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字数制限内で端的に言いたい葛藤

主にTwitterプロフィール欄の字数制限には悩まされることが多いです。
今回は漫画家としてのTwitterアカウントにおける悩みの話です。

漫画家なので漫画を描いていればOKであり、著者本人のジェンダーとセクシャリティ、特にこのことをプロフィールに書く必要はない気もします。ですがどこかに書いておかないと、例えばWikipediaや、何かの記事で微妙に異なる情報を記載されてしまう恐れがありました。それはあまり、本意ではないことです。

また、海外の読者の方にも正しい情報が伝わってほしいと思っています。そうなると、英語圏でもスッと通じるよい単語はないか、調べる必要がありました。

そこで登場する、この記事の一番の悩み「字数制限」です。
プロフィール欄には字数制限があり、自己紹介を書くには工夫が要ります。
私の場合は、
・漫画家であること
・どのような作品を描いたか
・他にどのような仕事をしたか
がまず日本語で書きたい情報であり、
・性自認と性指向
も(内容の性質上、より正確に)書いておきたい情報であり、更に英語でもこれらのことを書きとめておきたいのです。
字数制限内に収まる気がしません。

とはいえ、頑張ってみることにします。
まず漫画家周りの仕事表記については省略できる部分がありません。

補足情報である性自認・性指向については、できれば手短に済ませたいものです。
まず、Xジェンダーについてです。

Xジェンダーは日本独自の呼び方でもあり、これがどの程度英語圏で理解されやすいのか、私は知りません。普通に通じるのかも。しかし、より分かりやすく言いたいものです。

FtX(=女性として出生したがXジェンダー自認になった)
これは非常に手短でいい表現だと思います。
しかし、ここでも「X」ジェンダーの浸透感が気になる自分です。

幸い自分はXジェンダーの中でも「無性」の自覚があるため、その表記をしてみたいと考えました。

Xジェンダーは、よくある分け方だと
「中性(男性と女性の中間 gender-neutral)」
「両性(男性でもあり女性でもある bi-gender)」
「不定性(性自認が流動的 gender-fluid)」
無性(男性・女性のどちらでもない A-gender)
の4つに分けられます。

長い…長いな…
FtXが3文字で済んでいたことを考えると、A-genderは8文字あります。
間のハイフンを抜いても7文字ありますし、ハイフンを抜くとビジネスで主に使われる用語のアジェンダと混同されないかという小さな不安もあります。

とはいえ、わかりやすくはあります。ただ、世間への浸透具合で言うと、わかりやすさというのはXでもAでも大差ない、むしろXの方が理解されやすいのかもしれません。
ここではAジェンダーは、私にとってより細分化された厳密な分類なのでよかろう、ととらえることにします。

なお、Xジェンダーに近い用語、英語圏発のノンバイナリー(nonbinary)という言葉があります。
性自認においては「無性」に近い印象がありますが、この言葉は性自認と性指向の両方を内包する(ノンバイナリー=性自認が男性にも女性にも当てはまらず、性表現にも男性・女性の枠組みを当てはめない)(JobRainbow編集部, 2021/6/30)ため、性自認と性指向の特性両方が含まれる言葉です。
この二つを分けて説明したい自分にとっては、他者に言う際、解説がややこしくなりそうだったため避けました。

次に性指向です。
自分自身が自覚する「ノンセクシャル」も、日本の言い方です。

英語圏の言い方に当てはめると、ノンセクシャルは「ロマンティック・アセクシャル romantic asexual」となります。
ロマンティックは「恋愛感情を抱く」ことを表し、ノンセクシャル自体はアセクシャルに内包される概念となります。
なお、他者に恋愛感情を抱かず、性的欲求も抱かない場合は「アロマンティック・アセクシャル aromantic asexual」となります。

ここでまた悩むのが、「恋愛感情とはそもそも何か」という点です。
自分にとっての恋愛感情が、世間一般で言われる恋愛感情なのか、いやそもそも世間に合わせる必要はなく、自分が恋愛だと思えば恋愛なのか。難しいところです。
とりあえず今は自分が恋愛だと思っているということでロマンティックでいいか。ということでromantic asexualにしておきます。

…長……
略語でrAとかちょうどいい単語が流行ってくれないでしょうか。
アロマンティックならArAとか。
でもそうなると全ての性自認、性指向に略語を作らないと不公平ですね。それをやっても全然いい気がしますが、そうすると今度は省略によってややこしくなり、更にわかりにくいという迷路に迷い込むのかも。


そんなわけで、今の私のプロフィール欄には、XジェンダーではなくA-gender、ノンセクシャルではなくromantic asexualと表記しています。
また、必要最小限の英語情報、Hanada Ryo(著者名。個人的には英語でも姓→名の順が好きです。ここだけ日本文化を維持するという変なこだわり)、作品名を英語で羅列しました。

日本語の漫画家情報と合わせてギリギリ全部入りました。
本当はもっと短くしたいのですが、一番長いのは漫画家情報なので、仕方なさそうです。


ところで。
性自認・性指向を英語で書きたかった理由は、実は別に一つ、理由がありました。

それは「自身の説明を目立たせたくない」ということです。

英語表記は、日本語と並べれば、一般的感覚では(人によりますが)あまり目立ちません。
私は、例えば「ノンセク」などの略語を書くことが、少し怖いです。これは、その略語を使う人への非難では決して、決してありません。私自身が、セクシャルマイノリティの日本略語に対して、日本の世間の目(多数派が少数派を見るような目)を、勝手に感じて、存在するかしないかわからない勝手な痛みを感じてしまうのです。これは単なる感じ方であり、主観的なものです。

間違った表記はされたくないが、前面に押し出して主張するつもりはない。
そして、とりわけ日本において、目立ちたくない。

そうした複雑な心情が、英語表記を調べ始めたきっかけでした。
日本に対する期待度がなぜこうも低いのか、自分でも不思議ですが、これも主観に過ぎないものです。こういうものは自分を映す鏡でもあります。つまり自分の意識自体が、アップデートされていないのかもしれません。だから日本社会がアップデートされていないように見えるわけです。

ところで実際、私が何者であろうと、漫画作品は関係ありません。誰が描いたかはさておき読んでもらえたら嬉しいというのが本音です。

しかし、私が何者かに興味を持ってくれる読者さんがいるなら、正しい情報を伝えたいのです。そうした人々は、日本人であろうと、どの国の人であろうと、恐らく一瞥した情報だけでなく、真摯に知ろうとしてくれるであろう…と思っています。


最後に自分のアップデートが必要なことが判明してしまいました。
社会と個人の、のっぴきならない絡み合った関係性を感じさせられます。

それでは、また。


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