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塾のにおい

帰り道に学習塾を通る。
においが風に誘われてやってくる。
この塾には通ってない。行ったこともないのに、どこか懐かしく、ココロ踊る、ではなく、胸が痛いような…いやでもそれはザワザワではなくコソコソした気持ちになる。

塾はわたしにとって、図らずも思い出深い場所だ。ただのバイト先だが、何も知らない学生が、社会を知ったはじめての組織だったからだ。

自分が生徒だった時、大人気だった塾にしようと思っていたが、こじんまりとした塾を選んだ。遊びじゃないからと決めた塾は誰も知り合いがいなくてはじめは胸がキューキューした。
先生のタバコのにおい、室外機のにおい、プリントの印刷のにおい、年季の入った教室のにおい。ジャージのにおい。なんだか細かく覚えている。前期試験に落ちた時も、後期試験で受かった時も、おんなじタバコのにおいと、マックスコーヒーのにおいがした。

高校に進学して、大学受験を控えた時には、また割とマイナーな塾に入った。買い食いする自習スペースのにおい。

そしてスタッフになった時。場所は全然違うけど、そしてタバコを吸うスタッフも少なかったけど、子供たちのにおいはかわらない。柔軟剤、洗剤。お日様のにおい、土のにおい。ちょっとカビ臭い教室のにおいもそのままに。

ふと通りがかる塾に、思い出などないはずなのに、ドアが開いているとなんとなくにおいが似ている。預かる生徒も、自分は何も関わりもないのに。

自分が葛藤の渦にいた時を思い出したり、のびのびとアルバイトしていた時を思い出したり。本当に一言では表せない複雑なにおい。わたしはこのにおいで育ってきた。
前世は多分動物だなあと思う。ふと思うことがあまりにもにおいにリンクしてることが多いから。そんなどうでもいいことを、書いてみることがすきだったりする。


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