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ヤプリのカスタマーサクセスでコミュニケーション戦略を推進した話 2/3〈組織課題の抽出編〉

こんにちは。コミュニケーションデザイナーの妻鳥(めんどり)です。ヤプリのカスタマーサクセス組織にてコミュニケーション戦略を推進しています。

カスタマーサクセスにおけるコミュニケーション戦略に関する記事の第2章となります。前回の《課題の可視化編》の記事にて推進する上でのメリットやその価値について触れておりますので、あわせてご覧いただけますと嬉しいです。

コミュニケーション戦略の全体像

改めてにはなりますが、以下がコミュニケーション戦略の主な手順となります。

◉ 課題の可視化
1. すべての業務フローと顧客タッチポイントの可視化
2. 各チームの業務詳細の共有と把握
3. 各チームの課題の可視化とコミュニケーション戦略の目的整理

◉ 組織課題の抽出
4. 各チームの潜在化した課題の洗い出し
5. チーム横断オフサイトの企画・実施
6. 注力フェーズの決定と次期に向けた計画

◉ 解決に向けてのアクション
7. 各チームの取り組みの明確化
8. 目標への落とし込みと実施
9. 振り返りの実施

「課題の可視化」「組織課題の抽出」「解決に向けてのアクション」の3つに分類し、本記事では「組織課題の抽出」について詳しく触れていきます。早速ですが、以下が手順となります。

4. 各チームの潜在化した課題の可視化

第1章の《課題の可視化編》では、顧客とのタッチポイントベースで各チームにおける課題の可視化と優先順位づけを行い、さらに「業務効率化軸」と「顧客の自走化軸」に分類しながら、コミュニケーション戦略における方向性を決めるところまでをご紹介しました。

ここでは、一旦顧客とのタッチポイントの話から離れ、チームごとの「潜在化した課題」の棚卸しを進めていきます。なぜ潜在化した課題についてこのタイミングで触れるのかというと、業務効率化に向けた仕組みづくり(テックタッチの一部)を実現するための「中長期的なリソースの確保」が理由としてあげられます。また、ここまで可視化を進めてきたものは後の工程(5. 組織横断オフサイトミーティング)で一斉に取り上げていきます。

4-1. 各チームの潜在化した課題の棚卸し

日々の業務で負担になっていることや効率化できそうなことがないかを現場とすり合わせながら行います(タッチポイントにおける課題と多少被る部分もあり)。マネージャー視点だけでなく現場目線を取り入れながら棚卸しを進めるか、各メンバーに直接ヒアリングを行うなどでも良いでしょう。イメージとしては以下のような業務・タスクが当てはまるかと思います。

◉ 時間・リソースさえあればもっと効率化できるもの
◉ 一部のメンバーに負担が偏っている・リソースが足りていないもの
◉ 変えようとすると影響範囲が大きすぎて手が付けられないもの
◉ 知見やノウハウが一部のメンバーに偏っているもの
◉ かけるている時間に対して成果が見合わないもの
◉ 2〜3年(それ以上)やっているが業務内容に大きな変化がないもの
◉ 前任者・退職者からの引き継ぎで再構築できない・やめれないもの
◉ なんとなくやっている・そもそも課題と認識していない

4-2. やめるべき業務・タスクの抽出

潜在化した課題の中から「やめるべき業務・タスク」のピックアップを進めます。このやめるべき業務の中には根が深く緊急性の高いものあるため、タスクベースのものであれば早々にやめる方向で準備を進め、影響範囲が広く時間がかかるものについては再構築を行う前提で次期の目標に入れるなどで改善に向けての計画を立てていくと良いでしょう。先程のリストの下半分がやめるべき業務・タスクのイメージとして近いかと思います。

◉ 時間・リソースさえあればもっと効率化できるもの
◉ 一部のメンバーに負担がかかりすぎている・リソースが足りていないもの
◉ 変えようとすると影響範囲が大きすぎて手が付けられないもの
◉ 知見やノウハウが一部のメンバーに偏っているもの
◉ かけるている時間に対して成果が見合わないもの
◉ 2〜3年(それ以上)やっているが業務内容に大きな変化がないもの
◉ 前任者・退職者からの引き継ぎで再構築できない・やめれないもの
◉ なんとなくやっている・そもそも課題とも認識していない

定常的な業務についても「今後継続していく意味があるのか」「当たり前にやっているがもっと効率化できないか」といった視点で潜在化した課題を今一度見直し、少々ドラスティックではありますがテックタッチの実現など、新たな施策を行うための時間を確保していくための準備を進めていきます。

もちろん影響範囲が広く改善しようにもすぐ動き出せないものも出てきますが、そういった場合は改善することを目的とするのではなく、課題として認識する・周囲に認知されることを目的とし、オフサイトミーティングのような場での共有に向けて割り切りながら実施できると良いかと思います。

5. 組織横断オフサイトミーティングの企画・実施

1〜4までの準備が整えば、CS組織横断のオフサイトミーティングの実施に向けて企画を進めます。会社の規定にもよりますが、チームビルディングの観点からもなるべくオフラインでの開催がおすすめです。いつもと違う気分(とにかく気楽に)で進行ができればなお良いかと思います。

※「オフサイト」と表現していますが、決して社外でやらないといけないわけではありません。いつもと違う雰囲気や環境が作れれば社内でも十分に進行が可能かと思います。

5-1. オフサイトミーティングの企画

まずはメンバーの選定から。参加者は組織の規模や体制次第ではありますが、多くても10名ほどにしておくとディスカッションも捗る印象です。メンバーはある程度の決裁権がありかつ経験豊富なメンバーが良く、おのずとマネジメントレイヤー中心の構成になってきます。もし5つのチームから集う場合は、1チーム2名ずつくらいにしておくと良いでしょう。

次に、日程調整と当日までのワークの実施です。組織の規模次第では、オフサイトにかける時間は1日終日で進めることも可能ですが、2日に分けて前半後半で進められると頭の整理もできおすすめです(ヤプリでは2日に分けて2回実施を行いました)。マネジメントレイヤー中心のオフサイトとなる場合は予定も立てにくいため、ある程度先の予定を抑え、当日までの期間を1〜4の振り返りやワークの時間に当てられると期日も決まっているため良いかと思います。

企画者は参加メンバーに事前に当日のタイムスケジュールを共有できると事前準備も捗るためおすすめです。以下は一例となりますが、当日のアジェンダとタイムスケジュールのイメージです。

【】内は「3-3.課題の分類」で決めた大分類が入る。4チームで実施した場合のイメージです

5-2. 目的・ゴールの明確化

《課題の可視化編》でも言及させていただきましたが、常時参加メンバーとの目線合わせや合意を得ていくことが重要であるため、プロジェクト全体や各会議体の目的やゴールについては必要以上に発信し浸透させながら進められるとブレない進行が可能かと思います。

一例にはなりますが、以下のようにこれまで議論してきたことを1つのドキュメントにまとめておくと議論が先祖返りしづらくなるため、よりコミュニケーションがスムーズになるかと思います。また、目的・ゴールについては会社のミッションや経営戦略・OKRなどと結びつけけておくとさらに解像度が上がるため合意を得やすくなるきっかけにもなるかと思います。

目的・各課題・現状の把握などをまとめたドキュメントの全体像

5-3. オフサイトの実施(発散編)

オフサイトミーティングを実施する場合は「発散編と収束編」のように2部制にし「ワークやディスカッションに集中するパート」と「意見をまとめていくパート」とで実施する日を分けて頭の整理をする期間をあえて設けながら進めるのも手です。ここでは発散編と収束編と2日にパートを分けて実施する体でご紹介させていただきます。

3で実施した「各チームの課題の可視化」をベースに一つ一つ議論していきます。課題の数に応じて「どの優先度まで議論を進めるべきか」を決め「優先度 : 高」の課題のみを取り上げるか「優先度 : 中」まで行うか、はたまた注力したいフェーズで絞り込むか、中でも「優先度:低」については議論の余地もないものもあるため、可視化された課題を俯瞰しながら取捨選択して議論を展開していくのが良いでしょう。

※ 各内容は記事用に作成したイメージです

また、ここで取り上げることができなかった課題については、一旦把握のみに留めて四半期もしくは半期後に改めて振り返るなど、徐々に消化していくのも良いでしょう。

5-4. 連携が必要なチームとのディスカッション

オフサイトミーティング(発散編)の最後の工程となります。顧客の自走化軸・業務効率化軸ごとの各チームの課題とその優先度が一通り可視化されました。次は実際にどのようにディスカッションを展開していくか、ファシリテーションの観点からお伝えできればです。

そもそも課題の可視化をする際になぜ「連携が必要なチーム」を表記をしたかについてですが、互いの課題を発散をするパートとは言えど、10名ほどの集まりかつ、業務理解の深いメンバーで構成された中でのディスカッションとなるとあらゆる観点で議論が展開されます。議論が盛り上がること自体は非常に良いことではありますが、時間は有限であるかつ「解決に向けた具体的なアクション」につなげる必要もあるため、その課題を解決する上で最も協力を仰ぐ必要があるチームと優先的に議論を展開していくことが目的となります。

ファシリテーターは風呂敷を広げるところは広げながら、常にタイムマネージメントを行い要領よく進められるとより密で有意義な議論が展開できるかと思います。また「連携が必要なチーム」という括りでなく、バイネームで個人に向けてのディスカッションを展開するのも良いでしょう。

6. 注力フェーズの決定と次期に向けた計画

議論した内容を元に各部の来期の取り組みを明確にしていきます。テックタッチの実現を前提とした戦略となるため、カスタマーマーケティングやオペレーション施策を中心に次期で注力すべきフェーズやその計画を進めていきます。

6-1. オフサイトの実施(収束編)

発散編で議論してきたことをまとめていきます。ここではFigjammiroのようなツールを用いて、各課題をプロットし組織の共通課題に対する解像度を上げていきます。繰り返しの作業になりますが、いつ何時でも可視化は重要です。プロットについてはオフサイトの中でやらずに各チームの事前のワークとしても良いです。以下は事前準備不要のワーク込みでのアジェンダとタイムスケジュールのイメージとなります。

【】内は「3-3.課題の分類」で決めた大分類が入る。4チームで実施した場合のイメージです

6-2. 共通課題の可視化

オフサイトミーティング(収束編)の最後の工程となります。次期に各チームで早々に取り組めるよう目標に落とし込む前提で、まずはそれぞれのチームの優先度の高い課題を付箋に記入し「実行スピード」と「影響度」などの軸で構成されたマトリクスにプロットしていきます。

自チームのプロットが完了したら、次に他のチームにプロットされている課題の中で「連携が必要なチーム」に自チームが選ばれている付箋を、他チームのマトリクスから自チームのマトリクスへ同じ位置に複製を行います。

上段が自チームの課題、下段が連携先として自チームが選定されている課題をプロットしたもの


この作業でわかることとしては、例えば「顧客の自走を促したい」といった自チームと他のチームとの共通の課題があった場合かつ、そのプロットしている位置が大きく異なった場合、それぞれのチームの中での実施面の感覚値(実行スピードと影響度)に乖離が生じていることになるため、プロットした位置についての理由のヒアリングや議論を進めることで、双方の感覚の差を埋めていきます。

また、プロットを行うことで「どのチームが自チームに協力を要しているか」やその量についても可視化することができるため、付箋の数が多いなど場合は「リソース的に問題なさそうか」などの議論も同時に行うことが可能となります。

より多くの連携を求められるチームやプロットの位置でチームごとの課題の特性が出てくる

上記の取り組みを課題の大分類(顧客の自走軸・業務効率化軸)ごとに行い、それぞれの軸ごとに共通課題の可視化をおこなっていきます。最終的に付箋の位置関係について他のチームとすり合わせを行い調整し、より重なり合う部分を可視化することで、組織における共通課題の抽出を行なっていきます。

6-3. 注力フェーズの決定と次期に向けた計画

次期に向けて各チームで実施すべきことや共通課題の可視化ができると、顧客のライフサイクルを用いて「どのフェーズから取り組んでいくか」のように、組織全体で次期注力すべきフェーズやテーマを決められるとさらに組織全体で足並みを揃えられかつ、それぞれの施策に落とし込みやすいためおすすめです(ヤプリではまずはオンボーディングフェーズに注力することにしました)。

可視化したカスタマージャニーや組織課題を照らし合わせて次期のテーマを決める

最後に

補足となりますが、本コミュニケーション戦略では課題の大分類として顧客の自走化軸と業務効率化軸とで課題を分類し進行しています。冒頭でも触れていますが、その背景としてはテックタッチの実現(コミュニケーション設計やコンテンツ制作など)におけるリソースの担保、そしてテックタッチを実現することによって一貫した顧客コミュニケーションを実現し、社内外のコミュニケーションを見直しながら末端業務を効率化させることで、より高い価値提供を行う環境を構築し、ユーザーの体験をさらに向上させていくことを目的としています。

次回《解決に向けてのアクション編》では、組織の課題の可視化・優先順位づけや次期のテーマなどから、いかにしてテックタッチ施策に落とし込んでいくかなど、コンテンツの話も交えながらより具体的な取り組みについてご紹介できればと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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