「ありがとう貯金」
子供の頃、母が作ったおぐち家財団だ。
「ありがとうの数だけ、良いことあるからね」
それが今すぐなのか、死んでからなのか、よくわからなかったけど貯金をした。
その当時はスレ違うたびに「こんにちは」ではなく「ありがとうございます!」と、子供ながらに無邪気に発していた。
無邪気さの裏には子供ならではの下心はあったものの、繰り返し、日々が過ぎていくたびに、それは本来の下心とは違う方に進んでいった。
「なんか楽しい」
そう、きっとそれは、「ありがとうございます」と声をかけた相手が、「変な子ね〜、挨拶間違えてるのにね。」と言いながらも「こんにちは」と声をかけたときよりも大きく目尻を垂れ下げ、広角を釣り上げ、そして血色染め開き、スマイルマークかと思うが如く同じ顔になっていたからだ。
「みんなスマイルくんみたい♫」
でも、どこからなのだろうか、その行為が形骸化した瞬間に続けられなくなった・・・。
それを大人になるというのならば、今の僕は大人にならなくてピーターパンのままで良かったんだよって、子供の僕に言ってあげたい。
昔はできていたのに、大人になったときの方ができないことが増えるような大人にはなりたくないな。
今日は両親の44回目の結婚記念日。
去年よりひとり多い加勢で祝えたことに、夫としてよりも息子として密かな幸せを感じる。
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