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ネズの修行 ブレッドのパンやさん編



パンやのブレッドさんはあさはやくからしこみをしている。つくえのうえにはいただいたちゅうもんのリストがずらっとならんでいる。あさからそのちゅうもんにおわれ、ブレッドさんはおおいそがしだ。オーブンでパンをやいているあいだ、ブレッドさんはおもいつめたひょうじょうをうかべていた。
しかし、まもなくみせのそとからこえがきこえて、えんとつからなにやらものおとがきこえてきた。
「はあ、やっとついた!あれ、またここはトイちゃんのいえじゃない。しかもくらい!ゲホゲホ!どこだここは!」
しんぱいにおもったブレッドさんはにかいからえんとつにつながるかくれはしごをのぼって、えんとつをしらべた。みると、えんとつのなかにおんなのことおもえるあたまがつきでているではないか。
「おうい、だいじょうぶかい!!」
ブレッドさんのこえにみならいまじょのネズはきづいたが、えんとつのなかではすすがしかいをおおってうえにのぼりにくかった。
「うーん、だめかもしれない」
「いま、いくよー!!」
そうしてブレッドさんはえんとつのまえにたどりついて、ネズをみつけた。
「このロープにつかまって!!」
にかいにおいてあったロープをもちだして、ブレッドさんはえんとつのなかになげた。ネズはあたまのうえになにかがぶつかったのをかんじて、それをひっしにつかんだ。
「うん、つかんだ!!」
「ひっぱるよー!」
ブレッドさんはなげたロープのひもをしんちょうにひっぱって、ようやくネズをきゅうしゅつできた。えんとつからすすがブレッドさんのはなにもふわっとまい、ブレッドさんもゲホゲホとせきこんだ。
「わーたすかった!ありがとう!にしてもゲホゲホ!あーあ、まじょのふくがすすまみれだ。まちがえてチムニーにきちゃった」
「うちのせんたくきとかないのふくかしてあげるから、いそいでないならすこしやすみなさい。はなしはそれからだ」
「ほんとに!それはたすかっちゃう!ありがとう!」
そうしてネズはふくがあらってかわくまでは、ブレッドさんのおみせにいることになった。ネズがブレッドさんのやいているオーブンのまえにいくと、つくえのうえにはたくさんのしゅるいのパンがかごにいれておいてあった。
「パンがたくさんあるねえ」
「そう。いろいろとちゅうもんをうけてね、こたえないとならなくて」
そうこたえたブレッドさんのひょうじょうがくらくみえて、ネズはきになった。
「パンつくり、むずかしいの?」
ブレッドさんはネズにうちあけた。
「さいしょはね、みせにくるおきゃくさんにすきなパンをだせていたんだ。じぶんのやいたパンをおいしいとよろこんでくれるのがうれしかったんだ。ところが、しだいにこのみせがいろいろなひとにしれわたっていくうちに、むずかしいちゅうもんもおおくなってきた。かみくだいていえば、そんなたかいぎじゅつをもとめられても、しっぱいがこわくて、ちゃんとパンがやけてもすなおによろこべないんだ」
「ふーん、このパンおいしい。もぐもぐ」
ネズはかごにはいってた、こめこのパンをたべていた。
「そのしろいパンすきかい?なかにはコムギがからだにわるいえいきょうをうけるひとたちもいてね、ようぼうをうけたんだ」
「うん、ネズちゃんもコムギにがてだから、このパンはおいしい。もぐもぐ」
ネズはおなかがすいていたのか、ひとつこめこパンをたべおえると、もうひとつとおなじパンをつまんだ。
「そんなにおいしいかい?」
「うん、おなかすいているから、このくらいじゃたりない。おじちゃん、すごいじゃん!!

「そうかい。それならつくったかいあったなあ。わたしはブレッドっていうんだよ」
「もぐもぐ。ブレッドのおじちゃんね。わたしはネズちゃん。もぐもぐ。まじょなの、もぐもぐ」
「だからえんとつなんてへんなところからあらわれたりしたのか。まじょのせかいか、まじょならまほうでパンもかんたんにつくれるのかな?」
ネズはあたりのパンをみまわした。
「うーん、おんなじようなみためにはできるかもしれないけど、きっとあじがそんなにおいしくない。ブレッドのおじちゃんにしかできないよ!!こんなおいしいパンをつくるのは、きっと!!」
「ほめてくれるのうれしいね。でもじぶんはしっぱいしてあぶないめにあうのがこわいんだ、ほら」
そういってブレッドさんは窓際の閉じていたカーテンを開けると、そこにはダンボールがつまれていて、ダンボールのなかにはくろこげのパンがたくさんつまっていた。
「じゅくれんしても、しっぱいするんだよ」
「ありゃあ、これはたしかにたべられなさそう」
「どうしてじぶんにばかりひのこがふりそそぐのかな?」
ネズはきょうはおたがいにすすがふりそそいだとおもったけど、ブレッドさんのひょうじょうがあかるくなかったのでいうのをやめた。
「ネズちゃんもまほうつかいだけど、しっぱいばかりだよ。しっぱいしたっていいじゃない」
「とりかえしのつかないしっぱいだってあるんだよ」
「うん。でも、だれかがやらないとね。こまってるたよりにしているひとたちがいるってことだから」
「だからまあ、きほんにかえってるよ。ひとまずそこをおさえればおおきくぶれることはないとおもうから」
「ブレッドおじちゃんたいへんだ」
「おたがいさまだね、ネズちゃんもまほうのれんしゅうがんばりなね。どれ、もうふくもかわいたころだろう。ほんらいいくところがあるのでしょ。じゅんびしなよ」
「あ、そうだった!このふく、かしてくれてありがとう」
そうしてネズはせんたくかんそうきから、じぶんのふくをとりだしてきがえた。きがえおわると、ネズはブレッドさんのところへもどりあいさつをした。
「ブレッドおじちゃん、ありがとう。なにもおじちゃんのためにしてやれないこともまだまほうつかいとしてはんにんまえなのかもしれない」
「いいんだよ。ほら、これこめこぱんくるんだから、バスケットごとあげるよ」
ブレッドさんはネズのためにパンをいれたバスケットをよういしていた。
「わあ。いいの!?おじちゃんありがとう!たくさんたべる。よくおなかすくから」
「うん、ひさしぶりにじぶんのパンをたくさんたべてくれるひとにあったきがしてうれしかったよ。ありがとう」
ネズはブレッドさんのよういしたバスケットをてにして、もうかたほうのてのひとさしゆびでくるくるとなみうつようにえがいた。すると、ネズのからだはキラキラとひかりだしていった。
「じゃあね、ブレッドおじちゃん」
まんめんのえがおでふりむいたネズは、つぎのしゅんかんにはぱっといなくなってしまった。そのえがおのいんしょうがつよくて、ブレッドさんはネズのことをにどとわすれないだろう。







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