現地の若者たちと飲んだくれる!part2 〜ミャンマー編〜【僕らの忘れられない旅 #7】
ミャンマー・コータウン 2016年1月~2月
「現地の若者たちと飲んだくれる!part2 〜ミャンマー編〜」
ファーマー たれ(51・農業)
僕は仕事柄もあって、海外への旅は年に1回、期間は2週間程度ということが多い。
そんな僕にとって、すべての旅が忘れられない旅なのだが、中でも「やっちまった」系の事件が起きたときは特に印象に残っている。
僕は都会よりも田舎を、有名観光地よりも辺境や国境周辺を好むタイプである。
これはタイのラノーンという町から、ミャンマー最南端の町コータウンに国境を渡ったときの話である。
ここの国境は、タイ側の港で出国処理をして、海のようにだだっ広い河を、有料の乗り合いボートで渡り、途中の中州にあるチェックポイントでパスポートのコピーを見せ、ミャンマー側の港で入国処理をするという、少々複雑で渡り甲斐のある国境なのだが……
(まるで海のようにだだっ広い河)
(途中の中州にあるチェックポイント)
タイ出国時の乗り合いボート乗り場では、船頭たちが、映画に出てくるゾンビのようにウヨウヨと近寄って来て「乗れ乗れ攻撃」を仕掛けてくるし、ミャンマー入国時の港では、手ぐすね引いて待っている怪しい”自称・ガイド”たちの客引きの中をくぐり抜け、イミグレーションまでたどり着かねばならず、なかなかメンタルが鍛えられる国境でもある。
(向こうに見えるのがコータウンの町)
こんなヤツらの攻撃を何とかかわしつつ、ようやくミャンマーのイミグレーションにたどり着いた時、ちょっとした問題が発生した。
職員が「パスポートのコピーとビザ(※)のコピーを提出しろ!」と言うのだ。
実はパスポートのコピーは持っていたのだが、ビザのコピーまではとっていなかった。すると突然、最後までしつこく僕の後を付けてきたガイドの一人が、僕のパスポートを奪いとり、
「オレがコピーとってきてやるよ!」の一言。
驚いて職員の方を見ると「代わりにやってやれ」と言わんばかりの顔。仕方なく一緒にコピーを取りに行き、それのおかげで、無事ミャンマーへの入国を済ませることができたのだった。
この恩の押し売りが、この後の僕と怪しいガイド君との縁となった。
このガイド君、名前をタイガーと言う。その名前が本名なのかニックネームなのかはわからない。
押し売りとは言え、恩は恩である。ただ、コイツと長く付き合うつもりはなく、この日のガイドだけ頼んで、コイツとの関係を終わりにする予定だった。
(コータウンの中心街)
(コータウンの町が一望)
(ミャンマー最南端 バイナウンポイント)
ところが……
ガイド(それほど大きくない町周辺をバイクでプラプラしただけ)を終えてホテルに戻り、ガイド代30,000チャット(約3,000円)を支払ったとき、タイガーが最後に一言、
「それで、今夜飲みにいかない?」
と聞いてきた。
僕は……
この言葉に弱いのだ。(苦笑)
彼が「安いレストランを知っているから」と連れて行ってくれたのが、ここ。
(レストラン?っていうか、ほったて小屋だね。)
メニューは、バーベキュー?
(こんな感じ)
そのうちに、タイガーの友達も徐々に集まり、ほったて小屋レストランは大宴会状態に。英語のできる子は少なかったが、飲んだくれれば皆友達。楽しい夜となった。
(ガイドの合間に立ち寄ったタイガーの自宅)
そんなこんなで、大して大きくもないこの町が気に入り、結局3泊することにしたのだが、その3日目の晩に事件が起きた。
この夜もタイガーと飲みに行くと、途中で彼の友達だという2人組に出会った。
この2人組、ミャンマーの田舎町で、新車のトヨタハリアーをブンブン言わせて乗り回している。その雰囲気は、さしずめ一昔前の漫画に出てきそうな、典型的なおバカで金持ちのボンボンの様。危険な感じは無く、英語はほとんど通じない彼らだが、突然現れた日本からの珍客に興味を持ち、彼らなりに「もてなそう」と思ったようだった。
4人でハリアーに乗り込み、飲み屋を転戦することになった。と言っても、もっぱら飲むのは僕とタイガーで、ボンボンたちは、飲むより従業員の女性との会話にご執心であったのだが。。。
何軒目かでこちらがイイ感じに酔ってきた頃、異変に気付いた。
タイガーが居ないのである。
酔い酔いになった彼は、気付かないうちに勝手に一人で帰ってしまったようなのだ。
残された僕と、おバカなボンボン2人組。
しかし、その後も能天気なボンボンたちは、このミャンマーの田舎の飲み屋に取り残された日本人をもてなすべく、さらに飲み屋を転戦する。「もうホテルに帰りたいんだけど」と訴えるも、言葉は通じず、また次へ。
深夜2時を回った頃だろうか。
彼らにも疲れが見え始め「これでようやくホテルに連れて行ってくれるだろう」と期待したときだった。真っ暗な路上でいきなり停車。そのまま二人共にシートを倒したと思ったら「スリープ!」と一言。どうやら二人とも、このままここで寝る模様。
おバカに期待した僕が、バカであった。
結局、その夜はホテルには帰れず、ボンボンの車の後部座席で車中泊となったのだった。
次の日の早朝。
(えーっと、ここは一体どこ?)
(停車しているのが泊まったハリアー)
ミャンマー人の朝は早い。
空が白々と明るくなり始めたころ、外の人の気配で起きた。車を出ると、遠くでバイクの音がする。その方向に歩いていくと、そこにはバイタクのおっちゃんたちのたまり場があった。ホテルの名刺を出して身振り手振りで「ここに連れてけ」と頼むと、苦も無く「OK」の返事。車で寝ていたボンボンをたたき起こして礼と別れを告げ、バイタクに乗る。
20分ほど走っただろうか、無事ホテルへと帰還することができた。
これが僕の海外で「やっちまった」事件の顛末になる。
最終的に、タイガーは少々ぼったくりでいい加減なガイドではあるが、彼のおかげで色々な縁がつながったわけだし、おバカなボンボンたちには、いろいろと案内してもらい、おごってももらい、寝不足と二日酔いの頭痛以外は何の問題もなく?ホテルに帰れたわけで、今となっては、楽しく忘れらない旅の思い出となっている。
ただ……
特に海外での飲みすぎとハメの外しすぎには、気を付けなくちゃなぁと思いつつ……
でもまた飲みすぎちゃうんだろうなぁ。きっと。
(アンダマン海に浮かぶ小島へ向かう橋の上にて一休みするタイガー)
(※)ミャンマーでは2018年10月以降、期限付きの限定対応となっていますが、日本人への観光ビザが免除になっています。詳細および最新の情報については渡航前にご確認ください。
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