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おすすめ本『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ著

今回のオススメの本は『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ著、作品社

~あらすじ~
 ウィリアム・ストーナーは、ミズーリ州の貧しい農家出身の青年。彼は農業を勉強するために、ミズーリ大学に進学する。しかし、彼をそこで引きつけたのは農業ではなく、文学だった。文学に夢中になった彼は、父の農場を継ぐことなく、そのまま大学に残った。そして数年後に大学の教師になる・・・

~読みどころなど~
 本好きの知人の紹介で読んだのですが、現時点で今年読んだ本のベストワンです。一人の人生を丹念に描いていて、人生の一コマ一コマに、物語を越えた真実が宿っています。特別ではない普通の人を描いているので、劇的な展開などはないですが、全然退屈しません。まるで朝の連続テレビ小説のように、一章ごとに読みどころとなるシーンが必ずあるからです。
 仕事に邁進したり、家庭でいざこざがあったりと、色々と苦労の多い人生を、ストーナー(STONER)は名前の通り、石(STONE)のように耐えていきます。どんなときも、彼は仕事に集中し、劇的なことなどほとんど起こらない人生を生きます。物語を読み終えたとき、人の一生を垣間見た気持ちになると同時に、ストーナーは幸せだったのだろうか、と深く考えてしまいます。と言うか、そもそも幸せとは何だろう、と考えさせられます。
 個人的には彼の一世一代の恋愛の場面が本当に美しくて好きでした。
 翻訳も格調高く、かつ読みやすいので、海外文学をあまり読まない人にもオススメできます。

~小ネタ~
 本書は、1965年に当時コロラド大学の教授だった作者によって、アメリカで出版されましたが、大きな反響は得ず、作者の死後はほぼ忘れられてしまったとのことです。それが、2006年以降に復刊され、徐々に人気を呼んでいったそうです。なぜ、いま世界で読まれるのか、この理由もいろいろと考察できそうです。

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