音楽って辞めるものじゃない
不思議だと思うこと。
大切なことでもなんでもないのに、「大切なお知らせ」として一方的に別れを告げられること。
私にとってはあなた達と次に会えることが大切だった。
不思議だと思うこと。
「あいつ音楽辞めるってよ」
音楽ってそもそも「始める」ものだったっけ?
では勝手にやめればいい。私を置いて。
ステージに立つあの人も人間だ。
ステージに立つあの人が好きだった。
楽器を自分の体の様に扱い、どんなことも歌ってくれるような
なんでもわかってくれているような。
あなたが歌ったことは嘘ではない。
それはわかっているよ。
でも、私を置いていかないで。
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コロナ禍。
今じゃすっかり「こ、ろ、な、か、」ってキーボードで打つと、ご丁寧に変換してくれる。当初はみんな、なんて読むかわからなかったのにね。
知らず知らずのうちにかつて私の居場所だったところに足は向かなくなった。
ニュースタンダードな生活様式の選択肢から「ライブハウス」は漏れてしまったようだ。
案外、なくても生きていける。
うん。大丈夫。
いつの間にか私も「音楽を辞めて」しまっていた。
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とても悲しいことが続いて、どうしようもなくなった。
テレビの中も、スマホの中も、逃げ場はない。
ショッキングな映像ばかり、宙をまう。
誰を信じて良いかわからない。
悪魔はどこに隠れているかわからない。
息が詰まった。
動かない電車の中。
出られない。此処も、何処にも。
知らずのうちに指が動くプレイリスト、聴き慣れたイントロ、
懐かしい声、思い出す、懐かしい場所。
「救って、私を」
目を瞑る。
手をとって、あの場所へ手をひいてくれるのは誰?
終
100円でいい事があります(僕に)