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地声の大きさで権力を誇示していたころ

「どうして髙橋さんは声が大きいんですか、ボクは小さい方がいいです」
以前、一人の利用者に言われ続けていました。その利用者は、一つのことが気になるとそれを言い続ける傾向があります。しかし、それだけではなく、当時の私は、声が大きいということをいいことに支配的な地位につき、声のトーンを落とすことなくしゃべり続けていました。

私は地声が大きい

私は、地声が大きいです。家族からも注意されます。夕飯を食べているときに「お父さんもう少し小さい声でしゃべって、隣に聞こえるでしょう」と言われます。また「そんな大きな声で呼ばなくても聞こえるから」とも言われます。

しかし、この大きな地声が役に立ったこともあります。高校生のときに大手スーパーでアルバイトをしました。配属先は鮮魚売場で、さらに土日は、店頭販売専門でした。お店の外に張られたテントで、夏は鰻、冬は新巻鮭を売っていました。

また、専門学校を卒業して就職したのは、障がいのある人が活動する事業所の支援員(当時は指導員)でした。そこは無農薬の野菜を作っているところで、毎日、広い畑で大きな声を張り上げていました。

そのころから大きな地声が武器になってきました。

地声が武器になってしまった

その後、今の社会福祉法人の前身となる事業所に就職をしました。そこは小さな小さな事業所で、普通の民家の一室でした。そのため、そこでは私の声は、ただうるさいだけでした。それでも私はおかまいなしに、大きな地声で話をしていました。その方が利用者が言うことを聞くと思っていました。しかしそれは、信頼関係による結びつきではなく、大声による支配でした。

利用者によっては、大きな声や音が苦手な人がいます。当時は、そんなことを考えることなく「仕方ないじゃん、地声なんだから」と開き直っていました。きっとそばで辛い思いをしていた利用者がいたと思います。

また、利用者の中にも大きな声を出す人がいます。私は、その利用者に対して「うるさい、静かにしてください」と言っていました。しかし、本当はその利用者は、うるさい声や音が苦手で、それを消すために自分で大きな声を出して応戦していました。最初に攻撃したのは私でした。

やっと気がついた今日この頃

最近は、現場から離れたこと、また利用者とのかかわりが相談業務ぐらいのため、利用者に対して大きな声で話しかけることがなくなりました。大きな声で権力を誇示することもありません。

先日、一人の利用者が私のいる部屋に来ました。「髙橋さん、いい?」と言うので「いいよ」と言いながら理由を聞いてみました。すると作業室がうるさいと言い、両耳をおさえて首をふっていました。私のところに静けさを求めてやって来るなんて、私への認識が変わったのかと思いおかしくなりました。

連続投稿1000日まで、あと78日。

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