見出し画像

自転車「ピッカピカァ〜〜〜♪」とアンカリングの話

六太(以下、ムッタ)は、日々人(以下、ヒビト)の自転車をピカピカにした。ムッタは当然、磨き上げられた自転車を見た瞬間にヒビトが気がつくだろうと思っていた。(いや、正確には、気づいて欲しいと思っていた)。

ムッタが想像した通り、ヒビトは自転車がピカピカになっていることに気がついた。「ピッカピカァ〜〜〜♪」と上機嫌なヒビト。でも、ムッタはそれを知らない。これは、宇宙兄弟13巻に出てくるひと場面だ。


画像1
画像2
画像3


ぼくは、この場面がスキだ。

2人の兄弟の絶妙なバランスというか、お互いに思っていることを素直に表さないながらも、ある種、非言語のコミュニケーションで成り立っているところが。付かず離れずのファジーな部分がありながらも、いつでもつながっているよと、お互いが見守っているような愛情が描かれているところが。

ひとことで言うなら、「距離感」という言葉がシックリくる。この絶妙な距離感がスキだ。こうまとめると、これはこれでやっぱり違う。


いつも思うが、感情を言語化するのはとてもつもなくむずかしい。なんと表現したらいいものか。書いていてもどかしさを感じつつ、言葉にできない曖昧さは、それはそれで大事にしたい。

場面や展開、間合い、余白、布石となったものなどから心がなにを感じるか、きっとそれが、漫画の醍醐味だと思うから。

さて。昨日、前妻から自転車を借りたのだが、乗ってすぐにブレーキの効きの悪さやタイヤの空気の甘さに気づき、「またメンテナンスせずに放置してやがるな」と思いつつ、近所の自転車屋さんに修理・交換を依頼した。

*

そういえばこの電動自転車は、使いはじめて8年ほどになる。たしか前妻の母が、息子を保育園に送り迎えするのに大変だろうからと、購入してくれたものだ。

やや充電が減るスピードが早まった感はあるが、定期的にメンテナンスをしていれば、まだ十分に乗れる。あくまで、メンテナンスをしていれば、だ。

*

自転車屋さんに到着するまでの道中、なんかカラカラ音がするなとか、車体が汚れてるなとか、タイヤが随分と擦れていて雨の日は危なそうだなとか、気になるところがたくさん見つかった。

結局、全体的な点検と前後のタイヤ交換、ブレーキのワイヤーやタイヤと接触するパーツの修理・交換を依頼。翌日、自転車を引き取りに行った。

勿論、交換・修理を依頼した箇所はしっかりと直っていたのだけど、車体や泥除けなどの汚れている部分はノータッチで、綺麗になっていなかったのが少し残念だった。まあ、そこは仕事外だと言われれまそれまでだけれど。

帰り際、わざわざタイヤ交換までして、(しかも、別に自分の自転車でもないのに、自分で費用も負担して)このままじゃ気持ち悪いし気分的に嫌だ!

というわけで、近所のホームセンターに直行。KURE5-56を購入してチェーンに油をさし、車体を拭きあげ、無駄に綺麗にした。ムッタほどピカピカにしたわけではないけれど、「ふつう気づくよね」というレベルにはした。


画像4


そして、「自転車の修理が終わったから引き取ってきた。いつものところに置いてある。鍵は玄関に置いておく」と前妻にメッセージを送った。

数時間後、道端でばったり会った前妻からひとこと。「自転車、タイヤ以外になにか交換した? サドルとか交換した?」と。「ピッカピカァ〜〜〜♪」と上機嫌になったとは想像し難いが、少なからず気がついたのだ。

「ウェ〜イ♪ そりゃ気づくよね〜♪」と内心ガッツポーズだったが「いや、変えてないよ。交換したのはタイヤとブレーキのパーツだけ」と返した。

すると、「そうなの? なんかサドルとかやたら綺麗になってるんだけど......」と怪訝な顔。「ウェ〜イ♪ そりゃ俺が拭きあげたからね〜♪」と思いながら「あー、拭いたから」と返した。前妻はそっけなく「そうなの? ありがと」とまあ、いつもの調子だった。ムッタ、お前ならどうする?

*

そういえば、アンカリングって数字だけかと思ってたけど、そうじゃないのかもしれないなあ。

アンカリングとは認知バイアスの一種であり、先行する何らかの数値(アンカー)によって後の数値の判断が歪められ、判断された数値がアンカーに近づく傾向のことをさす。 引用:Wikipedia

宇宙兄弟で見たひと場面が、自分のとった「自転車をピカピカにする」という行動につながったとしか思えないんだよなあ。どうなんだろう。だとしたら、きっと応用が効くよなあ。そんなことを思った猛暑の1日だった。


画像5


noteを書いている間に、夜が明けた。おはようございます。少し、寝よう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?