることに気が付いていました。(家事をする人は、家族に健康と快適な生活という大きな富をもたらしているのに。目に見えない価値を人に認めてもらう、自分で認識するのは難しいものですね)

そして、女性達も不満を並べているだけではありません。

「仕事をしたくて、裁縫技術を身につけたのに、仕事がない」

「マドゥバニペインティング(※)の資格を取ったけど仕事に結びつかない」

マドゥバニペインティングとは、この地域に伝わる独特の手法で描かれる絵画のことです。マドゥバニペインティングの認定訓練校を卒業すると、インドの伝統美術師の国家資格が授けられます。

女性達にインタビューすると、この状況を変えたい!と、結婚後に仕事を求めて訓練校に通う人がとても多いことがわかりました。

実は「家計を支えてくれるのは嬉しい」「家事や子育ては私たち(義両親)が手伝えるから」と、家族も女性が働く事に賛成であることが多いのです。

でも、女性の多くの人が働いた経験もなく、言うなれば世間知らず。皆で少ない仕事を取り合っていて、この土地にこの沢山の女性達のやる気と能力を活かせる仕事が用意されていなかったのです。

ここに意欲溢れる働き盛りの人間が沢山いるのに、このパワーが活かされていないのは、

もったいない!!


私には、村の女性達と比べて

外の世界との繋がりを持っている

働いた経験がある

という特点がありました。この私の特点を活かして、この人たちのパワーを活かすことができないだろうか。そう考えるようになりました。

次回につづく

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↑上のインタビュー終了後に撮った写真。まっすぐ前を見つめる目が綺麗!



ダウリーについて補足

法律上では1961年に禁止されている制度ですが、地域により慣習として残っています。但しSaurath村では、2010年訪問時は皆がダウリーの悩みを口にしていましたが、2019年訪問時は「ダウリーは昔のもの。今は要求する方もあげた方も捕まるよ」と答える人が多く、「ダウリーは犯罪」という意識がやっと浸透してきたようです。