見出し画像

リモートワークと週休3日制の浸透がもたらすオフィス需要の変化へのインパクト

新たな都市の要件に影響する要素とは

私は、以前のnoteで、そろそろ新たな都市の要件定義が必要だと書きました。今回は、その要件をもう少し深堀りしてみたいと思います。

都市とは、人々の生活を実現する手段(ツール)だとした場合、人々がこれからどのような生活を送っていくのかを定義できなければ、新たな都市の在り方をデザインすることはできません。
人が今後、実際に何をするのかは、もちろん人によって異なりますが、ここでの議論のポイントは、今後、人がいる場所と時間に大きな変化があるのではないかということです。
仮説としては、人々がオフィスビル群のある、いわゆるオフィス街に行くことが今よりだいぶ減るのではないかということです。人によっては『何を今更、そんなこと改めて言う必要もなく、すでにそうなっているではないか』という方もいらっしゃるかもしれませんが、私が考えているのは、そのレベルがさらに高まるのではないかということです。
そう考える理由には、以下の二つの要素が影響しています。
1、リモートワーク
2、週休3日制
次に、それぞれの要素について考えていきます。

リモートワーク

このリモートワークというのは、すでに多くの人が実践し、個人や企業によって、その実践度は大小異なるとは思いますが、割と多くの方が何かしらの形でリモートワークを取り入れているのではないでしょうか。
私は過去3年ほど、ほぼ完全にリモートワークになっています。リモートワークが普及したのは、やはりパンデミックの影響が大きいのは間違いないと思いますが、パンデミック禍がすでに3年続いたことを考えると、リモートワークというスタイルは、すでに社会の中で一つの文化として確立したのではないでしょうか。3年という月日は、何か新しいライフスタイルを生み出し、定着させるのに十分な長さであったと考えます。もはやパンデミックが終わる、終わらないに限らず、リモートワークというスタイルは、私たちが現代社会で暮らすうえでのれっきとした一つの選択肢になっています。
このリモートワークが意味するところは、裏を返せば、会社という場所に行かないということです。端的に言えばオフィスビル等の執務空間へ訪問する回数が減ることを意味します。それは誰でも分かる話だと思いますが、中長期的に考えれば、都市を構成する要素として比較的に大きな存在のオフィスビル群の需要は減少する方向に行くということが素直な見方だと思います。今後そのトレンドがどこまで進むのか、その割合は注意深く読み解いていく必要があると考えます。
また今後、このトレンドの割合についても詳細に研究していきたいと思います。

週休3日制

次に週休3日についてです。これは、あまり都市の在り方や、都市計画などの会話のなかで言及されることが無いテーマだと思いますが、私は、パンデミックの前から注目しているテーマです。
週休3日を検討したり、実践したりする企業のニュースは、過去数年にも度々目にするところではありましたが、ここ最近も日に日に目にすることが増えています。
「働き方改革」等と言われて久しいですが、私がこの週休3日に注目している理由は、先ほどのリモートワークの進展にあります。
私自身がそうなのですが、パンデミック以前に比べて、通勤時間が大幅に減っています。私の家から都心のオフィスまでは、地下鉄で1本で、電車に乗っている時間は30分くらいなものでしたが、それでも家から駅まで約10分ほど歩き、オフィスの最寄りの駅からオフィスのフロアまで10分ほど、オフィスについてトイレに言ったり、コーヒーを買ったり、なんだかんだでやはり通勤に関しては1時間程度は掛かっていました。往復では2時間になります。
以前は週5日出勤していたことを考えると、すでにこの削減時間だけでも2時間×5日で10時間になります。10時間といえば1日分の十分な労働時間を賄えてしまう量です。
削減時間は、それだけではありません。以前は自社のオフィスから、お客様先のオフィスに移動したり、あるいは社内でも会議室に移動したり、作業時間や実際に会議している時間以外に、物理的な移動に関して、やはり一日に少なくとも1時間は平均してあったのではないかと思います。実際はもっとあったかもしれません。この分の時間も大きく削減されています。
よって、おそらくパンデミック以前に実際に働いていた時間の量は、リモートワーク環境でいえば、週4日勤務すれば十分に賄えているはずです。
感覚的にそのように捉えている人は実際、結構多いのではないでしょうか。

オフィス需要の変質

ここから、上記で示した「リモートワーク」と「週休3日制」という要素を掛け合わせて論じてみます。
これから、仮に週休3日の世の中が来た場合、裏を返せば、週4日勤務ということです。仮に現在、完全出社の人だとした場合、オフィスを必要とする日数は今の4/5になります。すなわち週に4日間出社。仮に現在50%くらい出社という人がいたら、4日の半分なので、2日間出社。
ここでは、完全リモートというと、ある一部の人だけですよね、と思われる方も多いと思いますので、今現在、出社が50%くらいの人が多い世の中になると想定しましょう。週休3日なので、週4日勤務の人が50%の出社が求められる場合は、先に書いた通り、週に2日間オフィスが必要になります。
この状況をリアルに想像した場合、これまでの環境とだいぶ異なるという印象を持たれるのではないでしょうか。現在存在するオフィスビルというのが今後、週7日のうち、実際には週2日だけ使われるために存在するというものになるということです。極端な言い方を敢えてすると、それ以外の日は、空(カラ)の箱が5日存在することになります。
敢えて、クリティカルシンキング的に論じていますが、そのような状態に仮になるとしたら、都市を構成する要素として当たり前のようにイメージされていたオフィスビル群というものは、今のイメージのままで計画して良いのでしょうか。
もちろん、2023年現在では『オフィス空間は、イノベーティブな創造の場として必要不可欠だ』、『オフィス空間無くして、組織コミュニティは維持できない』、『海外でも、やはりオフィス回帰が進んでいる』というような声があるのは事実です。そのことに全く異論はありません。しかしながら、それらのこと自体が、オフィスの需要に変化が生じてくる可能性があることを否定することには直結しません。
都市計画や街づくりに関係する専門家は、リモートワークの進展や週休3日などがもたらす都市空間への影響については、さらに深く議論をする必要があると考えます。
このことは、不動産業に影響があるとか、そういうレベルではなく、建設業や設備産業、エネルギー・ユーティリティ産業、交通産業等へも波及する話です。そのことは、また別途「都市の非物質化」というテーマで、いつか書きたいと思います。

執務スペースから遊び場への転用

ここまで読むと、私がオフィス空間がいらないという主張がしたいように思われるかもしれませんが、決してそういうことを書きたいのではありません。むしろ私は都心のオフィスは働きやすくて好きな方です。
最近、私は都心に出てオフィスのあるエリアに出かけるのは、何かしらの懇親会や会食等の機会で出ていくことが多くなりました。働きに出るというよりも、飲みに行くエリアになりつつあります。
オフィス空間に行く場合も、少し特別なワークショップ等をやる場合や、動画の撮影などに行くような機会も多いです。
その代わり、単純な作業のためや会議のためにオフィスに行くことは、ほとんどありません。
前段で、オフィス需要が仮に週のうち2日間だけの世の中になると書きました。では、残りの5日間は、その箱は何に使うのでしょうか。実際に需要が2/7になるのであれば、建物の容積も2/7になっても良いとは思いますが、現在建っているビルをわざわざ2/7に減築するのも非現実的だと思うので、何かしら違う用途に転用したほうが良い気もします。
週休3日になって、余暇の時間が増えたりするのであれば、街には、もっと遊んだり、楽しんだりするような施設や用途の空間が必要になるのだと想像します。

リアル都市空間は、より体験価値の高さが求められるように

私は日頃はオンライン会議の数が多く、実態としてはオンライン空間にいることが長いです。最近では仕事柄、たまにメタバースの仮想空間に入ることも増えてきましたが、いずれにせよパンデミックの前に比べてフィジカルなリアル空間で活動するというよりも、オンライン空間側で人と会話していることが増えています。
コンサルタントという仕事が比較的にオンラインでも仕事ができてしまう職業だからではありますが、わざわざリアルに移動をして都心に行くのは、余程何かオンラインでは実現できない特別な事でないと、なかなか行くモチベーションは生まれません。これは生産活動におけるコスト面の合理性が理由です。よってリアルな空間、実際の都市空間は、パンデミック以前にも増して、相対的に体験価値の高い場を提供できなければ、人々は来てくれなくなっていると考えられます。体験価値の高い場とは何か、それについても今後研究していきたいと思いますが、間違いなくこのパンデミックによって都市空間には変質が求められています。その新たな都市の在り方について今後もこのnoteで研究を続けていきたいと思います。
ここまで読んでいただいた方、誠にありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?