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潮騒/三島由紀夫

<日本文学編>


応酬応酬、語彙の応酬。
相変わらずの筆力。
いやしかし今回はいつもの三島とちょっと違うぞ。
妖しい雰囲気が一切ない。
危なっかしい、キケンな、ある種スレスレな匂いが一切しない。

おかしい、どうせ途中から危険な匂いがどんどん孕んでくるんだろうな…

いやこの主人公めっちゃ爽やか。
いやこのヒロインめっちゃ一途。
でもどうせなんかあるんでしょ…うん。

そう!そうだよな!いいぞ!そうだそうだ!


…なにこれめちゃめくちゃ王道!!!



というお話でした。
三島だからって危ない刺激ばかり求めてはいけません。
すかっと、収まるところに収まる。
はっぴぃえんどです。

好きな一文。

そうして岸には幸福な少女が残った。

という所なんですが

これはエンディングのシーンでもましてやヒロインの事でもなくて

むしろヒロインの敵役?ライバル?実際にはヒロインと接点はないけどめんどくさい事を引き起こした人物の描写なんです。

たった一言で人の人生を変えてしまう瞬間とか、ずっと前に何気なく褒められた言葉とか、言った本人は全く覚えてなくても当人にはすごく宝物のように残り続ける言葉ってありますよね。
逆もまた然り。何気ない一言がトラウマのように今でも鈍く痛んだり。

できれば自分の発する言葉は前者であってほしい。何気ない一言で実は人をひとり幸せにしてるって素敵な事ですよね。

舞台は三重県鳥羽市の神島というところらしい。

何回も映画化されててタイトルぐらいは知ってる人もいるかもしれませんが、こっから注意点。


三島由紀夫を初めて読む人はこの本から読んではいけません。


なんだ、めっちゃ王道やん!
と思ってほしくないからです。

「金閣寺」とか、「仮面の告白」を読んでからうわ、おい、マジかよ、すげえこの人…

のあとに読むべきです。

潮の風がより一層爽やかに薫ることでしょう。

余談ですがかなり写実的表現が多く、風景の想像が乏しい方は最初はイメージしにくいかも。
俺もそうでした。

2020:01

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