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ヤプリのカスタマーサクセスでコミュニケーション戦略を推進した話 1/3〈課題の可視化編〉

こんにちは。コミュニケーションデザイナーの妻鳥(めんどり)です。ヤプリのカスタマーサクセス組織にてコミュニケーション戦略を推進しています。

以前の記事では、ポータルサイト施策の価値について書かせていただきました。今回はもう少し幅を広げて、テックタッチを軸としたコミュニケーション戦略について執筆させていただきます。全てをまるまるお届けすると長くなるため、3つに分けてそれぞれ詳細にお伝えできればと思います。

組織が大きくなればなるほど根本的な改善が難しくなるものかと思いますが、可能な限り体型化してみたということもあり社内外のコミュニケーションにおける課題や日々タスクに埋もれがちなチームの業務改善に頭を悩ませている方などに向けて書かせていただきました。

この様な方に少しでも参考になると嬉しいです。

◉ CS組織にて業務効率化や連携強化を行いたい
◉ 組織課題への解像度を上げたい
◉ 組織・チームの課題はなんとなくわかるがどう動けば良いか分からない
◉ 潜在的な課題の洗い出し、恒久的な業務を見直したい
◉ テックタッチの実現に向けて準備をしたい

コミュニケーション戦略を推進することで得られること

「コミュニケーション戦略」と聞くと「ユーザーとのコミュニケーション改善」なイメージがありますが、ここでお伝えする内容は社内の業務効率化など、対社内におけるメリットについても触れております。

また、The Modelのようにプロセスを分業されている場合であれば推進するメリットは十分にあると感じます(組織体制やプロダクトにもよります)。
以下がユーザーと社内における主なメリットかと思います。

◉ 対ユーザー
1. 一貫したコミュニケーションの実現(カスタマージャーニーの構築など)
2. 適切な問い合わせ先への案内(窓口の整備など)※対社内も込み

◉ 対社内
3. 組織内の連携強化と業務効率化(共通課題の洗い出しと共有認知)
4. メンバーのもやもや解消(潜在的な課題の棚卸しと改善)
5. 方向性(ビジョン)の明確化・言語化

詳細は後述しますが、1を解消するために2〜5のプロセスを踏むイメージです。成熟したCS組織であるほど推進するメリットが多いと感じます。

コミュニケーション戦略が立ち上がったきっかけ

ヤプリの場合にはなりますが、テックタッチの実現の先駆けとして、よりユーザーの自走を促していくためにユーザーポータルサイト「Yappli Port」を立ち上げたことが、コミュニケーション戦略を立ち上げる大きなきっかけとなりました。ユーザーの体験価値を高めるために、まずは記事・資料・動画など社内に点在したコンテンツの集約と並行しながら進めています。

ユーザーポータルサイト「Yappli Port」

コミュニケーション戦略の全体像

以下がコミュニケーション戦略推進の主な手順となります。

◉ 課題の可視化
1. すべての業務フローと顧客タッチポイントの可視化
2. 各チームの業務詳細の共有と把握
3. 各チームの課題の可視化とコミュニケーション戦略の目的整理

◉ 組織課題の抽出
4. 各チームの潜在化した課題の洗い出し
5. チーム横断オフサイトの企画・実施
6. 注力フェーズの決定と次期に向けた計画

◉ 解決に向けてのアクション
7. 各チームの取り組みの明確化
8. 目標への落とし込みと実施
9. 振り返りの実施

「課題の可視化」「組織課題の抽出」「解決に向けてのアクション」の3つに大きく分類し、本記事では「課題の可視化」について詳しく触れていきます。以下がその手順となります。

1. すべての業務フローとタッチポイントの可視化

まずは現状の把握から。コミュニケーション戦略を推進していく上で「各チームとの共有認識をどれだけ作っていけるか」を最も重視しています。各チームの協力なしでは施策を進めることが極めて難しく、各々の取り組みを把握し少しでもディスカッションが円滑にしていくための準備を行います。

多少時間のかかることかもしれませんが、可視化したものがあることでコミュニケーション戦略を推進する上で大きな後押しとなります。

1-1. 末端業務の可視化

それぞれの役割の詳細は割愛しますが、ヤプリのカスタマーサクセス本部は以下の様に構成されています。

ヤプリの主な支援体制

各チームの業務の棚卸しを行うのは容易ではありませんが、それぞれのマネージャークラスに協力を仰ぐか、業務マニュアルなどのドキュメントを共有してもらい、転載する形で1つのシートにまとめていくのが良いでしょう。

1-2. タッチポイントの可視化と整理

今回、各業務の可視化はFigmaを用いて進めています。ここではツール選びも非常に重要です。Figmaよりも適したツールはあるかもしれませんが、私自身が使い慣れているということとコンポーネントを用いたかったためFigmaを採用しています。

まとめ方としては、横軸の上からクライアントのフェーズ、業務フロー、各チームの業務詳細、該当するチャネル・コンテンツとなります。このように可視化していくことで、「どの業務の中でどのようにユーザーにタッチしているか」という情報を洗い出すことができ、全体像をパッと見で把握することができます。

チームごとに可視化した業務フローとコンテンツ・チャネルの一部

1-3. 業務フェーズの整理と連結

可視化の手順として、まずは各部で管理している業務フローにおけるドキュメントを収集します。次に台紙(Figma)を各チームに展開し、それぞれ入力の協力を要請をします。

ポイントとしては、メールの送付や打ち合わせなど「ユーザーとタッチしている業務がどれか」をわかるようにすること(上記画像の青字の部分)と、各業務フローに関する詳細なマニュアルがある場合はテキストリンクでドキュメントを貼ってもらうことです。そうすることで、各タッチポイントと業務詳細を漏れなく台紙に反映することができます。

次に一貫したコミュニケーションを実現するための準備として、各部の業務フローをつなぎ合わせます。セールス、ディレクター、カスタマーサクセスといったように、クライアントは一定にもかかわらず、社内の担当は順に変わってしまうため、前後の体制と取り組みを把握していくだけでもコミュニケーションは十分改善できるかと思います。

加えて、それぞれのフェーズを連結することで各々のチームで引き継ぎをどう進めるべきかやSFAツールを用いるなどで顧客情報をどう効率的に蓄積していくべきかを考えるきっかけを作ることもできるため、CS Ops(カスタマーサクセス オペレーション)の観点でもメリットがあると言えます。

部内の業務フロー全体像

1-4. コンテンツ・チャネルの棚卸し

社内に点在する現状のチャネル・コンテンツの棚卸しを行います。おそらくユーザーオンボーディングを行うだけでも、様々なチャネルをユーザーに案内しているケースは多いのではないでしょうか。

チャネル軸の代表的なものとしては、メール・サポートサイトやサービスサイト・ポータルサイト・プロダクトの管理画面・noteの様な他のメディアなどがあげられ、またコンテンツ軸では、記事・資料・動画・メルマガなどがあげられると思います。その際、対面やオンラインでの打ち合わせについても含められると直良いかと思います。

2. 各チームの業務詳細の共有と把握

2-1. 可視化した末端業務の詳細共有

同じ部門とはいえど、隣のチームの役割については理解しているつもりでも実際にクライアントに「何をどのように案内しているか」までは解像度が高くない場合もあり、定期的にすり合わせをする必要があります。ユーザーとのタッチポイントとチャネル・コンテンツが一通り可視化されると、実際の業務やコンテンツの中身まで各々のチームの言葉で展開するように進め、チーム間の相互理解を促します。

2-2. 各チームの認識の統一

ここまでくると、入社歴に関係なく業務の詳細や自チームで考慮すべき点など、あらゆる気づきを得ることもできます。少々テクニカルかもしれませんが、ファシリテーター自身がいっその事ユーザーになりきり各々のチームの共有の場で不明な点についてヒアリングを行っていくとより解像度があがるためおすすめです。

会議体をどう設けていくかはいくつかパターンがあるかと思います。自身がファシリテーターとなるか、他の得意な方に依頼し各メンバーのハブとなってもらうパターン。もしくは、参加メンバーの視座や規模次第では各々自由に発言していくだけでも成立するかもしれません。組織体制や参加メンバーの性格などを考慮し、全員で発散しキャッチアップを行える環境を作っていくと良いでしょう。

2-3. 末端業務における課題の洗い出し

各チームにおける一通りの業務詳細の可視化と共有が完了したら、それぞれの課題の洗い出しを行い、次期に向けた準備・取り組みへと方向をシフトしていきます。2-2と並行して進めても良いかと思います。

もしヒアリングを行っていく中でファシリテーターと各々のチームとの間で知識量や経験の差で深ぼることが難しい場合は、冒頭でも言及した「チャネルの集約」などの観点(ファシリテーターの得意領域だと直良い)を取り入れられると、各チームの期待値コントロールをしながら進められるかと思います。

この「2. 各チームの業務詳細の共有と把握」のプロセスがうまくいくと組織内の連携強化が大きく前進するため、丁寧に取り組めれば組織が一つになり、取り組みそのものに価値が出てきます。

3. 各チームの課題の可視化とコミュニケーション戦略の目的整理

一通りの業務フローとタッチポイント、各チャネルや各チームにおける課題の洗い出しが完了したら、いよいよ「組織課題の抽出」に向けての準備を進めていきます。各業務フローにおける課題は想定よりも多く出る場合もあるため、どういったアプローチで改善していくかなどマイルストーンを作成していきます。以下の手順で進めるとよりスムーズかと思います。

3-1. 各チームにおける課題の抽出

各チームに協力を仰ぎ、スプレッドシートなどを用いて洗い出していきます。部門もしくはチーム、対応するフェーズ、業務フロー、課題の詳細、優先度(3段階くらいがおすすめ)、解決する上で連携が必要なチーム、といった具合で各項目が埋められると良いかと思います。

※ 各内容は記事用に作成したイメージです

3-2. 各チームの課題の優先順位づけ

優先度は各部門でさまざまなケースもあるため判断軸を設け絞り込みを行っていきます。ここでは「緊急度と来期中に解決が可能か」といった調子で優先度の軸を設けることにしました。まずは「解決に向けて動きだすこと」が重要でもあるため緊急度の高いものやリソースの確保などを踏まえながらのOKRへの落とし込みを行っていくと良いでしょう。参考までにヤプリでは「1年以内で解決できるもの」に重きを置くことにしましたが、単に「事業インパクトの高さ」といった軸でも良いかもしれません。

3-3. 課題の分類

洗い出しを行った結果処理ができなくなってしまうことを避けるためにも多くの課題が出てくることを想定し、課題の大分類を2〜3つ設けておくのもおすすめです。ここでは「業務効率化軸」と「顧客の自走化軸」の2つの大分類にそれぞれシートを分けて洗い出しを行いました。

優先度の判断軸と課題の大分類については組織体制やミッション、フェーズによってあらかじめ言語化を進めておくと良いでしょう。また「業務効率化」と「顧客の自走化」に関する組織の課題はCS Ops(カスタマーサクセスオペレーション)とカスタマーマーケティングに大きく関係してくるため、洗い出しと分類が完了した暁には各々のチームに共有しておくのもおすすめです。

3-4. コミュニケーション戦略の方向性(ビジョン・目的)の決定

ここまで可視化ができてくると、組織全体での共通の課題が見えてくるはずです。優先度の最も高い課題と共通課題を抽出し、コミュニケーション戦略自体の方向性の軸(カスタマージャーニーにおいて、どのフェーズから注力していくべきかなど)を決めていきましょう。

参考までにヤプリでは、業務効率化と顧客の自走化ともに主にオンボーディングフェーズに改善点が集中していることや、さまざまなCSにおける観点も考慮しながら、ユーザー目線を考慮しカスタマージャーニーの頭から順を追って改善していくことに着目し、オンボーディングフェーズにおける体験価値の向上をビジョンや目的に置くことにしました。

最後に

《課題の可視化編》では、コミュニケーション戦略を推進する上でのメリットや全体像、可視化の重要性についてお伝えさせていただきました。社内ステークホルダーが多い分、常に足並みを揃えながらの進行が求められるため、OKRなどの期限を設ける場合は、取り組みがブレないように進行する必要があります。そのためにもあえて可視化を行っていくことが重要であると感じます。ドキュメントもなるべく一つにまとめ、いつ何を見れば良いかワンストップで理解できるように整理しておくと良いでしょう。

可視化がうまく進められると「何かが良くなるかも」といった具合で各メンバーの期待感を醸成できるのも大きなメリットの一つと感じます。メンバーの期待値コントロールを行うことも推進する上で考慮したいところです。

また、うまくまとめようとしなくとも、組織全体による目線合わせなど連携強化の側面でプロセスの中でたくさんの気づきもあるため取り組み自体に価値が出てきます。多少の泥臭さも必要かと思います。途中で舵を切りながら柔軟に行っていくくらいで進められると、取り組みとしてより良いものになるかと思います。

次編の《組織課題の抽出編》では、課題の可視化編で洗い出した課題に対して、組織全体でどう議論を進めていくかなど、オフサイトミーティングの企画や進行についてお伝えさせていただこうと思います。

少々文字文字しくなりましたが、なるべくビジュアルも加えながらできる限りわかりやすくお届けできるよう心がけたいと思います。ここまで読んでくださりありがとうございました。

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