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背中を見せないための小技

昨日のnoteに私が対人援助職に就くうえでの鉄則は、「相手に背中を見せない」、ということを書きました。

私は、障がいのある方が利用する事業所を経営しています。また、35年間、対人援助という仕事をしてきました。その中で、ある事件をきっかけにして、「相手に背中を見せない」ということを自分の鉄則にしました。事件については昨日のnoteに書きました。

相手に背中を見せないのは難しい

今は、理事長業務が主たる仕事です。その中で、支援者の育成をします。支援者には、繰り返し繰り返し、この鉄則を伝えます。しかし、実際の支援場面で、相手に背中を見せないというのは、難しいことのようです

支援者からは、「そんなこと言ったって無理ですよ。一人しかいないんだから。」と言われます。福祉職は人手不足です。それは、求人をかけても人が来ないということだけでなく、今の報酬単価では、十分な人数の支援者を雇用できません。

しかし、利用者がいる以上、私たちは背中を見せない工夫をしなければいけません。そこで、背中を見せないために、五感を働かせて小技を使い常に意識を四方に張り巡らせます。私が、こんなことを言うと「それはしんどいですね。」と言われます。しんどくても、私たちはやらなければいけないし、仕事なので疲れてあたりまえです

具体的な小技をいくつか紹介します。

背中を見せないための小技

① 基本はセンターをはずす

歩くときははじ、座る場所もはじ、常に全体が見渡せる位置をキープします。作業室の中に入るときは、できるだけ壁づたいに歩きます。座るときは、一番はじのテーブルに座ります。そうすることで作業室全体を見渡せます。また、自分の後ろに利用者がいないようにもします。これが基本です。

全体が見渡せる位置にいることで、事故回避だけでなく、瞬時に利用者の視線に気づくことができます。言葉ではなく、視線で欲求を伝える人がいます。それを見逃さずにすみます。そのかわり、プライベートでもこの癖はぬけません。ご飯を食べに行っても、研修に行っても、後ろに人が座っていると落ち着きません。

② 声をかけ続ける、実況中継をする

事業所によっては、支援者が一人しかいないときに、持ち場を離れなければいけないことがあります。そのときは、そこにいる利用者にとにかく話かけて、自分のことを意識づけます。そうすることで、自分の頭の中にも状況が意識づけられます。

「〇〇さんちょっと2階に行ってきます」、「△△さんすぐに戻りますね」「◇◇さん、聞こえるからいつでも呼んでね」、まずは一人ひとり名前を呼んで声をかけます。さらには、状況を声に出して実況中継をします。「下にいるのは、〇〇さんと△△さんと◇◇さんだから…」名前を呼びながら実況中継をすることで、その場に残る利用者同士の人間関係を意識することができます。

③ 他にも…

他にも、利用者が死角に入ってしまったら、姿が見えなくても声をかけます。とにかく声を出すことが大事です。そうすることで、利用者を意識するだけでなく、その状況は、特別な事態であり注意が必要であるということを意識します。ただし、トイレに入るときだけは、ためらうこともあります。

また、体制は常にななめにかまえる、鏡で後ろ確認する、耳をすまして足音を聞くなどがあります。慣れてくると、意識を集中することで人の動きが読めるようになります。

五感を使う

背中を見せないというのは、五感で見る、意識をとぎすますということです。五感とは、視・聴・嗅・味・触の感覚です。五感を使い意識して見ることで、たくさんのことに気づきます。そうすると、利用者の皆さんの楽しい場面を目にする機会も増えます。いいことばかりです。

私の鉄則は、「背中を見せない」です。

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