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憂鬱な夜に,激辛を想う。

深夜1時。

この時間になるととてもお腹が空く。
誰しもこのような感情を持ったことがあるだろう。もしかしたら、今現在僕と同じ状況下に置かれている人もいるかも知れない。

今日は何一つうまく行かない日だった。
何を成し遂げたわけでもなく、誰からも愛されない、そんな日だ。
誰の頭の上にもこういう類の厄日は降りかかる。

こんなロクでもない夜にはとてつもなく辛いカレーを食べたい。

とびきり辛い、日本で一番時間を掛けて煮詰めたような、そんなカレー。
そのカレーの色はどだい人間が食べる料理としての原色をとどめていないかもしれない。

でもそれでいいのだ。
その香辛料を煮詰めてできた真紅のマグマに
僕の憂鬱も流し込んで、

いっそ一筋の光も差さないようなドス黒いカレーを作りたい、そんな気分だ。

さて、明日も仕事。
憂鬱はより濃く、僕の心に深く影を根差す。
しかし、明日の夕飯には棚に置いてあるとびきり辛いカレーを食べるつもりだ。

僕は明日の夕飯に激辛カレーを食べるためだけに、今を生きる。

続く土曜日の昼には痺れるほどに山椒を振りかけた麻婆豆腐を食べる。

そうして、シビ辛くもいまいちピリッとしない僕の人生はポーカーフェイスを気取って今日も勝手に進むらしい。

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