見出し画像

僕が「価値共創」というキーワードに魅力を感じるわけ

こんにちは。

ビジネス系の大学院での学ぶことによって、福祉業界以外の知見に触れ、その融合によって新たな価値を生み出せるのではないかと考えて進学しました。

越境学習ですね。

最近経営学の分野で構築されてきた理論と、福祉業界の中で感じていた感覚がとてもシンクロする場面が多く、個人的にはとても新鮮な驚きを感じています。

そういったキーワードを言語化していく作業を繰り返しています。

ソーシャルワーカーの新たな職域を開発していくヒントになるのではないか。
そして大きな意味で社会をより良い形に変えていくヒントになるのではないかと感じています。


サービスドミナントロジックと価値共創


価値共創がマーケティングをはじめ、さまざまな場面で語られるようになってきました。

価値共創はサービスドミナントロジックの中心概念の一つと言われています。

価値共創とは、ビジネス界隈で言われている表現では、顧客と企業がともに何かを作り出すというニュアンスで。
多くは顧客が製品開発に関わったり、サービス利用者としてその空間作りに参加する形で実現されています。
SNSなんかがわかりやすいですよね。
Facebookって利用者いないと、まったく意味ない代物です。

ただそれだけにとどまらず、もう少し広い意味で価値共創という言葉は表現されるべきだと感じています。

それに対して2004年にサービスドミナントロジックの理論を提唱したVargo and Luschが示唆に富んだ視点を提供してくれています。



サービスドミナントロジックとは

2004年にVargo and Luschによって提唱されました。

それまでの、基本企業が何かを生産したモノ(グッズ)を消費者に販売したり、双方が取引したりする形から進化し、モノの交換を含めてすべてのやりとりされるコトを「サービス」と定義しました。

このサービスも、いわゆるサービス業でお金をはらって得るもの(家事代行とか飲食での接客とか)を指すのではなく、もう少し上位概念ものを表現しています。

サービスドミナントロジックとは、この価値共創の視点から、マーケティングなどを捉えなおす考え方です。

このサービスという言葉について、サービスドミナントロジックを提唱したVargo and Luschは2008年に新たな定義を出しており。
サービスとは「他者あるいは自身の便益のために、行為、プロセス、パフォーマンスを通じて、専門化されたコンピテンスを応用することである」と述べています。

つまり、他者に対して何かを行う「プロセス」や「行為」自身をさしてサービスと表現しています。
専門化されたコンピテンスを応用とは、その人にしかできないモノを他者に対して行うという意味でしょう。

お金を媒介にして、「1時間3000円として取引されるマッサージ」というニュアンスではなく、、、です。

これにより、上述のVargo and Luschは、交換により生み出される価値は、常に売り手と買い手によって共創されると述べています。

(僕個人としては、セルフヘルプグループの存在であったり、当事者研究とかの取り組みが、これに非常に類似するのではないかという仮説を立てています)



福祉分野の価値創造

このサービスドミナントロジックをそのまま、これまで活動していた福祉の分野に当てはめてみると。

リワークの支援をしている施設Aがあったとして。
この場合の生産者側は施設Aであり、消費者は利用者Bさんということになるのでしょうが。
ある側面ではリワークで復職する先の企業Cも消費者の立場かもしれないですね。

施設Aで利用者に対してリワークのサポートをします。
それを受けた利用者Bさんがいて。
また復職を受け入れたり、利用者Bさんに働きかけたり、施設Aと連携した企業Cがいて。


ここでどんな価値共創がされているかと考えてみると。

施設Aはリワークのサポートという価値を利用者Bさん企業Cに提供してるのでわかりやすいですが。
逆に利用者B、企業Cと関わることで、施設Aは収益を得るし、職員も経験値を得ています。

利用者Bはサポートを受ける側なので、何かしらを得ている立場になりますが。
でもただ一方的に受け取る側なだけではなく、施設Aに経験値をあたえ、また他の利用者への情報を与え、企業Cにも復職することで被雇用者としての価値を提供しています。

企業Cは、ある側面では施設Aからサポートを受ける側であり、また利用者Bさんをサポートする側でもあります。
ただそのやり取りの中で、関わる社員の経験値が得られるのと、仮にBさんが復職したとして多様な社員が働ける職場環境というメリットを得ることができます。

これだけをとってみても、非常にインタラクティブ(双方向)なやり取りがなされていることがわかります。


「利用者」が価値共創する(している)

繰り返しですが、Vargo and Luschは、
(あ、ここまで書いてきてあれですけど、人物名ですね、アメリカ人研究者のVargoさんとLuschさんは、)

「顧客は常に価値の共創者である」

という前提条件を述べています。

障害者福祉サービスにおいても、介護サービスにおいても、それぞれ法制度として明確化され、一つ一つのサービスが分割されて商取引できる形に制度化されてきました。

ある側面では、コミュニティの形骸化を危惧する意見も聞かれ、確かにその制度のはざまに埋もれる人たちをすくい切れていなくて、課題も多いのは事実です。

ただそうやって多くのプレイヤーが関わることで、価値共創が生み出される素地ができていると感じました。


僕自身がピアスタッフ、ピアサポートとかに無限の可能性を感じていて、その価値についてもう少し明確化できるといいなと常に考えているわけですが。
利用者側に立つ人が生み出す価値、サービスの受け手側が生み出す価値があると思っていて。
この共創価値という言葉には、そんな未来を切り開く可能性を感じています。

福祉サービスの受け手側の存在が生み出す価値をもっと言語化していきたいと思っていますし。
それによって双方向の価値共創も明確になっていくのかもと考えています。


今日はこれくらいで、ありがとうございます。

(参考文献↓)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?