サムネ_加工済み_

アメリカの株式投資型クラウドファンディングとは

こんにちは。
マシューです。

さて前回に続き、海外の株式投資型クラウドファンディングに関する情報をお伝えしたいと思います。
海外の株式投資型クラウドファンディングの情報をお伝えすることで、「海外では株式投資型クラウドファンディングが日本以上に資金調達の選択肢として認識され、有効活用されている」ことを実感いただけるかと思います。

今回は、アメリカの株式投資型クラウドファンディングの情報をお伝えします。

※記事の中では、1ドル=110円で換算しています。

|アメリカの株式投資型クラウドファンディングについて

上記は2016年に公表された「アメリカ、イギリスにおける株式投資型クラウドファンディングを通じた調達額の予想推移」になります。
2020年には両国で約1兆2,100億円を調達すると予測されています。
調達額が右肩上がりに推移していることに加え、株式投資型クラウドファンディング先進国であるイギリス以上にアメリカでは株式投資型クラウドファンディングが活用されていることがわかります。

|株式投資型クラウドファンディングに関する制度

アメリカでは、中小企業やベンチャー企業の資金調達を促進する目的で、オバマ政権時代の2012年4月5日にJOBS(The Jumpstart Our Business Startups)法が制定されました。

JOBS法制定の背景としては、アメリカにおけるIPOの減少が挙げられます。(詳細は下図)

JOBS法によって、企業、投資家それぞれに対して以下のルールが新たに設けられました。(JOBS法の中でも「クラウドファンディング条項」と呼ばれる条項のみに言及。)

【調達する企業】
・株式投資型クラウドファンディングで資金調達を行う場合、12ヶ月の期間中に約1億1,770万円までSEC*への登録をせずに資金調達を行うことが可能。
 ※SEC=Securities and Exchange Commission:アメリカ証券取引委員会

(本条項が制定されるまでは、基本的にSECに対して登録を行わない限り、株式取得の勧誘を行うことができなかった。)

【投資家】
・投資家の条件に応じて年間投資可能額を制限。

①年収/純資産額の両方が約1,100万円以上の場合
年収/純資産額のいずれか少ない方の10%が年間投資可能額となる。
※ただし、12ヶ月の期間中に約1,100万円を超える投資はできない。

②その他
年収/純資産額のいずれか少ない方の5%、もしくは約22万円の多い方が年間投資可能額となる。

上記ルールを見ると、投資家に対するルールがイギリス、アメリカ、日本それぞれ異なっていることがわかります。
その違いを簡単にまとめてみました。

【各国の制度の特徴】
「イギリス」
・条件をつけることで投資可能な投資家を限定する。

「アメリカ」
・誰でも投資はできるが、年間投資可能額に上限がある。

「日本」
・1社につき年間50万円まで投資が可能。

イギリスは投資家を制限している一方で、アメリカは上限額を設けているので、ルールは異なります。
また、アメリカと日本は上限を設定している点では類似していますが、アメリカが12ヶ月間の投資の上限に対して、日本は会社ごとに上限を設定しているので、似て非なるものです。

また、アメリカでは中小企業やベンチャー企業の資金調達に関する規制をより一層緩和しようという動きがあり、JOBS法改正の機運が高まっています。
JOBS法の改正によって以下の変更が想定されます。
・企業の調達額上限の変更、廃止
・投資家の年間投資可能額上限の変更、廃止

|株式投資型クラウドファンディング事業を行う事業者3選

1. AngelList(エンジェルリスト)

■設立
2010年1月

■2018年調達社数
1,133社(内訳は以下)
アメリカ:920社
EU:73社
カナダ:67社
インド:53社

■特徴
・ポートフォリオを公開している投資家が4万人以上いる。
→投資家が自分の投資実績を公開し、企業は実名で公開することで、双方のマッチングを図る。
・シンジケート投資が中心。
→有名なエンジェルが投資している企業に便乗投資することができる。
・Opendoor(オープンドア:不動産の売買)、LIME(ライム:電動スクーター、バイクのシェアリング)等23社のユニコーンが当社のポートフォリオにある。
・ベンチャー投資だけではなく、人材採用サービスとしても広く利用されている。
(企業は無料で掲載できるため、2018年には45,000社が求人を掲載)
・株式投資型クラウドファンディング事業を行う「Republic」はAngelListからのスピンアウト。

2. CircleUP(サークルアップ)

■設立
2012年4月

■累計調達社数
299社(2019年5月現在)

■累計調達額
約429億円(2019年5月現在)

■特徴
・消費財業界に特化している。
・ターゲットは年商約110円〜約16.5億円、目標調達額約1.1億円〜約11億円の企業。
・投資家の登録ハードルは高く、純資産約1,000万円以上、適格テスト合格が必須。
・株式による調達以外に、融資事業も行っている。

3. SeedInvest(シードインベスト)

■設立
2011年5月

■累計調達社数
約150社(2019年5月現在)

■登録投資家数
約25万人(2019年5月現在)

■累計調達額
約165億円(2019年5月現在)

■特徴
・資金調達にかかる期間は平均30日〜60日。
・資金調達の平均額は約6,776万円。
・投資家は認定投資家、非認定投資家に分類され、それによって投資できる会社、投資方法が変わる。
・2018年10月に、P2P決済などを手がける「Circle」による買収に合意した。

※各サービスのホームページを参照。

|最後に

イギリスだけではなくアメリカにおいても、株式投資型クラウドファンディングで調達したベンチャー企業からユニコーン企業が多数登場しています。

将来的には日本の株式投資型クラウドファンディングで資金調達した会社からユニコーン企業が登場することを期待していますし、登場するための土壌作りを進めたいと思います。



今後も資金調達に関する情報等、読んでいただける方の役に立てる情報を定期的に発信していきます。

次回もご期待下さい!

参照:
Ivanov, Vladimir, and Anzhela Knyazeva, U.S. securities-based
crowdfunding under Title III of the JOBS Act, (2017)
https://www.sec.gov/dera/staff-papers/whitepapers/RegCF_WhitePaper.pdf

大和総研「米国のIPOに関わる規制見直しの動き」
https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/20180302_012800.pdf

【5月13日14時30分更新】
「UberやAirbnbといった有名スタートアップも株式投資型CFで資金調達を行っています。」と記載したが、ソースが確認できなかったため該当箇所を削除。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?