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【偉人伝】マルコムX -前編-

皆さんはこの男性をご存知ですか? 

彼の名は Malcolm Little。

またの名を Malcolm X(1925年〜1965年)

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1950~60年代半ばにかけて活躍した、アメリカの急進的な黒人解放運動活動家です。
立場は違えど、キング牧師と並んで、黒人の地位向上に生涯従事した人物。 

黒人らしさという精神面において、彼が今日のアフリカ系アメリカ人に与えた影響は計り知れません。

そして今日、我々は彼らが編み上げてきた歴史や文化の上に生きています。(ファッション・音楽・アート)

今日はそんな偉人・マルコムXの生涯について一緒に学んでいきましょう。

幼き日のマルコム

マルコムは、1925年ネブラスカ州オハマで、(父)アールと(母)ルイズの元に生まれます。

ルイズは牧場主の白人男性と奴隷の黒人女性の間に生まれた混血なので、一見白人のように肌が白かったそうです。(強姦によって身籠った)

その血を受け継ぎ、マルコムも兄弟の中では1番肌が白かったと自伝で語っています。

ネブラスカ州

父アールはUNIA(世界黒人向上委員会)の熱心な組織員で、バプティスト派キリスト教の牧師でした。アメリカに黒人の自由は存在しないので、故郷のアフリカに帰るべきだという反体制的な思想を持っていました。

その為、周囲に住む黒人のように白人に媚びへつらい仕事をもらうのを良しとせず、自宅の敷地内に家庭菜園をつくり、時給自足の生活を行っていたそうです。

1931年のある日、アールは路面電車の轢死体として発見されます。警察の見解では自殺とされましたが、かねてより彼の宗教活動をよく思っていなかったKKK(クー・クラックス・クラン)"や"黒色軍団"という白人至上主義者の団体から頻繁に脅迫を受けていました。なので、母ルイズは彼らによる仕業だと信じていましたし、白人の間でもそう噂されていました。

KKK / 出典元

アールの死後、ルイズは1人で9人の子供を育てあげることに耐えきれず、発狂、精神病院に送られてしまいます。それに伴って、マルコム含む子供達はそれぞれ里子に出され、一家離散してしまいます。

マルコムはその貧しさゆえに盗みを働く問題児でしたが、中学生の頃は3本の指に入るほどの秀才でした。また、周りの白人にも好かれていて、学級委員にも当選したりもしました。

比較的親切な白人が彼の周りにはいましたが、彼らは自分を同等の人間ではなく、出来の良いマスコットやペットのように可愛がられていただけと後に自伝で振り返っています。

医者か弁護士を夢見ていたマルコムは、ある日の面談で、親切にしてくれていた白人の先生から「黒人はどんなに頑張っても偉くはなれないから、黒人らしい仕事に就いた方が良い」と宣告されます。

父を白人に殺されたこと。
そのせいで母の気が狂ってしまい、一家離散してしまったこと。
白人社会での黒人の立場を知らしめられたこと。

様々な体験が引き金となり、彼は徐々に白人と距離を置くようになってしまいます。

それからマルコムは、故郷を離れ異母姉の元へ行くことを決意します。
行き先はボストンです。

Downtown Boston 1930’s / 出典元

マルコム青年、"レッド"となる

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以前ボストンへは異母姉をたずねて訪れていて、マルコムはかねてより都会の街に憧れを持っていました。この転居が彼にとって1つ目の大きな分岐点となります。

今まで暮らしていた故郷とは比べ物にならないほど都会のボストン。

若かりしマルコムは様々なカルチャーショックを受け、次第に俗にまみれていきます。

コンク(黒人特有の縮毛を白人のサラッとしたストレートへ縮毛したもの)と呼ばれる流行の髪型に、ド派手なズートスーツに袖を通し、ダンスホールへ入り浸る毎日。マリファナの味もこの時期に覚えました。

コンク 出典元
ズートスーツ / 出典元

こうした刺激的な体験が彼の第二の自我を形成していきます。

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しばらくすると、ダンスの腕前や美人の白人彼女を連れていたことから、仲間達から、彼の赤毛にちなんで”レッド”の愛称で一目置かれるようになります。

靴磨きやドラッグストアの店員などで仕事しますが、ダンスが最優先で続かず職を転々とします。

そんなある時、異母姉に紹介を受けた鉄道のウェイターの仕事をやり始めます。かねてより仲間内で話題になっていたニューヨーク・ハーレムへ運賃無料で行くことが彼の狙いでした。その狙いは的中し、彼はニューヨークを仕事で訪れることになります。

初めて訪れたニューヨークに彼はさらなる衝撃を受けます。
あれほどまでに充実していたボストンでの日々が一瞬で褪せさせてしまうほど、さらに華やかで粋な街ハーレムに心を奪われてしまいます。(この時はハーレムの良い面しか見えていませんでした。)

Harlem 1956 / 出典元
Times square 1940s / 出典元

乗客と問題を起こしたことで鉄道ウェイターをクビになったマルコムは、待ってました!と言わんばかりに一文無しでハーレムへ乗り込んでいきます。

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ハスラーとしてのマルコム

The Small's Paradise / 出典元

ハーレムへきて日の浅いうちに、"The Small's Paradise"という名の知れたバーのウェイターとして働き始めます。

スモールズは夜遊び人にとって最高の溜まり場でした。
白人から黒人ありとあらゆる人種が集まりました。
そう、街のハスラー(賭博、ポン引き、麻薬密売、強盗で大金を稼ぐ人たち)も例外なく。

マルコムは持ち前のコミュニケーション能力と要領の良さで、店に馴染むのにそう時間は必要とはしませんでした。ボストン同様、すぐに"レッド"の名がハーレムでも通っていきます。

ハーレムのハスラー達から好かれていたマルコムは、稼業の裏話やノウハウなどをバーでみっちり教え込まれました。

日本との太平洋戦争真っ只中の40年代初頭、現役米兵に娼婦などを斡旋することは禁止されていました。

ある日マルコムは客を装った兵士に仲の良かった娼婦を紹介してしまいます。

それがきっかけに店は摘発され、大好きだったスモールズをクビになったうえさらに出禁を食らってしまいます。彼にとって世界の中心とも思われたスモールズを離れることはかなりこたえたと自伝でのちに振り返っています。

それから刺激のない定職に就く気のさらさらないマルコムは、ハスラー街道へと突き進んでいくのでした。

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マリファナの密売に始まり、ナンバー賭博の手伝い、窃盗、売春婦の斡旋...
スモールズ時代に見聞きしていたノウハウが大いに役立ちました。

様々な稼業で生計を立て、荒稼ぎするマルコム。それと同時に、心も荒んでいきます。緊張の絶えないハスラー稼業では、精神を保つにはドラッグは必需品でした。マリファナにとどまることなく、アヘンやコカインなどの麻薬にも溺れるようになっていきます。

"麻薬が飯がわり、銃がネクタイがわりだった"
という言葉に当時のマルコムの生活ぶりが窺えます。


そんなマルコムの成功は長く続きませんでした。

ある時、ハーレム界隈で悪名高いナンバー賭博の集金人とトラブルを起こし、複数の人物から命を狙われるようになってしまいます。

過去にも警察の追跡を振り切るためにニューヨークを離れたことはありましたが、今回にかぎっては詰みの状態でした。

マルコムは正常な判断ができないほど頭がおかしくなってしまっていました。

そんな状況を見かねたハーレム、ボストンの2人の親友が彼をニューヨークから引き離し、ボストンへ連れ出します。

マルコム、ついに捕まる

ボストンへ逃げ帰ってきたマルコムの衰弱ぶりは酷い有り様でした…

泥のように眠り、ボストンについて2週間後、やっと外に出られるまでに回復します。

生ける屍状態からある程度回復したところで、マルコムはまたもやボストンで懲りずにハスラー稼業を再開します。まともな仕事をしたことのないマルコムはその選択肢しかなかったのかもしれません。

次の稼業は空き巣です。
マルコムの他、ボストン時代の白人彼女とその妹の女性2名、親友含めた黒人男性2人の信頼できる5人のチームです。
もちろんボスはマルコムでした。

手口はこうです。

女性2人がセールスウーマンだとか、建物調査の女学生などと称して住居に押し入ります。その後、金目の品と間取りをマルコムを含めた二人に伝え、夜忍び込むというものでした。リスキーな仕事のように聞こえますが、マルコムからすると楽な仕事だったそうです。

瞬く間に彼らは熟達し、次から次に空き巣を成功させまた大金を稼ぎます。またもや、ハスラー稼業の新たな門出は順風満帆かのように思われました。

しかし、今回ばかりはそうはいきませんでした…

ある時盗んだ高価な時計を自分用にと取っておいたマルコムは、その時計が壊れていることに気が付きます。そしてその時計を修理に出すことにしました。

しかし、これが運命の分かれ道でした。


実は、この時計はその希少性から盗難後にボストン中の宝石店に手配が回っていたのです。修理が終わったという連絡を受けたマルコムは警察の待つ、宝石店にまんまと向かってしまいます。

ついにマルコムは窃盗と銃刀法違反の罪で逮捕されてしまうのでした...

ここまで聞くとただの黒人のゴロツキだったマルコム。

彼はこの後どのようにして、アメリカ、そして世界中に名を轟かす黒人開放家となっていくのでしょうか?

ここまでの話からはあの知的なマルコムの姿は想像ができません。

続きが楽しみですね。
前編はここまで。
後編をお楽しみに...

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