内田樹著 レヴィナスの時間論『時間と他者』を読む 評その2

レヴィナスが繰り返し、自己同一性を批判していることが強調される。
これは英語でセルフのことで、心理学などでいうアイデンティティとは異なる。

自己に回帰する自己ではなく、どのような自己なのか。
それはローゼンツヴァイクのいうイプサニテ(本著ではフランス語)であることが指摘されている。

イプサニテを評者は全く別の論点から学んでいたので意外。
サスとパルナスという精神病理学者が近年盛んに統合失調症の基本障害として自己が最小自己(イプサニティ)になるという論文を出している。
サスらはイプサニティの出典はラテン語の語義にあるとしてローゼンツヴァイクを経ていない。
同じ言葉を使って異なる論考をしていると考えるのが普通ではあるけれども。

レヴィナスとローゼンツヴァイクが「大勢の中の自己」ではなく、「たった一人のかけがえのない自己」に着目というか論点をおいていることと、サスらの統合失調症論は遠くはないともいえる。

レヴィナスを統合失調症の精神病理に援用した論考はこれまでもみられることから熟考の余地はありそうである。

まだ二読目でラインを引き引き読んでいる。

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