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【備忘録】 「メブラーナ」の名前

13世紀に活躍したトルコを代表する思想家であり、ペルシャ語文学史上最大の神秘主義詩人であるメブラーナ(1207年9月30日〜1273年12月17日)の名前について、ごく簡単にまとめてみた。

先に言ってしまうと、これは知識ゼロな自分のための備忘録であり、「メブラーナって何?」「メブラーナって誰?」と言う超初心者向けである。なので、詳しい方には全くお勧めしない。

世界的にも有名なメブラーナは、本当は「ジャラール・ウッディーン・ルーミー」(実際には「Mawlānā Jalāl ad-Dīn Muḥammad Balkhī-e-Rūmī」)と言うらしい。

一方、わたしが某国国営(公共)放送の日本語デスクで書いた記事では「メブラーナ・ジェラーレッディン・ルーミー」としている。
これは、トルコでは一般に、正式に言う場合は「Mevlânâ Celâleddîn-i Rûmî」とか「Mevlana Celaleddin Rumi」とかと言われていることによる(トルコはこういったものの表記にあまりにもおおらかすぎる)。
某国国営(公共)放送の立場からすると、トルコやトルコ語を軸に訳語(または表記)を決めるのは当然のことである。

トルコで実際に話すときは、単に「メブラーナ」とだけ言う人のほうが圧倒的に多いのではないかと思われる。

メブラーナ」(Mevlânâ、Mawlānā)というのはイスラムの宗教的指導者に与えられる称号で、簡単に言ってしまえば「わたしの先生」、少しかっこよく言うなら「我が師」というような意味になる。
ただし、トルコでは「メブラーナ」と言えば「メブラーナ・ジェラーレッディン・ルーミー(ジャラール・ウッディーン・ルーミー)」を指す。よっぽどのイスラム関係者やイスラム通でもない限り、「メブラーナ」と聞いたら「メブラーナ・ジェラーレッディン・ルーミー(ジャラール・ウッディーン・ルーミー)」のことしかイメージできないのでは・・・と思われる。つまり、それくらい有名である。

ググる際は「メヴラーナ」のほうが断然ヒットする。

それにも関わらず、わたしがあえて「メブラーナ」と書いているのは、このほうが万人に発音しやすいからである。また、「メラーナ」よりも「メラーナ」のほうが個人的には見やすく見た目もかわいい。

「そういう個人的な好みを某国国営(公共)放送に押しつけるのか」というご批判があるとしたら、それはごもっともだが、実はそういうことではない。「某国国営(公共)放送」は自分の個人的な好みや主観や思想を反映させる場ではない。それは「職務の濫用」になってしまう。

いわゆる外来語のカタカナ表記についてはさまざまな考え方がある。原語をそっくりそのままカタカナ表記しようと頑張る人たちもいる。原語に極力忠実でありたいという気持ちはよくわかるが、どんなに忠実に再現しようとしたところでそれは日本語の音声構造上、残念ながら不可能である。原語を忠実に再現しようとするあまり摩訶不思議なカタカナ表記も生まれているが、どうやって発音したら良いのか、またそのカタカナ表記を発案した人は正しく発音できるのか、問いたいところである。

いわゆる外来語をカタカナ表記する際は、第一に、日本で生まれ育った日本語ネイティブの人にとって見やすく発音しやすいものでなければならないというのがわたしの意見である。いくら原語に忠実だからと言って、日本で生まれ育った日本語ネイティブの人にとって難しかったら意味がない。

個人的なものや極めて専門的で専門家しか読まないものならいざ知らず、国営放送や公共放送というものは、どの国であろうが、どの地域であろうが「誰にでもわかりやすい」もの、極論を言ってしまえば「小さな子どもからお年寄りまで、万人が簡単にわかるもの」を目指すべきだと考えている。内容は言うまでもないが、表記も同様である。そういう立場から「メブラーナ」となるという次第である。

「メラーナ」と書いておきながら、調べるときは「メラーナ」で調べるという矛盾した自分がいるが、それはいたしかたないことである。


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