不確実な未来にどう備えるか?
ちょうど昨年末ごろから、
未来が不確実であることを前提に未来を考える"未来洞察"と呼ばれる手法を用いたコンサルティングをしていました。
そこにコロナが直撃し、まさに不確実な未来が現実となったわけです。
今後、多くの企業で
・アフターコロナの社会や人々の生活はどう変化していくのか
⇒それに対して自社はどんな戦略を打つべきか
・次に起こり得るインシデントはどんなものか
⇒それに対して自社はどんな備えをすべきか
といった議論がなされるでしょう。
こういった検討において、"未来洞察"が一つの手段となると思うので、
簡単にまとめてみたいと思います。
未来予測と未来洞察
未来洞察(Foresight)に似た言葉として、未来予測(Forecast)があります。
まずはじめに、この2つの違いに触れておきたいと思います。
これらの違いは明確に定義されていないですが、
未来予測とは、過去の統計データなどをもとに客観的かつ科学的に、
蓋然性の高い(=高い確率で実現する)未来を描くもの
未来洞察とは、確率や状況を客観的かつ科学的に示すことは困難だが実現するかもしれない未来を描くもの
と整理することができます。
未来予測では原理的に現時点から見て"連続的な変化の先にある未来"を描くことになりますが、未来洞察では"非連続な変化の先にある未来"も含めて描くことになります。
VUCAの時代と呼ばれる現代において、企業にとって非連続な変化の先にある未来に備えることの重要性は言うまでもなく、
これが近年"未来洞察"に注目が集まっている理由と言えます。
この手法が過去に注目されたのも、
オイルショックの際や世界同時多発テロの際など、"非連続な変化"が起こったタイミングであり、今回のコロナも"未来洞察"の必要性が高まるきっかけになると考えられます。
特に、オイルショック時にシェルがシナリオプランニングの手法で危機を切り抜けた話は有名です↓
発生確率がわからない未来に対してどう手を打つか
上述のように、未来洞察では描く未来が実現する確率がわかりません。
したがって、この手法で単一の未来を描き、その未来に対して戦略立案を行うのはギャンブルでしかありません。
したがって、この未来洞察によって複数の未来を描き、
・それぞれの未来に対して打つべき戦略
・どの未来になっても打つべき戦略
を考えていく必要があります。
(シナリオプランニングとも呼びます)
ファッション業界を例にとって、2040年の人々の生活様式を考えた場合、
1)テレワークやデリバリー、AR・VRが浸透し、人々がほとんど外出しなくなった未来
2)自動運転の普及により移動コストが低下し、依然として人々が現在と同程度に外出している未来
どちらの未来も現時点で"ない"とは言えないでしょうし、
どちらに振れるかによってアパレル関連の企業が取るべき戦略は変わるでしょう。
未来洞察では、自社の事業にとって影響度が大きい事象を抽出し、
未来を描くことが重要です。
未来に起こるかもしれない事象の抽出方法
ここまでであれば、個人の思考実験の範囲内で行えます。
しかし、様々な事象が複雑に絡み合った現代において、
一個人が未来に起こるかもしれない事象を抽出することは困難ですし、一企業内で行うのも困難でしょう。
そこで用いられる手法がデルファイ法と呼ばれる手法です。
この手法はアメリカのランド研究所で開発されたもので、専門家に対して複数回のアンケートを行いながら意見集約をしていきます。
多様な有識者の意見を集めることで、様々な角度から未来について検討を行うことができます。
最後に
コロナの感染拡大、外出自粛を経て、今まで企業が前提としてきた事柄が大きく変わっていきます。
一方、どう変わるか、どの程度変わるのか読めない中で、戦略を描かざるを得ない状況に直面しています。
個人の思考実験の範囲内でも、自分の会社や生活に対して影響のある事柄について検討する機会になれば幸いです。
参考書籍などは多数ありますが(自分も勉強中です)、一橋ビジネスレビューは手軽で読みやすいと思います。