10年と、8年と、3年と。珈琲と指輪。
あれから10年が経った。
あの日、僕は大学2年生が終わった春休みで、
広島から車で鳥取に戻っていた。
鳥取に戻る途中、弟の受験した高校に立ち寄り、
正午に貼り出される合格発表を見てから実家に帰った。
衝撃の合否結果にバタバタと対応している実家で、
僕は人生観を変えることになるニュースを知った。
テレビからはもっと衝撃的な映像が流れてきた。
当時の僕は「無力感」に包まれていた。
お金のなく800km離れた場所にいる無力な大学生。
ボランティアに行く勇気や覚悟もなく、ただ無力感に悶えてた。
「有事のときに人を助けられる大人になりたい」
その気持ちが、時間を経て「自分で稼げる人間になろう=起業/フリーランス」という発想に繋がっていった。
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今日から新しい人生が始まる。
そんな気持ちに包まれていた。
閑古鳥の鳴いている観光温泉地に
自分の意思で移り住んだのはちょうど8年前のこと。
当時の熱海は観光客数が底を打った頃で、
今のような活気はなく、若い人と出会うこともなかった。
でも、間違いなく「何かがここから始まる」という
根拠のない予感だけはプンプンと漂っていたと思う。
振り返れば、
自分の人生を自分の意思で歩き始めた最初の瞬間だった。
僕の人生は8年前のあの日から始まった。そう言っても過言ではない。
最初の仕事は「カフェで橙シロップを仕込むこと」だったはずだ。
正直、定かな記憶ではない。フワフワしていたことだけ覚えている。
それから1年後にはヒッチハイクで旅をし始めた。
そして、その2年後には自分でカフェを始めてた。
あの日の始まりがなければ、
きっと今みたいな充実した人生は送れてない。
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悔しさがなかったわけじゃない。
けど、できる限り前向きに終わりを迎えたくて踏ん張った。
飲食業の経験も社会人としての経験もゼロ。
24歳若造が勢いで始めたカフェは、
3周年を迎える前に閉店する決断をした。
そのクロージングパーティは、
なんの因果か3月11日に行うことになった。
たった3年前のことだけど、
当日の記憶はほとんどない。
「ありがとうございました」
「(期待に添えず)ごめんない」
その言葉をずっと発していた気がする。
来てくれた人ひとりひとりと話をした記憶だけ残ってる。
正直に言って、その記憶も曖昧だったりする。
だけど、その日を境に僕の人生はまた新しいフェードに突入した。
この日の挫折感は、20代の最大の学びをもたらしてくれた。(と思う)
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3.11
きっと多くの人にとって色んな意味のある数字だと思う。
僕も例外ではない。10年前と8年前と3年前の転機となった日だ。
もちろん震災を連想させる日でもあるけれど、
僕にとっては、忘れそうな初心を思い出させてくれて、
「まだやれることはある」と思わせてくれる日。
そしてそれはこれからも、変わらない。
当時は一切飲めなかった珈琲も、
今ではドリップで淹れる楽しさを知った。
気づけば左手の薬指には指輪を着けている。
3年後の僕も、
8年後の僕も、
10年後の僕も、
きっと今からは想像もできない自分になっているんだろう。
初心を忘れず、やれることを実直にやり続けよう。
いつだって、今日が人生で一番若いのだから。
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