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青春は、時に盲目で、時に全てでもあり、時に、切り抜いた思い出の、鮮やかなる1ページとなる。2

今日は、高校生活で、最初で最後の文化祭。
文化祭には、いろんな夢が詰まっている。

中学生の時。
学校見学の一環で、目星をつけていた高校の文化祭を見に行った。
当時、セーラー服だった私は、白いシャツに数段折り重ねたスカートを、小洒落た風に着こなしている高校生を見て、「かっこいい」と思ったのを、今でも覚えている。
みんな、キラキラして、眩しくて。
たった数個しか年が違わないのに、とても大人びて見えた。
きっと、今思えば、その時の高校生たちも、大して大人ではなかったんだろうけれど。
それでも、今、この場所で、私こそが主役だと、おもいっきり楽しんでいる姿は、とても輝いて見えた。

高校に入学して、はじめての文化祭では、右も左も分からなくて、クラスで意見を出し合って決めた演劇も、部活で練習になかなか参加できないクラスメイト達がいて、ちょっとギクシャクした。
ぶつかって、ちょっと心がすり減っちゃって、それでも、本番が近づくにつれて、このままじゃダメだって思った人、1人、また1人と、まるで「仕方ないな」みたいなはにかんだ顔をして、手を取り合った。

そして今日は、高校最後の文化祭。
辺りはすっかり暗闇で満ちていて、校庭には、生徒たちが集まっている。
最後には毎年、近くの川で花火が打ち上げられる。
それを一目見ようと、地域に住んでいる人や、他校生、OB、たくさんの人が集まっていた。

後数分で、花火が打ち上がり、そして私の文化祭が、終わる。

「なんだ、こんなとこにいたの?」

ガラ、と扉を開ける音と共に、凛とした声が響いた。
高校3年間、クラスが一緒だった腐れ縁の女の子。
学生服ではなく、学ランを着ている彼女は、部活動の出し物で、客引きを任されていたらしい。

「イケメンが迎えに来た〜」

割と男顔で女子の平均身長より少し高め、ショートカットがよく似合う彼女は、夜目でみると本当に男の子に間違うのではないかと思うほど、学ランが様になっている。

「私も迎えに来てほしいわ」
「結局、2人ともこの3年間彼氏できなかったもんね…」

ケタケタとおどける様に笑う私と、呆れ顔で笑う彼女。
この高校でできた、唯一無二の、私の親友。

「なにを思いふけってたの?」

窓を開けて腕を投げ出していた私の隣に立ち、彼女もまた、同じように窓枠に腕を投げ出す。
彼女が隣にいることが、当たり前になりすぎて、さっきまでの、どこか胸にぽっかり穴が空いたところに、足りないピースがカチッと埋まった感覚を覚えた。

「んー、高校最後の文化祭、終わっちゃったなーと思って」

あえて明るく、振る舞ってみせる。若干の寂しさは、ちょっと強がってみたくて、言葉の奥に閉まった。

「それで感傷に浸ってたんだ?」

ニヤニヤと、からかうように言ってくる彼女。
一緒にいる時間が長すぎると、隠そうとしてもバレちゃうのが、タマニキズだ。

「だってさぁ、今日あったこと、1年もしたら大半は忘れちゃうんだもん。寂しいよね〜」

そう。
どんなに楽しくっても、かけがえのない瞬間でも、生きている限り、ずっと覚えてられるはずがなく。
思い出はどんどん上書きされて、この時間以外にも、また最高って思える瞬間が生まれたりして。

いつか大人になって、今そばにいる大切な友人や、楽しい時間も色褪せてしまうのだろうか。

そう思って、喉から込み上げてくる、グッとした何かが溢れるのを、必死で堪えた。

「そんなの、何度でも話してあげるよ。耳にタコが出来るまで。そうすれば、忘れないでしょ?」

耳から入る情報は、何度も何度も繰り返し聞かせることで、鮮度をずっと保って残り続けるらしいよ。

そう言って、彼女はニカッと笑って見せた。


あれから、もうすぐ10年が経とうとしてる。
ねぇ、あの言葉、今でも覚えてる?
あれから、高校を卒業して、何かあると集まって語らい、あの頃はジュースだったけど、今はお酒をお供に、あの夜の話をしてるよね。
だから、あの日起こった出来事を、私は今も鮮明に覚えていられてるよ。
まだまだクラスメイト全員の名前を言えるくらい。
10年経っても色褪せない思い出を、かけがえのない大切な記憶を、ずっと与え続けてくれてありがとう。

10年目も、どうぞよろしくね。

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