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ままならないから私とあなた【朝井リョウ】

私は2020年度入社の新入社員でした。
ちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大し、
「テレワーク」という働き方が始まりました。

便利になった反面、3年経った今でも一度も直接会ったことのない同期や、あまり話したことのない同僚•先輩がいます。

でも仕事の効率は上がり、残業時間は以前に比べて大幅に減ったそうです。


この本では、そんな「利便性」と「人との繋がり」をもう一度考えさせられます。

この本は2篇構成。
本音で話をすることでこそ「本当の絆」が生まれると信じる主人公、雄太が
その考えの対極にある人間関係のレンタルサービスで働く美女、芽衣と出会い、
自分と”先輩”の考えの違いを知る
「レンタル世界」

「効率」に特化した考えの薫子と、「無駄なものにこそ人のあたたかみや、個性的な要素がある」と考える雪子の、小学生時代〜社会人2年目までのそれぞれの人生と友情を描いた
「ままならないから私とあなた」

私は大学時代、軽音楽部でバンドを組んでいました。コピーバンドのみで、今も作詞や作曲はできません。それでも、バンドメンバー特有の空気感、演奏の癖、言葉では表せない何かがあって、それが大事な要素だと今でも思っています。

それは「人間らしさ」であり、長い時間を共有することでほんの少し形として現れてくるような、尊いものだと感じています。

「ままならないから私とあなた」には、上のような「人間らしさ」すらもAIで再現しようとする描写があります。

「人間らしさ」はその人の生き様みたいなもので、私がロックバンドのライブに足を運ぶのはそれを体で感じたいからです。

そんな私達の価値観も、技術の進歩に順応して変化しているのも事実です。
(ボーカロイドや打ち込み音楽などの台頭)

「人間らしさ」をAIが再現できるようになった時、私は今と同じことを言えるのか不安になりました。。。


「ままならないから私とあなた」
自分が大事にしたいと思うものと、その価値観が分かる心地いい作品です。
気になった方は是非一度拝読ください。

文春文庫より640円+tax

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