政治家の「重く受け止める」文化史
先日、ジャーナリストの江川紹子さんがこんなツイートをしておられました。
確かによく聞く言い回しです。政治や行政の世界では、不祥事にとどまらずあらゆる事象について言及する際に聞かれる言葉でもあります。
そこで、歴史を紐解いてみたら、使われ始めた初期のころには「重く受け止めるってなんぞや」と国会の場で政治家らがツッコミを入れていたことが判明しました。
今回は、国会での発言に限って調べました(https://kokkai.ndl.go.jp/#/)。この国会会議検索システムは第1回国会(昭和22年5月)から現在までの会議録が閲覧できます。「重く受け止め」で検索した結果の概略を以下記します。
重く受け止める文化の歴史は意外にも浅く、平成に入ってからです。初出は平成元年、参議院逓信委員会。共産党の山中郁子議員が、NHKの予算や当時の天皇報道の在り方などをめぐった質疑で「テレビ人をはじめ電波に携わる人たちは...二万通にのぼる抗議電話を重く受け止めてほしい...」などとする『新放送文化』(NHKの季刊誌)の記事を引用しています。
次はというと、4年後です。平成5年、衆議院建設委員会で新進党・平田米男議員。当時政財界で蔓延していたゼネコン汚職に絡んだ質疑。建設省の委員に対し「『建設省としては、今回の事柄を重く受け止め、国民の信頼の回復に努めて参りたい』。こういうふうにおっしゃっております...では、具体的に何をされたのかということになりますと、今の御説明でもどうも他人任せだなという感じが...」と追及しています。この平田氏の発言からは、行政側が「オモウケ」を国会の場以外では多用していた可能性も透けて見えます。
年1以下のペースだった「オモウケ」は、8年からは議決案の文中に盛り込まれるなどして加速度的に出現率が増えていきます。そして、「オモウケ」という言葉に切り込む質疑が登場します。平成11年の衆議院、沖縄及び北方問題に関する特別委員会、上原康助議員によるものです。長めに引用しますので画像で。
発言の内容には触れませんが、「オモウケとはどういうふうに受け止めているのか」という疑念は、いまにも通ずるところがあるようにも思います。
そして現代。「オモウケ」の活躍の場は増え、令和4年だけで197の会議録がヒットします。出世しましたね。ざっとみて与党側や事務方が答弁でかわす際に頻出しています(実際には重く受け止めている、と思う。知らんけど)。
一方野党側も「重く受け止めてほしい」と要請する場面が多々ありました。どういうふうに受け止めてほしいのかという上原議員のツッコミが遠くから聞こえてきそうです。
総括すると「オモウケ」は国会の場では平成以降に登場。年々使用回数が増えています。数値化できる方がいらっしゃれば、調べていただくと何か見えてくるかもしれませんね。国会以外でも、報道陣による質問、行政内での使い方など様々ありますが、その受け止めに千鈞の重み、ありますか?あってほしいですね。
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