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#7話題のニュースをちょっと話せるように ~半導体製造企業最大手TSMCについて2~

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皆様は台湾にある世界最大の半導体受託製造企業・TSMCをご存知でしょうか。半導体のことを勉強するなら、そして半導体企業に投資するなら必ず知っておく必要のある会社です。23年10-12月期の決算報告をした際は、同社の株が9.79%上がっただけではなく、半導体関連企業の株が1%〜8%上昇しました。このように半導体業界に大きく影響のあるTSMCについて2回の放送に分けて話をさせていただきます。
私は半導体やAIとは無縁の会社に勤めている会社員ですが、昨今のAIブームや半導体関連企業の株高ブームに引っ張られ、ミーハー的にいろいろ調べてみました。
もちろん半導体関連株も購入しています。そんな方も多いのではないでしょうか。
半導体企業に興味がある方、投資に興味がある方の参考になればと思い、できるだけ専門用語を使わず、わかりやすい言葉でまとめたいと思います。
1回目の放送ではそもそもTSMCとはどんな会社なのかお話させていただいています。またお聞きになっていない方は概要欄にリンクを貼っておきますので、是非そちらからご視聴ください。

2回目の放送となる今回はTSMCの今後の展望について3つの観点でお話していきます。1つ目が4月18日に行われた決算発表の結果、2つ目が今後の業績見通し、3つ目が日本の熊本への工場建設についてです。

まず1つ目の決算発表の結果の件です。
同社は日本時間の4月18日午後3時に決算会見を開きました。今年1月から3月末までの3か月間の決算によりますと、売上は去年の同期間比16.5%増加の5926億台湾元、日本円でおよそ2兆8200億円となりました。
また、最終的な利益は8.9%増えて2254億台湾元、日本円でおよそ1兆700億円でした。そして営業利益率は驚異の42%でした。
TSMCは去年1年間の決算で売り上げが、14年ぶりに前の年を下回るなど、減収減益となっていましたが、今回は増収増益となりました。
今回の好決算の要因は、半導体の開発をめぐる競争が世界的に激しくなる中、生成AI向けなどの最先端の半導体の需要が拡大したためとのことです。
1回目の放送でもお話ししましたが、半導体は一つひとつの回路線幅が狭いほど、多くの回路を搭載できるため、半導体チップの集積度は性能の高さへと直結します。5nmや4nmさらには2nmなど高性能な半導体を生産可能とするのがTSMCの強みです。
その強みを活かし、高性能な半導体を必要とするHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)需要が増加するとともに、HPC向け半導体の売上構成比が第4四半期の同43%から第1四半期には同46%と比率を伸ばし業績を拡大させました。ちなみにHPCとは、他のコンピューターをはるかにしのぐ速度でデータを処理し、計算を実行できる機器などを指します。私たちが普段使用している平均的なデスクトップコンピューターは毎秒数十億の計算を実行できますが、HPCは1秒に数千兆の計算を実行することができるようです。この立役者は何といってもNVIDIAで、データセンター向けにAIの機械学習・音声認識・画像認識を効率的におこなう専用の機器の需要は旺盛ですし、今後もまだまだ伸びが期待されています。



では次に2つ目として今後の業績見通しについてお話させていただきます。
まずTSMC自身が今後の半導体業界の見通しをどう捉えているかといいますと、魏哲家(シーシーウェイ)CEOは決算発表後の記者会見で「AI技術はさらに複雑なAIモデルに適応できるよう、進化し続けており、それを支援するため、より高性能な半導体が必要になる」と述べ、AI向けの半導体の需要拡大は今後も続くという見方を示しました。
ただ足元の4-6月期の見立ては芳しくなく、スマートフォンやパソコン販売がなお弱いとして、今年の半導体市場の成長見通しを10%強の伸びとしていた予想を10%程度に下方修正したようです。特にスマートフォンについてはTSMCの売上の40%程度を占めますので非常に大きな影響ですね。また設備投資にかける金額についても前年並みと大きく投資をするという計画はないようです。
とはいえAI関連のデータセンターの需要は非常に強い見込みで今後の需要は大いに期待ができます。AIサーバー向け半導体は今年度売上高構成比の10%台前半を占める見通し。これは昨年の2倍以上の水準で、2028年には20%を超える見込みといわれています。

短期的には好調の見通しを出していないTSMCですが、長期的にみるとまだまだ拡大しそうな企業と言えます。そんなTSMCが日本の熊本をはじめ、国外への新たな工場建設をどんどん推し進めています。
最後に熊本への工場建設と、国外への工場進出の背景についても語っていきます。
知っている方も多いと思いますが、同社は2024年2月24日に熊本県菊陽町に建設した新たな半導体工場の開所式を行いました。皆さん、台湾の企業がなぜ日本の熊本に工場を建設したのか不思議ですよね。理由を3つに分けてお話しします。
まず一つ目は「日本政府からの多額の補助金」です。実は建設にかかる総投資額9800億円のうち4760億円を日本政府が補助しTSMCを誘致したのです。
日本政府は世界最大手のTSMCを誘致することで日本の半導体産業の活性化を狙ってるんですね。
2つ目は熊本の立地です。九州は“シリコンアイランド”と呼ばれる半導体関連産業の集積があります。九州全体でいうと約1000社の半導体関連企業があり、そのうち、200社が熊本県に集中しているそうです。また台湾まで直行便で2時間半という距離の近さも大きな要因です。
 3つ目は綺麗な水が豊富にあるということです。半導体生産には大量の綺麗な水が必要です。これは製造中に発生した微細なゴミの洗浄に使われます。実は台湾では2021年は台風が1度も上陸せず、多くのダムの貯水量は10%未満に下がったこともあったようです。台湾の経済成長率を高く維持するためには、半導体の増産が不可欠ですが、半導体工場は大量の水の消費を必要とします。熊本の綺麗な水を確保できる極めて良い環境とは、水源の100%が地下水によるもので、熊本の多くの河川、湖、湧き水などから豊富な水が供給されていることです。
「日本政府からの多額の補助金」「台湾からの距離も近く半導体サプライチェーンが完備されていること」「水資源が豊富に安定的にあること」この3つの利点を総合的に考慮すると、熊本への進出がベストの選択になった訳です。

今後も2027年の開所を目指して熊本第二工場の建設やアメリカのアリゾナ州での工場建設など積極的な生産設備の増加を計画しています。
これには最先端半導体だけでなく、自動車生産に必要な一般的な半導体の生産量も世界的に不足しているという現状への対策もあるようです。
現に日本で開所された第一の熊本工場で生産されるのは主に「22nm〜28nm」ということで最新の2nmや5nmという半導体と比較するとかなり性能が異なりますね。
このように最先端のAI向け半導体だけでなく、様々な需要に対応し、世界の半導体生産を一手に引き受けているTSMCの今後の動きにも注目ですね。


どうでしょうか。4月18日に決算報告を控えました台湾にある世界最大の半導体受託製造企業・TSMCと半導体業界に関しての知識が少しでも深まっていたら嬉しいです。1回目の放送ではTSMCがどんな会社なのかをお話しさせていただき、今回はTSMCの今後の展望についてお話ししました。
前回・今回の配信内容をあたかも自分で調べて知ったかのように会社や周囲の方に披露いただき、皆さんのコミュニケーションに少しでも貢献出来たらと思いお話をさせていただきました。
またスタンドエフエムでも本日の内容を音声放送しています。リンクを貼っておきますのでご興味ある方はご視聴ください。
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もしもう少しこんなこと知りたいけど、自分で調べるのが面倒だなというかたはコメントください。ミーハーな私が皆さんに代わってそれについても調べたいと思います。
これからも気になったニュースを素人視点で調べ、まとめた内容を皆さんに披露したいと思っていますので、気になるニュースがあればそれも併せてコメントで教えてください。
それでは今回はこれで失礼します。ありがとうございました。

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