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何気ない日常の仕草を作業に結びつける(缶つぶし作業のきっかけ)

私は障がいのある人が利用する事業所を経営しています。その事業所の支援姿勢の一つが「注意しない工夫をしよう」です。昨日は、その支援姿勢を作るきっかけとなった、缶つぶし作業について書きました。今日は、その続きで、缶つぶし作業を始めたきっかけを書きます。それは、ささいな日常のできごとでした。

まず、ある年の春、養護学校の高等部を卒業して利用を始めた人のことを書きます。その人はいろいろな場面で支援が必要な人でした。たとえば、かろうじて立位歩行はできました。しかし、日常生活動作はすべて支援が必要でした。さらに言葉による意思の疎通ができませんでした。また、手の力加減を調整することができず、握った物を握りつぶすことから作業プログラムも見つかりませんでした。そのため大半が買物や散歩といった外出になっていました。

缶つぶし作業を始めたきっかけは、その人との散歩の最中にありました。その人は、アルミ缶に興味がありました。買物の最中にジュースの缶を見ると手を伸ばして缶を取ります。また道に缶が転がっているとしゃがみこんでその缶を拾います。ただし、そのままにしているとすぐに口に持って行ってしまうのでそこは支援が必要です。これが缶つぶし作業の始まりでした。

缶つぶし作業は、事業所の近所の公営グラウンドで行いました。
流れは、
1.グラウンドに缶を広げる
2.利用者が缶を拾う
3.支援者がタイミング良く「ありがとう」と言って缶を受け取る
4.その缶を他の利用者が足でつぶす。

その人は、最初は缶を拾うことしかできませんでした。しかし、これを繰り返している内に支援者と一緒に缶をつぶすようになりました。また、さらにこの缶つぶし作業を外で行うことから、他の利用者も喜んで参加するようになりました。それが地域を巻き込み、小学校で子どもたちと一緒に缶つぶし大会というイベントに発展していきました。

私たちの作業活動のヒントは、利用者の何気ない仕草にあります。まず、利用者のことをよく見て、何が好きか何に興味を持つか、そこに注目をします。利用者が負担なく、取り組めることから始めます。先日受講した「教える技術」では、学び手をよく見て、学び手ができることのちょっと上の領域を教えることが大事であると学びました。共通する部分があります。

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