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風の歌を聴け/村上春樹

村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』を約10年ぶりに読んだ。
本作品からの思考をまとめてみる。

死んだ人間について語ることはひどくむずかしいことだが、若くして死んだ女について語ることはもっとむずかしい。死んでしまったことによって、彼女たちは永遠に若いからだ。
それに反して生き残った僕たちは一年ごと、一月ごと、一日ごとに齢を取っていく。時々僕は自分が一時間ごとに齢を取っていくような気さえする。そして恐ろしいことに、それは真実なのだ。

風の歌を聴け/村上春樹

→死ぬことで時は止まる。一方、生きている間は死に向かい続ける。その歩み方を決めるのは自分。恐れずに挑戦していこう。

「でも逃げ出せばいい。本当にそう思うんならね。」

風の歌を聴け/村上春樹

→自分がどうしたいのか次第では逃げることも正解にできる。

「でもね、よく考えてみろよ。条件はみんな同じなんだ。故障した飛行機に乗り合わせたみたいにさ。もちろん運の強いのもいりゃ運の悪いのもいる。タフなのもいりゃ弱いのもいる、金持ちもいりゃ貧乏人もいる。だけどね、人並み外れた強さを持ったやつなんて誰もいないんだ。みんな同じさ。何かを持っているやつはいつか失くすんじゃないかとビクついているし、何も持っていないやつは永遠に何も持てないんじゃないかと心配してる。みんな同じさ。だから早くそれに気づいた人間がほんの少しでも強くなろうって努力するべきなんだ。振りをするだけでもいい。そうだろ?強い人間なんて度にも居やしない。強い振りのできる人間が居るだけさ。」

風の歌を聴け/村上春樹

→深い。物語から抽出したとは思えない深さ。足るを知るということだろうか。そんなに浅くないか。本当に強く前を向くためには自分の弱さを知らないといけないのだろう。

「あと25万年で太陽は爆発するよ。パチン・・・・・・OFFさ。25万年。たいした時間じゃないがね。」風が彼に向ってそう囁いた。

風の歌を聴け/村上春樹

→人間の一生は一瞬。細かいことを気にしている時間はない。

嘘をつくのはひどく嫌なことだ。嘘と沈黙は現代の人間社会にはびこる二つの巨大な罪だと言ってもよい。実際僕たちはよく嘘をつき、しょっちゅう黙りこんでしまう。しかし、もし僕たちが年中しゃべり続け、それも真実しかしゃべらないとしたら、真実の価値など失くなってしまうのかもしれない。

風の歌を聴け/村上春樹

→物事をどう捉えるか。常に問う。

「何故人は死ぬの?」
「進化してるからさ。個体は進化のエネルギーに耐えることができないから世代交代する。もちろん、これはひとつの説にすぎないけどね。」
「今でも進化してるの?」
「少しずつね。」
「何故進化するの?」
「それにもいろんな意見がある。ただ確実なことは宇宙自体が進化してるってことなんだ。そこに何らかの方向性や意志が介在してるかどうかってことは別にしても宇宙は進化してるし、結局のところ僕たちはその一部にすぎないんだ。」

風の歌を聴け/村上春樹

→死は進化の途中経過。僕たちの命も途中経過。この途中経過があることで人類は進化してきた。それはこれからも同じ。

山の方には実にたくさんの灯りが見えた。もちろんどの灯りが君の病室のものかはわからない。あるものは貧しい家の灯りだし、あるものは大きな屋敷の灯りだ。あるものはホテルのだし、学校のもあれば、会社のもある。実にいろんな人がそれぞれに生きてたんだ、と僕は思った。

風の歌を聴け/村上春樹

→それぞれの人生がある。ただ、今、生きている。この瞬間に何を選ぶか。

8月26日、という店のカレンダーの下にはこんな格言が書かれていた。
「惜しまずに与えるものは、常に与えられるものである。」

風の歌を聴け/村上春樹

→自分は人に何をどのくらい与えられるのか問い続けないといけない。

あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉えることはできない。僕たちはそんな風にして生きている。

風の歌を聴け/村上春樹

→諸行無常。

彼の墓碑には遺言に従って、ニーチェの次のような言葉が引用されている。
「昼の光に、夜の闇の深さがわかるのものか。」

風の歌を聴け/村上春樹

→相手の目線に立つ。簡単ではない。とてもむずかしい。だからこそ、簡単ではないが、挑み続けることが大切。家族も友人も。

この小説はそういった場所から始まった。そして何処に辿り着いたのかは僕にもわからない。「宇宙の複雑さに比べれば」とハートフィールドは言っている。「この我々の世界などミミズの脳味噌のようなものだ。」
そうであってほしい、と僕も願っている。

風の歌を聴け/村上春樹

→抽象度を高く保つことで、日常の些細なことのハードルは一気に下がる。できないことなどあるのだろうか。そんな気分になる。

小説は違う角度から学びを与えてくれる。
この記事を書いてそう思う。
村上春樹の心地よい文章にたくさんの学びがある。

引き続き読もう。引き続きまとめよう。

みなさまにもこの学びが届きますように。



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