誓いのフィナーレ

観てきた。

映画、久しぶり。

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恋したりライバル心むき出しにして張り合ったりしながら高校生女子たちが吹奏楽に打ち込む姿を描いた──アニメを見て、心を持っていかれて今に至る。絵がきれいというのもあるし、悩みながらひたむきに演奏に打ち込む姿がどうにも心に刺さるから、というのもあるし、おどけているようでどうにも読めないあすか先輩がかっこいいというのもあるし。

生活がそれを中心にまわりはじめるくらいに打ち込む団体戦。そういうのの経験がないので(そういうのの経験がないからこそ、面倒なんかを知らないので)、とてもキラキラまぶしくてうらやましくて引き込まれる。

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アニメでは主人公の久美子が一年生を終えて三年生のあすか先輩を見送るまでの2期をやっていて、今回の映画は二年生になった久美子が後輩たちを迎えて全国大会金賞を目指す、というお話。

手痛く傷ついた経験から2度と傷つくまいと(見え見えだけれど)計算高く立ち回っていた後輩が「死ぬほど悔しいです!」と涙を流すシーン。いやね、そりゃあ作り話なんだけれどね。
練習しても無駄になるかもしれない、怖いと久美子に言わしめた後輩が、がんばって積み上げて、そしてそう言ったとことで、ぐっときた。
ひるがえって今の僕は、死ぬほど悔しいと言えるなにかがあるだろうか? って。失敗しないよう、傷つかないよう予防線を張って、後ろに下がってこぢんまり暮らしている。

青春モノを見るときって、そこだよ。
青春モノを見たくなるのは、ここだよ。

恥ずかしいこともあるだろうけれど、兎にも角にも全力で振り抜く。振り抜いて、結果、勝ち取ったり負け越したりする。
全力でやりきった! という清々しさ。
当事者としては底抜けに嬉しかったり、あるいは死ぬほど悔しかったり、するだろう。で、外野で見ているそれは、まぶしくてうらやましくて。(アニメだけどね。作り話だけれどね)

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そうか──。

僕は、全力で打ち込めるなにかを、欲しいんだ。
脇目も振らず、歯を食いしばって、振り絞って打ち込めるなにかを。

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劇中歌──というか劇中演奏が「リズと青い鳥」だったのが印象的。映画『リズと青い鳥』は去年、だったっけ? 絵柄が違いすぎて最初わかっていなかったんだけれど、同じ時間を別の視点で描いていたんだ。

鎧塚さんとか、そうか、クロスオーバーしていたんだ……。

それぞれもう一度ずつ繰り返して並べて観たいと、そう思った。リズで描かれていたのは「置いていかれること」への怖れだった。今回の「誓いのフィナーレ」は「傷つくこと」への恐れ、だった。

そうか。僕は人との距離の取りかたに悩み苦しむ姿(そしてそれが解消されること)も、物語に求めているんだな。

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