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ベトナム娘と1日デート【忘れられないひと、忘れられないもの #7】

ベトナム(ダナン、ホイアン)・2005年3月
ファーマー たれ(農業)


と、タイトルをつけてみたものの、残念ながらそれほどロマンチックな話ではない。

それは、今から十数年も前の話、まだベトナムのダナンが今のようにリゾート化される前の、単なる港町だったときの話になる。(と言っても最近のダナンを知らないのだけれど。)

当時一人でベトナムを縦断していた僕は、中部の町ホイアンのレストランで一人で夕食をとっていた。
次の日、夕方18:00発の夜行バスでホイアンを後にする予定だった僕は、この日がホイアン最後の夜だった。

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(世界遺産の町ホイアンの街並み)

この時、僕のテーブルからちょっと離れたところにベトナム人らしき女の子が立っていたのは知っていた。
ただ、それほど深く気に留めることもなく、夕食を続けていたのだが……

夕食も終わりかけたころ、突然その子が話かけてきた。
しかも、たどたどしくはあるけれど、それなりに上手な日本語で。

聞けば、彼女(レーちゃん)は日本のことが大好きで、日本語を勉強しているとのこと。この日はこのレストランにバイトの面接で来ていたようだったが、本当は日本語のガイドになりたいのだそう。そんな彼女から、思いがけない提案があった。

「日本語の勉強をしたいから、もしよかったらこの後少し付き合ってもらえない?」

この時、僕の心の中では、こんなやりとりが……

僕A:「そんなウマい話あるかな?」

僕B:「いやいや、どう考えても怪しいでしょ。」

僕A:「でもホントにそうならラッキーじゃない?」

僕B:「いやいやいや、ついて行ったらきっと、詐欺師の集団みたいなところに連れてかれて、賭博で負かされて大金要求されるとか、コワい兄ちゃんが出てきて身ぐるみ剥がされるとか、そんなオチだよ、きっと。」

しばしの葛藤ののち、結局……

彼女について行くことにした。(苦笑)


今でこそ僕は、海外で現地の若者たちと飲んだくれたりしているのだけれど(※)、当時の僕はまだ駆け出しの旅人で、正直なところ、現地の人たちから声をかけられると「だまされるんじゃないか」と常にビクビクしていたように思う。

※「海外で現地の若者と飲んだくれる件」については、以下の記事をご覧ください。
① 現地の若者たちと飲んだくれる!【だから旅は、やめられない #14】
② 現地の若者たちと飲んだくれる!part2 〜ミャンマー編〜【僕らの忘れられない旅 #7】


ということで、半分恐る恐るついて行った先は……

川沿いにある、こぢんまりとしたカフェの2階のテラス席だった。

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(昼間の川沿いの様子)

そこで僕らは、これまでの僕の旅や明日以降の旅の予定、彼女の家族、彼女がどれだけ日本を好きか、そして日本語のガイドになりたいけれどそれがどれだけ難しいのかなどたくさんの話をし、気づけば閉店の時間になっていた。
警戒していたコワい兄ちゃんは出てこず、そればかりか、話の成り行きで、次の日の夕方のバスの出発時間まで、彼女のバイクで隣のダナンの町を案内してもらえることになっていたのだった。


次の日、レーちゃんのバイクに乗っけてもらい、ダナンへ。

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ホイアン-ダナン間はバスで片道約1時間の道のり。
正確には覚えていないが、バイクだったので確実にそれ以上かかっていたはず。

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(当時のダナン、閑散としたビーチと無駄にだだっ広い道)

当時のダナンは、ホントに単なる港町で、多くの見どころのある町ではなく、観光地と言えばマーブルマウンテン(五行山)ぐらいだった。
マーブルマウンテンでは、たまたま旅行で来ていた日本人母娘の方と一緒になり、4人で廻った。

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(後列左がレーちゃん、前列左が筆者)

ダナンの町自体は見どころが少なかったが、市場を歩いていると売店のおばちゃんから彼女が声を掛けられ、
「今、おばちゃんが『あなたの旦那さんって日本人なの?』っておどろかれちゃった。」
とか、途中、バイクに乗った兄ちゃんから声を掛けられ、何やらしばらく話していたので、友達なのかと思っていたら、
「私、今、ナンパされちゃった。ベトナムの男の人は、他の男の人と一緒に歩いていてもナンパしてくるのよねぇ。」
とか、
「あなたは何故、時間のかかるバスで次の町に行くの?飛行機なら早いし快適だし楽なのに。」
などなど、他愛のないような会話が、案外楽しかったことを覚えている。

その後レーちゃんとは、また1時間以上かけてバイクでホイアンにまで送ってもらい、バスの出発の2時間ほど前に別れた……。


「えっ、この話、これで終わり?」


そう、これで終わり。

ここから始まるラブストーリーもなければ、感動的な再会話にもなりはしなかった。

後から考えると、結局僕は、最後まで彼女を完全には信用していなかったのかもしれないと思う。


それから僕はいくつかの旅を重ね、今では最低限のリスク管理ができれば(例えば命がとられるような危険がなければ)、「多少ぼったくられてもいいから、もっと現地の連中と楽しもう!」と思えるようになった。

レーちゃんとの話に大したオチはつかなかったが、彼女は今の僕の旅のスタイルを作る上で、大切で忘れらないひとだったと言える。

旅人は、旅をしながら、旅人として成長していくものなのかもしれない。

まぁ、いまだに、旅先でのロマンスは、ありませんがね……。

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