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poetry

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長文、一行詩、 Twitterに投稿した詩、駄作。ぜんぶ。
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2022年9月の記事一覧

晩夏の足音

晩夏の足音

唇が赤いのは
紅差し指を切ったから
眼玉が濡れているのは
夏蜜柑が沁みたから
だから大丈夫
大丈夫です

切れた鼻緒を直している間に
どうぞ、どうぞ
行ってください
寂しさの砂に埋もれぬよう
悲しみの川に流されぬよう
決して、振り向きません

息が苦しいのは
浴衣の帯を締め直したから
ぽたぽた滴が落ちるのは
雨が降ってきたから
だから大丈夫
大丈夫です

オレンジの君が泣いた

オレンジの君が泣いた

逆風の坂道を歩いて
裏切りの海を泳いで
オレンジの光を放つ
巧妙に傷を隠すから
舞台の上君だけ一人
疲弊してしまったね
寒いなら人間懐炉に
暑いなら雨乞い鳥に
叶わぬこの手は一体
何のために存在する
傷の深さを知らない
扉の錠は重いだろう
薄っぺらい願いです
君が笑える時を待つ
何年先であろうとも
その背が私の誇りだ