Will/Can/Mustではなく"ikigai"を考えよう
スタンフォード大学に通うアメリカ人の友人と、将来について話してた時のことである。
「『人の役に立つ』仕事がしたいんだけど、英語でそのニュアンスを表す単語って中々ないんだよね。『ikigai』とかもそうだけど、日本語にしか表せない良い単語って幾つもあると思う。」
驚いた。「karate」「manga」「senpai」「karoushi」… 日本の伝統芸能やしきたりから日本特有の(切ない)文化を表す言葉まで、割と多種多様なジャンルの日本語が海外でもそのまま使われていることは知っていたが、まさか「ikigai」まで世界に広まっているとは。
「ikigai=生き甲斐」
日本固有の素敵な言葉である。
実は、就活生時代に「ikigaiの図」のフレームワークに出会い、自身のコンパスとしていた過去がある。
「先が見通せない」
「何をしたいのかよく分からない」
そんな時には、いつもこのフレームワークに立ち戻って、自分の原点を再確認していた。
今日紹介する「ikigaiの図」が、就活生、新社会人、体育会生…悩める全ての方々の一助になれば幸いである。
ikigai
そもそも、なぜ世界の人々が「生き甲斐」を知っているのか。
きっかけは、2004年より日本に在住されているスペイン人のエクトル・ガルシア(Héctor Garcia)氏とフランセスク・ミラージェス(Francesc Miralles)氏の共著『Ikigai: The Japanese Secret to a Long and Happy Life』(2016年4月出版)という本である。
スペイン語で出版された原著であったが、瞬く間にヨーロッパ中で現地語に翻訳されベストセラーに。2017年9月、英語版の出版にあたって、BBCや世界経済フォーラムのブログ、インデペンデント紙などで「ikigai」が取り上げられたことが契機となり、世界規模で知られるようになった。ちなみに日本語版では、『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』というタイトルで出版されている。
本書において、ガルシア氏は生き甲斐を持って生きる人々の象徴として、沖縄県大宜見村のご老人たちを例に挙げる。長寿日本一宣言に相応しく、のびのびと暮らす村の住人たちの様子を「ikigaiを持って生きる姿」の理想としている。
「生き甲斐」を見つけ出すことは、長寿や健康の秘訣にとどまらず、自分の将来を考える上で重要なファクターになる。自分自身と向き合い、没頭できるもの、本当に好きなものを探っていく。そんな「生き甲斐」の見つけ方を次項で見ていく。
生き甲斐の図
よく就職・転職活動で使われる自己分析のフレームワークが、「Will/Can/Must」である。Will・・・やりたいこと/Can・・・できること/Must・・・やらなければならないこととそれぞれ訳されるが、正直これでは解像度が低い。
何より、自分にあった仕事を見つけるための分析ツールなのに、「するべきこと」という問いの定義が曖昧すぎる。その「するべきこと」が分からないから困ってるのに…
そこで、生きる目的、即ち「生き甲斐」が鍵になってくる。
やりたいこと(Will)ではなく、自分の好きなこと(What you LOVE)
できること(Can)ではなく、自分の得意なこと(What you GOOD AT)
自分軸を、より明確でより内発的動機に基づく2つの要素に昇華させる。
するべきこと(Must)ではなく、世間が必要とすること(what the world NEEDS)と稼げること(What you can be PAID FOR)
客観軸を、よりMECEに2つの要素に分解する。
あとは、まっさらな紙に大きな円を4つ描き、あとは自分のうちなる声に耳を傾けて本音を書き出していけば良い。
好きなことは友人に語りながら書き出していけば良い。
得意なことはもしかしたら一番近くで自分を見てくれている家族が知っているかもしれない。
世間が必要とすることが分からなければ、新聞を読めば良い。
この3つを網羅するけど稼げないなら、意地でも稼げる方法を死に物狂いで探せばいい。
簡単ではない。でも、とてもシンプルだ。
この図を基に自分と向き合うことで、おのずと自分なりの「ikigai」がおぼろげながら見えてくるはずである。
What is your ikigai?
最後に、お気に入りの映画のひとつである「Me Before You(2016)(邦題:世界一キライなあなたに)」の名場面から引用をして終わりたい。
不慮の事故で全身麻痺となり、車椅子生活を余儀なくされた気難し屋のウィル・トレイナー(サム・クラフリン)が、明るくおてんばな介護者のルイーザ・クラーク(エミリア・クラーク)に、車椅子でダンスをしながら伝えたセリフである。
"You are pretty much the only thing that makes me wanna get up in the morning." - 君こそが毎日朝が待ち遠しい理由なんだ。
あなたの場合、"You"に当てはまるのは何だろうか。
仕事、部活、恋人、家族、趣味、スポーツ…きっと何でも良い。
それこそが、あなたの"ikigai"である。
<参考文献>
・https://tabizine.jp/2018/10/16/209787/
・https://theviewinside.me/what-is-your-ikigai/
・ https://newsphere.jp/national/20171017-3/
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