「和賀英良」獄中からの手紙(12) 父と子の決意
―旅立ちの朝の詩―【田島藍子】
本浦千代吉は重い病に侵された―
村人たちは彼とその病を恐れ、村から追放することを決めたのだった。
そして、たった一人の息子も一緒に連れて行かれることとなった。
秀夫は幼いながらも、村を後にする決意を固めていた。
旅立ちの日。朝霧が立ち込める山道に親子は立っていた。
母は遠くから二人を見送ることしかできなかった。
草原の風が彼らの髪をなびかせ、足元には薄暗い道が広がっていた。
彼は父の手を握りしめ、強くしがみついた。村を離れることになったことで、彼の心は悲しみと不安でいっぱいだった。なぜ父が病気になったのか、なぜ村人たちは彼を拒絶したのか。そして彼らはどこに向かっているのか。あらゆる疑問が頭の中で渦巻き、彼の胸を締めつけた。道端には人々がいるが、二人を見ると遠巻きにして通り過ぎるばかりだ。子供の目には、彼らが警戒の目を向けていることが見えた。彼は自分が何か悪い存在だと感じ、人々の視線を避けるために、父にしがみつく手をさらに強く握った。
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放浪の旅の途中で彼はさまざまな困難に直面した。
食べ物もままならず、寒さや疲労に耐えながら歩き続ける日々。
しかし、秀夫は父のそばにいることで、力を得ていた。
父は彼に微笑みかけ、力強く彼を励ましてくれた。
彼は父の存在が心の支えだと感じながら、身体的な苦しみを乗り越えていった。そして時が経つにつれ、秀夫の心には変化が訪れた。
秀夫は新たな景色と出会い、知らなかった世界を見つけていった。
遠くの山々や川のせせらぎ、星空の美しさに触れるたびに、彼の心は少しずつ軽くなっていった。
放浪の旅は彼に自由と冒険をもたらし、彼の内なる力を目覚めさせた。
そして秀夫は自分の存在価値を見出していった。
彼は病に冒された父の看病やそれを支えたことで、自分にできることを模索し続けた。父の苦しみを和らげるために、草の根や薬草を集め、食べ物を手に入れるために狩りをも試みた。小さな手が困難に立ち向かい、成長していく様子に彼の内なる強さが芽生えていった。
秀夫は放浪の旅で多くの人々とも出会った。時には優しい人々に出会い、彼らの優しさと思いやりに触れた。しかし、時には冷たい目を向けられることもあった。それでも、彼は諦めずに自分の存在を示し続けた。
彼は傷つきながらも、他の人々の心を温めることを知り、共感と理解を持つことの大切さを学んでいった。
放浪の旅は長かった。秀夫は成長し、強くなり、人々とのつながりを深めていった。そして、彼と父は全国を巡りながら、お互いに新たな場所で生きることを選んだ。
村から追放された過去は彼らの内なる傷跡となったが、同時に彼らの生きる力となった。秀夫は父の手を握りしめ、自信と希望に満ちた未来を見つめた。彼は過去の辛い経験を乗り越え、自分自身を信じることを学んだのだ。
放浪の旅は彼に多くの試練をもたらしたが、それは彼の人生を豊かにし、内なる強さと勇気を引き出すきっかけとなったのだった。
※田島藍子記
第13話:https://note.com/ryohei_imanishi/n/neede474b7377
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