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人材派遣利用マニュアル ~人材派遣利用のルール~ ③事業所単位の抵触日と意見聴取

人材派遣利用マニュアル ~人材派遣利用のルール~編を解説しています。

人材派遣を利用する際に知っておくと良いルールの紹介です。

今日は、第三弾!「事業所単位の抵触日」いってみましょー!


「ひたすら具体的」で「生々しく」人材派遣利用の教科書を作るという狙いなので、僕の独断で、派遣先企業が知っておくべきことについて超実践的に解説していきます。

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抵触日とは!?

まずは、抵触日という聞きなれないものはいったい何なのか!?ということを説明します。

前回、「常用雇用代替防止」について解説しました。


そして、以前、派遣法の歴史についても簡単に紹介しています。


外国から来た、人材派遣という黒船に、日本の正社員という働き方が脅かされないための規定が派遣法のコンセプトになってしまっていましたね。


抵触日とはその名残です。(名残というか、まあ、そのための規制です)

昔は、人材派遣というサービスをその事業所で利用するのであれば3年までとか、1年までというルールで設定されていました。(雑!詳しく知りたい人は↑派遣法の歴史を知るの図を参照ください)



まず、名称ですが、その3年に抵触する最初のだから、「抵触日」と呼ばれています。


つまり、抵触日とは、

常用雇用(正社員)代替防止のために、派遣が利用できる期間抵触になる最初の日

のことを指します。

まずは、このことを知っておいてください。

ちなみに、かなり簡潔化してしまっていますが、常用雇用代替の防止だけでなく、派遣労働者の身分の固定につながらないようにという目的でもあります。


抵触日には2種類ある!

ここからは、2015年の派遣法改正におけるルールを説明します。

2015年の派遣法改正以降は、人材派遣の現代史とも言え、現状有効な規定がたくさんあります。

2015年の派遣法改正は、2020年の同一労働同一賃金の派遣法改正と並び、現在の派遣法のベースとなっていると言えるでしょう。

ですので、2015年派遣法改正の内容はとても重要です。

2015年派遣法改正の概要リーフレット↓


↑リーフレットにもありますが、現在の派遣法では、「抵触日」というものが2種類あります。

それは、「事業所単位の抵触日」「派遣労働者個人単位の抵触日」です。


「事業所単位の抵触日」とは、

同一事業所が派遣労働者を受け入れられる期間には原則3年という制限に対し、この派遣受入期間の制限に抵触する最初の日

です。

言い換えれば、原則3年を超えて、同じ事業所では派遣労働者を受け入れることはできないということになります。


ちなみに、3年を超えて受け入れたい場合は、

受入期間終了の1ヶ月前までに、事業所ごとの過半数労働組合などに意見聴取をしたうえであれば、さらに最長3年まで派遣受入期間を延長する

ことができます。

言い換えれば、意見聴取さえすれば、3年を超えて派遣労働者を受け入れることが出来るということになるのです。

意見聴取については、後ほど、解説します。


また、「事業所単位の抵触日」については、派遣を受け入れる派遣先企業から派遣会社へ通知する義務があります。

こちらについても、後ほど、解説します。



そして、もう一つの抵触日が「派遣労働者個人単位の抵触日」です。

「派遣労働者個人単位の抵触日」とは、

「派遣社員が同一の組織で働くことができる期間は3年が限度まで」と定められており、その派遣期間制限の切れた翌日

のことを指します。

ここでの同一の組織というのは、いわゆる「課」とか「グループ」を指します。

ちなみに、3年を超えて、「課」を変えて同じ方を派遣労働者として受け入れる場合、法律の趣旨としては同じ仕事にずっと従事させるのではなくキャリア開発を行うことを目的としているので、実態に合わせて同じ仕事かどうかを判断することも大切です。


事業所単位の抵触日の概念では、3年を超えて派遣を受け入れることはできても、個人単位では3年以上同じ仕事に従事させないように規定されていて、それは、(例えば、正社員の人事異動のように)派遣労働者個人には、様々な仕事に従事してキャリア開発をしてもらうことを目的としているということはぜひ、知っておいてください。

また、追って解説しますが、3年を超えて派遣労働者を派遣したい場合、派遣会社側に「雇用安定措置」を図るという義務が生じます。


雇用安定措置についてはもう少し先の記事で解説しますが、「労働者個人単位の抵触日」については、次回、解説します。



事業所単位の抵触日は通知しなくてはならない

今日は、2種類ある抵触日のうち、「事業所単位の抵触日」について、解説していきます。

まずは、「抵触日通知」についてです。


「事業所単位の抵触日」については、最初に派遣を受け入れた日から3年となるため、最初の派遣会社しか、その日が分かりません。

例えば、派遣会社A社から派遣労働者を1名受け入れて1年半後にその派遣労働者が退職し、派遣会社B社から派遣労働者を受け入れた場合、派遣会社B社は「事業所単位の抵触日」がいつなのか、分からないわけです。

ですので、派遣を受け入れる企業が「事業所単位の抵触日」を通知する義務があります。


これを、「抵触日通知」と呼びますが、派遣会社から「抵触日通知ください!」と言われたら「事業所単位の抵触日」を通知することだと思ってください。


「事業所単位の抵触日」は、書面や電子メールなどで通知する必要があります。
なお、事業所抵触日を通知する書面に、とくに決められたフォーマットはありません。事業所名とその所在地、事業所抵触日(意見聴取後に期間を延長した場合は延長後の抵触日)が記載してあれば、書式は自由です。


書式は自由ですが、自分で考えるのも大変なので、会社に規定がなければ、派遣会社に相談すれば、「抵触日通知」のフォーマット(見本)をくれると思いますので聞いてみてください。



意見聴取とは

先ほど、3年を超えて受け入れたい場合は、

受入期間終了の1ヶ月前までに、事業所ごとの過半数労働組合などに意見聴取をしたうえであれば、さらに最長3年まで派遣受入期間を延長する

ことができるという話がありました。

これにより、理論上、同じ派遣労働者の受け入れに拘らなければ、派遣サービス自体は継続的に利用することが可能になっています。



【意見聴取の進め方】

→事業所ごとに、必ず「書面」で行う必要があります。

必要事項を書面に記載して通知し、過半数労働組合等が十分に考慮するための期間を設けたうえで、意見の提出(回答)を得るようにします。

(意見聴取期間内であれば、過半数労働組合等の意見の提出に期限をつけることは可能であり、期限までに意見がない場合には意見がないものとみなす旨を事前に通知しておけば、そのような取り扱いも可能)


で、何の意見を聴取するの!?っていうはなしですが、それは、

「3年を超えて、その事業所で派遣労働者を受け入れてもOKか?」

ということです。

そのために、例えば、3年を超えて派遣を受け入れたい(派遣可能期間を延長したい)事業所について、その事業所ごとに、派遣法改正以降に事業所で初めて派遣を受け入れた日以来の「派遣労働者数と正社員数の推移」データを準備します。

常用雇用代替防止の時にも説明した考えですが、「派遣労働者を受け入れることで、正社員の数は減ってないですよね?だから正社員の雇用は脅かされてないですよ」といったことをデータで示すわけです。


意見聴取の際、過半数労働組合等が常用雇用労働者の代替が起こっていないか等の視点で判断・回答をする材料として、このようなデータを提供することが必要とされていますので、知っておいてください。


また、意見聴取をして、「事業所単位の抵触日」を延長したら、派遣会社へ新しい抵触日を通知する必要があります。

加えて、これは事業所(雇用保険法等雇用関係法令における概念と同様のもの)ごとに必要な手続きであるということも注意ください。



「労働契約申込みみなし制度」に注意!

「意見聴取」について、気を付けないポイントとして、「労働契約申込みみなし制度」に該当するということがあります。


「労働契約申込みみなし制度」とは↓(厚労省リーフレット)


「労働契約申込みみなし制度」とは、

違法状態で派遣が行われていた場合、派遣先は派遣労働者に対して、当該派遣労働者の派遣元事業主における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約をしたものとみなされます(派遣法第40条の6)。

というものです。

もともと海外で同じような規定がある国があるのですが、違法状態の場合に派遣先が同じ条件で直接契約を申し込んだとみなされるというものです。

有無を言わさず、従業員が増えてしまうので、派遣窓口担当や人事担当としては、正直避けたいところですよね・・・



具体的に「労働契約申込みみなし制度」の対象となる違法派遣とは、次のケースを指します。

①派遣禁止業務で派遣労働者を受け入れた場合
②無許可・無届の派遣元事業主から派遣労働者を受け入れていた場合
③派遣可能期間を超えて派遣労働者を受け入れていた場合
④いわゆる偽装請負で受け入れていた場合

で、①なんかは、明白な違法行為(港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療業務、士業といった、禁止業務に派遣する)ので、普通しないです。

②も、さすがに無許可の派遣会社なんて怪しすぎて気がつきますよね。(たぶん・・・)


起こりうるとすれば③か④だと思いますが、

④の偽装請負は、わざわざ請負形態を選ぶのであればある程度、コンプライアンスには意識して進めることが普通です。

そういう意味では、③派遣可能期間を超えて派遣労働者を受け入れていた場合は盲点になりやすく、

・抵触日の1か月前までに意見聴取をしないで派遣労働者を受け入れた

・意見聴取をした過半数代表が管理監督者

・派遣可能期間を延長するための代表者選出であることを明示するなどの手続きを行っていない

・非民主的な手段で代表者選出を行った

といった内容で、該当してしまうので、適当に「意見聴取」をしないで、書面でしっかりと、記録が残るように勧めるようにしてください。

最寄りの労働局のホームページを確認したり、問い合わせたり、派遣会社の営業に説明を求めるなどして、万全に進めていただきたいと思います。

↓北海道労働局HP(何となく分かりやすい気がする)



最後に

今日は、抵触日には「事業所単位の抵触日」と「派遣労働者個人単位の抵触日」の2種類があることと、主に、「事業所単位の抵触日」についての解説をさせていただきました。

特に

✅抵触日通知について

✅意見聴取について

✅労働契約申込みみなし制度に注意!

というポイントについてお話しました。


非常に分かりにくい部分かと思いますので、調べてみても分かりにくければ、派遣営業に確認いただけると良いと思います。


以前、営業パーソンには法律への知識が必要という話をしましたが、そのチェックに使えるかもしれません。

派遣営業が、全てに答えられる必要はありませんが(意見聴取なんかは、派遣先の実務ですし)、全く言葉が分かってなかったり、調べて答えることもできないようだと、ちょっと心もとないですよね。


次回は、「個人単位の抵触日」について、お話します。

では、また!




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