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一生懸命やれば良いというわけじゃない│回想記8

10年くらい前に古書店を運営しようと奮闘したことを、自分の経緯としてまとめることを目的とした自分語り。8回目になりました(長い)。

さて、前回は、ネット古書店として品数を増やしていったけれど、あまりにも反応がないので、実店舗販売の道を検討した……という話でした。

当時、参加していた古書のポータルサイト「スーパー源氏」さんの伝手で、神田神保町の三省堂書店さんで開催される古書市へ出店させていただくことに。

初の対面販売。勝手も分からないまま、入念に準備を進めます。正直、これまで、父とこんなに共同作業をしたことは無いんじゃないか……というくらい、準備しました。

神田神保町といえば、世界一の「本の街」。祖父が集めた、いかにもマニアックな本も、ここなら必要としてくれる方に出会えるかもしれない。

1冊1冊丁寧にグラシン紙に包み、戦中の本とは思えないような見栄えに整えます。(そこが重要なのかは、正直、謎ですが……)

在庫管理もしっかりできるよう、手作りで「スリップ(※ 以下のサイト参照)」も作りました。

そんな感じで、久しぶりに親子揃って徹夜続きで準備を進め、満を持して立ち向かった神田神保町。初日の様子を当時のFacebook記事に残してありました。(友達限定公開だったので、転記しておきます。Facebookでつながっている方は、URLから見られるかも?)

2012年8月29日のFacebook投稿

不夜城続きで挑んだ「夏の古書市」の初日が終わった。こういうイベントは初日が最も盛り上がるらしい。光栄なことに、初日の店番を担当できて、慣れない手つきでレジ打ちをしてきた。

たくさんの人にお越しいただいて、結構賑わった(古書市だから静かだけど…)。初日にして、売上目標の半分以上を達成したお店もあるくらいだった。

さて、我が店舗の結果はいかに。



【結果】
売り上げ冊数:0



えっ…!? そ、そんな、BAKAな…。最も賑わう初日に1冊も売れない(驚愕)。過去最低新記録を堂々と樹立するという奇跡が。気合いを入れてバッターボックスに立ったものの、フルスウィングで空振りして、バットが吹っ飛ぶくらいの勢いだ。

この結果には(株)三省堂書店の親分もビックリ(笑)。我が店舗に置いてある本は、希少価値の高い本も多く、結果的に相場も安くはない。ただ、神田神保町という世界一の古書街では、相場が高いからといって売れないというワケではないので、三省堂書店の親分も期待していた部分もあったようだ。(相場が高い=値段設定が高いということではない。)

実際、他の店舗でも、高額商品がちゃんと売れている。神田神保町という場所はすごいところだ…。

…で、今回、店番をやって感じたのが、普通の小説や特に研究書の類は売れず、推理小説、SF小説などが多く売れるという印象。レジ打ちをしながら、売れる本のジャンルを我が家の蔵書の中で見たことがないなぁ…という感じだった。

もちろん、我が店舗にあるのは、小説か研究書。小説も相当古いので、作家に関する研究書として扱われるような感じ。もともとインターネットでもあまり売れない感じだったので、今回、神田神保町で店頭販売をすると企画したのだけれども、空振りだったようだ。


例えが適切かどうかわからないけど、車で言うと、フェラーリとかポルシェ、アウディなどの高級車が売れる町で、零細ディーラーが突然中古車販売を始めて、光岡自動車のオロチを売り出したみたいな感じ。

見た感じで誰でもオロチはすごい車だね!とわかるので、「これって、スゴイんだよね?」と見てみて「やっぱり、すごいんだなぁ」と思い、じゃあ自分の車にするかどうかというと、う~~ん…みたいな感じ。フェラーリとかポルシェならいいけど、オロチはちょっと好みが違うかなぁ…的な。…で、この地域では、オロチ好きの人なら、すでに持っているという感じなんだろうなぁ…という印象だ。


い、いずれにせよ、作戦変更が必要だ。今回、いい勉強になったので良かったけれども、一番致命的な問題は、「売れるワケがない!」とネガティブ思考になっていた親父の予想が的中してしまって、「言った通りじゃねぇか」みたいな感じで、マイナス方向の自信が筋金入りに…というか、筋金をコンクリートで固めたくらい強固なものになってしまったということだ。

まぁ、でも、もはや「売る」という発想から根本的に切り替えた方がいいかもしれない気もする。あまり「売る」ことに執着すると、自ずと値段を下げるだけみたいな方向へ進んでしまうから。

いや~、それにしても、ホント、修行は続きます…。

https://www.facebook.com/photo?fbid=259866874133277&set=a.167186606734638

ぎゃふん。ちなみに、初日が0で、そのあと売れたかというと、なんと期間中、1冊も売れないという事態が発生しました。

おぉぉぉ……。これは、いろいろ考えねば……ということで、情報発信とかそういう話の前に、そもそも商売の方法を勉強しなければいけないのでは……という、根本的なところに振り返ることに。

甲陽書房を立て直そう……と考えるまでは、会社員として生活しておりましたので、商売に疎いというか、やっぱり会社という大きな存在に支えられてきたということを実感した感じでもあります。

一生懸命やれば良いというわけじゃないんですね。

そして、ここからまた、別の方向で迷走がはじまります。それはまた次回に。

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